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カザフスタンの豚飼育数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、カザフスタンの豚飼育数は、1992年の2,976,100頭をピークに減少傾向が続いています。2022年には705,039頭に達し、1992年比で約24%の水準に留まっています。この減少の背景には、経済や社会、地政学的要因が複雑に絡んでいます。また、近年では若干の回復の兆しが見られる時期もあるものの、再度減少に転じており、長期的な一貫性を欠く推移が問題となっています。

年度 飼育数(頭)
2022年 705,039
2021年 776,117
2020年 816,736
2019年 813,269
2018年 798,732
2017年 815,121
2016年 834,230
2015年 887,627
2014年 922,296
2013年 1,031,600
2012年 1,204,200
2011年 1,344,000
2010年 1,326,300
2009年 1,347,300
2008年 1,352,700
2007年 1,304,900
2006年 1,281,900
2005年 1,292,100
2004年 1,368,800
2003年 1,229,800
2002年 1,123,800
2001年 1,076,000
2000年 984,200
1999年 891,800
1998年 879,000
1997年 1,036,500
1996年 1,622,700
1995年 1,982,700
1994年 2,445,200
1993年 2,591,000
1992年 2,976,100

カザフスタンの豚飼育数推移を振り返ると、1992年には約298万頭と高い水準を記録していました。しかし、1990年代から2000年代初頭にかけて、飼育数は著しく減少し、1997年には約103万頭と、1992年比でおよそ35%まで縮小しました。これは、ソビエト連邦崩壊後の経済混乱や農業政策の転換が主な要因と考えられます。この期間、経済インフラや加工流通ネットワークが整備されない中で、農業の生産効率が低下し、特に豚飼育業が厳しい状況に追い込まれたことが指摘されています。

その後、2000年代初頭には政府による農業支援や経済の安定とともに一時的な回復が見られました。2004年には1,368,800頭まで増加しましたが、長期的には依然として減少傾向が優勢となっています。2022年の705,039頭は、過去30年で最も低い数値です。このような持続的な低下は、カザフスタン国内の豚肉消費需要の低下にも一因があると考えられます。カザフスタンの食文化では羊肉や牛肉が主流であり、豚肉に対する需要が比較的低いことが、飼育数の減少に影響を与えた可能性があります。

また、地政学的背景も重要です。カザフスタンはモスリム人口が多く、イスラム教徒の間では豚肉の消費が宗教上の理由で制限されることが一般的です。こうした文化的要因が、豚飼育業の発展を制約していると分析されます。さらに、近年の減少には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が間接的に関与している可能性もあります。パンデミックがサプライチェーンに与えた影響や、農業従事者の労働不足が豚飼育数に悪影響を及ぼしたと言えます。

長期的に見て、豚飼育業が低迷していることは、カザフスタンの農業政策上の課題となっています。この傾向に対応するためには、生産効率の向上や飼育技術の革新が重要です。また、輸出市場の開拓も解決策の一つとして考えられます。中国やロシアなどの周辺国では豚肉の需要が高い場合が多いため、地域間協力によって国際市場への輸出体制を強化することが有効です。

また、豚飼育場の感染症予防策を強化することで、生産性の低下リスクを軽減することも求められます。アフリカ豚熱(ASF)やその他の動物感染症は、家畜業に壊滅的な影響を及ぼすため、防疫対策に特化した政策が必要です。政府と農家の連携を強化し、情報共有を通じて効率的なリスク管理を推進する必要があります。

結論として、カザフスタンの豚飼育数が減少している背景には、複雑な歴史、文化、経済、地政学的要因が絡んでいます。今後の改善には、多角的なアプローチによる農業政策の見直しと、国際市場へのアクセス拡大が鍵となるでしょう。国際的な協力と地域内の連携を深め、安定した農業基盤を築くことが、持続可能な豚飼育業の復興につながると考えられます。