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アゼルバイジャンの豚飼育数推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(FAO)のデータによると、アゼルバイジャンにおける豚の飼育数は1992年には137,300頭であったものの、その後減少傾向をたどり、2009年に10,000頭を下回り、2020年には5,877頭に留まりました。1992年からの長期的な減少は顕著で、ただし近年は緩やかな増加の兆しが見られる年もありました。2022年時点では5,130頭とまた減少しており、多くの課題が依然として残されています。

年度 飼育数(頭)
2022年 5,130
2021年 5,954
2020年 5,877
2019年 5,704
2018年 5,485
2017年 4,856
2016年 4,406
2015年 5,217
2014年 6,143
2013年 6,495
2012年 6,146
2011年 6,300
2010年 5,347
2009年 10,299
2008年 18,676
2007年 21,317
2006年 22,936
2005年 22,936
2004年 22,932
2003年 19,809
2002年 16,853
2001年 18,611
2000年 19,690
1999年 26,103
1998年 20,996
1997年 23,399
1996年 30,379
1995年 33,400
1994年 47,900
1993年 66,900
1992年 137,300

アゼルバイジャンの豚飼育数の歴史を振り返ると、1992年の137,300頭をピークにその後急激な減少を見せています。この大幅な減少には、ソ連の崩壊後に直面した社会経済的な混乱が背景にあると考えられます。ソ連崩壊後、アゼルバイジャンでは経済の転換プロセスが進む中で農業部門にも大きな変化が生じました。豚肉はこの地域で宗教的・文化的理由により主に非イスラム教徒によって消費されていますが、多くの住民がイスラム教徒であるため、そもそもの需要が相対的に少ないことも一因です。また、農業政策の変更や飼料供給の減少が飼育環境をさらに困難にしたと考えられます。

特に1992年から2000年にかけての減少は顕著で、僅か8年で飼育数がおよそ85%減少しました。しかし、2003年から2006年には、約22,900頭ほどで横ばいの時期が見られ、政策の一時的な改善や経済の安定が背景にある可能性があります。その後、再び減少傾向をたどり、2009年の10,299頭を境に飼育数は一層縮小し、2010年以降は5,000〜6,000頭程度で推移しています。2022年の5,130頭という水準は、30年前と比べると大幅な減少を物語っています。

豚飼育数の減少には複合的な要因が絡んでいます。まず、宗教的な要因が豚肉の供給や需要を限定していることが重要です。アゼルバイジャンにおける豚肉の消費は主に少数派のキリスト教徒や外国人によるものであり、国内のイスラム教主体の文化では豚肉の消費が促進される可能性は限定的です。また、豚飼育産業そのものに対する投資が乏しく、近代的な飼育技術や施設の導入が遅れていることも課題です。貧弱なインフラや供給不足により、養豚農家が持続的に事業を運営するのが困難な状況にあります。

さらに、アゼルバイジャンは地政学的なリスクにも影響を受けやすい国です。ナゴルノ・カラバフ地域を巡る紛争が長期化し、農業分野を含む全般的な経済活動に悪影響を及ぼしています。この地域的な不安定性は、農場の経営者に直接的な影響を与えるとともに、農業資源や土地の利用に制限を課している可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の流行による経済的な制約も、2022年以降の飼育数の減少に影響していると予想されます。

未来に向けた対策としては、まず宗教的・文化的背景を尊重しつつ、豚肉の輸出可能性を拡大することが重要です。近隣諸国や輸出市場への豚肉製品の販売を見据えて、品質向上や衛生基準の徹底を支援する政策が必要です。また、養豚業者への補助金や低金利融資を通じて、設備や技術の近代化を推進する取り組みも求められています。さらに、農業全般を対象にした教育・トレーニングプログラムを導入し、若い世代に養豚技術を伝承することも考えられます。

国際的な視点から見ると、日本や韓国などでは、豚肉が重要な食肉の一つであり、両国では産業が高度に発展しています。アゼルバイジャンがこれらの成功事例を参照しつつ、自国の農業環境や文化に合った政策を設計することが今後の発展につながるでしょう。また、地政学的安定性を確保する中で、国際協力を通じた資源の効果的な利用が大きな鍵となります。

結論として、アゼルバイジャンの豚飼育数は1992年以降急激に減少してきましたが、これは経済的、文化的、地政学的要因が複雑に絡み合った結果といえます。今後、輸出市場を見据えた政策や国内産業の支援を進めることで、長期的には養豚業の安定化を目指すことが求められるでしょう。