国際連合食糧農業機関が2024年7月に更新したデータによると、アイスランドにおける豚の飼育数は1961年の1,198頭から1990年代初頭に急増し、1999年以降は4万頭以上を維持していました。しかし、2000年代後半から減少が目立ち始め、2013年には2万6,033頭と大きく減少しました。その後は微増と減少を繰り返しつつも2022年には2万6,000頭で横ばいとなっています。これにより、アイスランドにおける豚飼育数の推移は、一貫して増加していた時代と近年の減少傾向という2つの大きな流れが確認されます。
アイスランドの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 26,000 |
2021年 | 26,000 |
2020年 | 27,000 |
2019年 | 28,000 |
2018年 | 29,000 |
2017年 | 28,700 |
2016年 | 28,500 |
2015年 | 28,700 |
2014年 | 28,600 |
2013年 | 26,033 |
2012年 | 36,300 |
2011年 | 34,300 |
2010年 | 40,016 |
2009年 | 43,286 |
2008年 | 46,776 |
2007年 | 41,470 |
2006年 | 42,180 |
2005年 | 41,152 |
2004年 | 35,671 |
2003年 | 43,599 |
2002年 | 37,326 |
2001年 | 44,000 |
2000年 | 44,000 |
1999年 | 44,000 |
1998年 | 43,000 |
1997年 | 43,000 |
1996年 | 43,000 |
1995年 | 42,000 |
1994年 | 41,000 |
1993年 | 40,000 |
1992年 | 40,000 |
1991年 | 38,000 |
1990年 | 37,000 |
1989年 | 34,000 |
1988年 | 36,000 |
1987年 | 35,000 |
1986年 | 28,000 |
1985年 | 20,000 |
1984年 | 18,000 |
1983年 | 11,700 |
1982年 | 10,200 |
1981年 | 11,500 |
1980年 | 11,376 |
1979年 | 10,281 |
1978年 | 8,387 |
1977年 | 7,073 |
1976年 | 6,777 |
1975年 | 6,959 |
1974年 | 5,835 |
1973年 | 5,962 |
1972年 | 4,802 |
1971年 | 4,111 |
1970年 | 3,075 |
1969年 | 3,912 |
1968年 | 3,500 |
1967年 | 3,458 |
1966年 | 3,023 |
1965年 | 2,137 |
1964年 | 1,544 |
1963年 | 1,347 |
1962年 | 1,484 |
1961年 | 1,198 |
アイスランドの豚飼育数の推移を見ると、1960年代から1980年代半ばにかけて急速な増加がありました。初年度の1961年には1,198頭だった飼育数は、1985年に2万頭、1987年には3万5,000頭、1989年には3万4,000頭と増加が続き、1990年代には4万頭規模で安定しました。この大幅な増加は、アイスランドにおける経済成長や動物飼育技術の進展に加え、国内の食肉需要の高まりに対応した結果と考えられます。特に1980年代半ばの飼育数の急増には、地域経済発展の政策的支援も寄与していた可能性があります。
しかしながら、2000年代後半から豚飼育数は減少に転じ、2013年には最も落ち込んだ時期が見られ、2万6,033頭にとどまっています。この変化の要因としては、アイスランドの地理的要因に起因する飼料輸入コストの増加や、気候変動による農業生産の変動、さらには豚肉需要の変化や輸入品との競争の激化が挙げられます。2008年の経済危機も畜産業全体に圧力をかけたことが背景として考えられます。
地域的な課題として、アイスランドの豚飼育における地理的・環境的制約が挙げられるでしょう。冷涼な気候と限られた農業可能地は、豚の飼育施設や飼料生産を制約する要因となります。また人口35万人程度という小規模な国内市場では、飼育頭数の増加には需要の限界が存在します。一方で、グローバル化の進展による輸入豚肉との競争が激化し、国内生産者に新たな試練をもたらしていることも見過ごせません。
未来に向けて考えるべきこととして、まずは豚肉の国内自給率を上げるために、小規模農家を対象とした技術援助や補助金の提供など、ターゲットを絞った支援策が求められるでしょう。また、輸入依存度の高さや飼料の輸入コストを抑えるため、持続可能な飼料生産の研究や開発、栽培可能な穀物種の多角化を検討する必要性があります。さらに、アイスランド特有の生産環境を生かして、高付加価値の「地産地消」商品をプロモーションすることも考えられます。このような取り組みは国内外の消費者に対してアイスランドの特産品をアピールし、輸出産業としても成長させる可能性を秘めています。
最後に、豚飼育数の減少には環境配慮や豚肉消費に関する倫理的な議論も絡んできています。この世界的な潮流を考慮に入れながら、畜産業の持続可能性を再考し、環境負荷を抑えた生産体制を整えることが重要です。このため、国際的な基準に基づいた環境保全型畜産の推進も必要でしょう。
結論として、アイスランドの豚飼育業は持続可能性と国際競争力の強化が求められています。地元経済の支援・政策的支援のさらなる強化、グローバル市場を見据えた流通ネットワークの再構築、そして多様化する消費者ニーズへの対応が鍵となるでしょう。これらの施策が適切に進められることで、アイスランド独自の豚肉生産の強みを次世代へつなぐことが可能になると考えられます。