国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、中国、香港特別行政区における豚飼育数は、1960年代には大幅な増減を経験しつつ1970年代から安定した増加を見せましたが、その後1980年代後半から減少傾向に転じました。1990年代には急速に減少し、2000年代は比較的安定した推移を見せています。しかし、2015年以降は再び減少が顕著となり、一方で2020年以降には再び少しずつ上昇傾向を示しています。
中国、香港特別行政区の豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 112,883 |
2021年 | 110,150 |
2020年 | 119,239 |
2019年 | 109,260 |
2018年 | 105,981 |
2017年 | 104,248 |
2016年 | 87,948 |
2015年 | 85,733 |
2014年 | 177,000 |
2013年 | 176,000 |
2012年 | 175,000 |
2011年 | 175,000 |
2010年 | 170,000 |
2009年 | 160,000 |
2008年 | 140,000 |
2007年 | 140,000 |
2006年 | 187,000 |
2005年 | 185,000 |
2004年 | 190,000 |
2003年 | 195,000 |
2002年 | 220,000 |
2001年 | 235,000 |
2000年 | 225,000 |
1999年 | 210,000 |
1998年 | 173,000 |
1997年 | 155,000 |
1996年 | 108,600 |
1995年 | 106,700 |
1994年 | 96,900 |
1993年 | 104,150 |
1992年 | 175,300 |
1991年 | 234,400 |
1990年 | 303,800 |
1989年 | 350,000 |
1988年 | 358,100 |
1987年 | 353,100 |
1986年 | 372,000 |
1985年 | 499,300 |
1984年 | 506,900 |
1983年 | 509,600 |
1982年 | 449,600 |
1981年 | 471,800 |
1980年 | 554,950 |
1979年 | 532,530 |
1978年 | 493,360 |
1977年 | 461,200 |
1976年 | 439,700 |
1975年 | 386,300 |
1974年 | 335,000 |
1973年 | 373,000 |
1972年 | 533,890 |
1971年 | 521,620 |
1970年 | 405,700 |
1969年 | 371,400 |
1968年 | 307,430 |
1967年 | 265,900 |
1966年 | 234,700 |
1965年 | 256,800 |
1964年 | 320,000 |
1963年 | 429,046 |
1962年 | 294,350 |
1961年 | 184,000 |
このデータは、香港特別行政区における豚飼育数の長期的な推移を示しており、地域の農業・畜産業の変化を理解する上で重要な手掛かりとなります。1961年に184,000頭だった豚飼育数は、比較的安定的な増加を見せ、1980年には554,950頭でピークを迎えました。しかし、この後、1980年代末から1990年代にかけて飼育数が著しく減少し、その背景には都市化の進展、地価や人口密度の上昇、さらには産業構造の転換があると考えられます。
1990年代以降の減少は急速で、農業や畜産業よりも経済のサービス産業や金融業への転換が優先されたことが主要因です。たとえば1993年にはわずか104,150頭となり、1960年代の記録を大きく下回りました。この時期には、地元の食肉需要は増加していたにもかかわらず、多くが中国本土からの輸入に依存するようになっています。これは、農地や畜産スペースが減少し地元での需給バランスを保てなくなったためです。
2000年以降は安定化が見られ、180,000頭前後で飼育数が推移しましたが、2015年には大幅に減少し、85,733頭まで減っています。この背景には、制限的な政策や土地利用の制約、小規模農家の減少といった要因が挙げられます。さらに、都市化が進む中で畜産業の縮小が進み、飼育業者が本土への移転や廃業を余儀なくされたことも大きな原因となっています。
直近のデータである2020年から2022年には増加傾向が見られますが、依然として飼育数は少ないままです。この回復の要因として、中国本土からの豚肉供給の不安定化や、地元産肉の品質や安心感へのニーズの高まりなどが考えられます。また、この期間には新型コロナウイルスの流行により、輸送や貿易が制約を受けたため地元生産の需要が再認識された可能性も高いです。しかし、この増加は限定的であり、全体の供給量への影響は依然として小規模です。
将来的に考慮すべき課題は、香港特別行政区が限られた空間の中で食料自給率をどのように高めるかです。具体的には、小規模農家への支援を拡充し、新しい農業・畜産技術の導入やバイオテクノロジーによる高効率な飼育方法の普及が提案されます。また、地元生産を奨励する政策の策定や都市農業の活性化も今後の重要な対策といえるでしょう。
さらに、地政学的には、中国本土からの輸入依存を減らすため、地域間の協力を強化し、輸送リスクの低減や安定した供給チェーンの構築が求められます。もしも地政学的な緊張が高まる場合、食料供給の確保は深刻な問題となる可能性があります。そのため、輸入への依存度を減らし、地域内での供給可能性を再評価・再構築することが急務です。
最終的に、このデータは香港特別行政区だけでなく、ほかのアジア地域における都市化の影響や食料生産の課題、その解決策を議論する際の重要なケーススタディとなります。国際機関や近隣諸国との協力体制を強化し、地域全体での持続可能な畜産業の発展を目指すことが不可欠です。