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カナダの豚飼育数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、カナダの豚飼育数は過去数十年にわたって大きく変動してきました。1961年の約500万頭から2000年代初頭にかけて増加し、2005年に約1,510万頭とピークを迎えました。その後、2007年以降は一時的に減少に転じましたが、2016年以降は安定した増加傾向が見られ、2022年時点で約1,417万頭となっています。このデータは、気候変動、経済情勢、貿易政策、さらには地域的な疫病発生の影響を大きく受けていることを示唆しています。

年度 飼育数(頭) 増減率
2023年 13,905,000
-1.87% ↓
2022年 14,170,000
0.35% ↑
2021年 14,120,000
0.39% ↑
2020年 14,065,000
-0.04% ↓
2019年 14,070,000
-1.23% ↓
2018年 14,245,000
2.22% ↑
2017年 13,935,000
2.24% ↑
2016年 13,630,000
3.41% ↑
2015年 13,180,000
2.69% ↑
2014年 12,835,000
0.71% ↑
2013年 12,745,000
-0.2% ↓
2012年 12,770,000
1.23% ↑
2011年 12,615,000
1.2% ↑
2010年 12,465,000 -
2009年 12,465,000
-1.85% ↓
2008年 12,700,000
-9.8% ↓
2007年 14,080,000
-6.82% ↓
2006年 15,110,000
2.03% ↑
2005年 14,810,000
0.58% ↑
2004年 14,725,000
-0.14% ↓
2003年 14,745,000
2.57% ↑
2002年 14,375,000
5.89% ↑
2001年 13,575,500
5.2% ↑
2000年 12,904,400
3.82% ↑
1999年 12,429,400
3.71% ↑
1998年 11,985,300
4.41% ↑
1997年 11,479,500
-0.94% ↓
1996年 11,588,000
2.63% ↑
1995年 11,290,500
7.18% ↑
1994年 10,533,800
-1.95% ↓
1993年 10,743,700
1.39% ↑
1992年 10,596,300
4.17% ↑
1991年 10,172,000
-2.12% ↓
1990年 10,392,400
-5.1% ↓
1989年 10,951,000
1.39% ↑
1988年 10,800,900
8.03% ↑
1987年 9,997,800
0.31% ↑
1986年 9,967,000
-5.73% ↓
1985年 10,572,600
2.19% ↑
1984年 10,346,000
4.61% ↑
1983年 9,890,000
-0.8% ↓
1982年 9,970,000
-2.16% ↓
1981年 10,190,000
0.98% ↑
1980年 10,091,000
20.66% ↑
1979年 8,363,000
23% ↑
1978年 6,799,000
9.71% ↑
1977年 6,197,000
8.87% ↑
1976年 5,692,000
-5.61% ↓
1975年 6,030,000
-13.51% ↓
1974年 6,972,000
-3.26% ↓
1973年 7,207,000
-2.78% ↓
1972年 7,413,000
-3.98% ↓
1971年 7,720,000
17.7% ↑
1970年 6,559,000
13.3% ↑
1969年 5,789,000
-5.72% ↓
1968年 6,140,000
5.35% ↑
1967年 5,828,000
14.54% ↑
1966年 5,088,000
-9.08% ↓
1965年 5,596,000
3.78% ↑
1964年 5,392,000
7.99% ↑
1963年 4,993,000
-2.44% ↓
1962年 5,118,000
2.34% ↑
1961年 5,001,000 -

カナダの豚飼育数の推移を振り返ると、時代ごとの背景や世界情勢の変化がこの指標に与える影響がよくわかります。1961年には約500万頭だった飼育数が、1980年には1,009万頭に増加し、その後も順調に成長し2005年には1,510万頭に達しました。これは、カナダが農業技術や豚の飼育管理の向上に注力した結果と考えられます。また、この成長は豚肉の輸出が相対的に好調であったことにも起因しています。例えば、アメリカ、中国、日本といった主要な豚肉輸出先国が安定してカナダ産の豚肉を需要し続けたことが背景にあります。

しかし、2007年を境に飼育数が減少に転じる現象が見られました。その理由の一つとして、世界的な経済危機による影響が挙げられます。この時期、多くの国で消費者の購買力が低下し、肉類需要の停滞が発生しました。また、カナダ国内でも生産コストの上昇や気候変動に伴う拡大農業の難しさが課題となり、豚肉生産の収益性が減少したことが影響しました。さらに、疫病の拡大も豚飼育数に影響を及ぼしました。2009年に世界的に話題となった豚インフルエンザ(H1N1)は、カナダの豚産業にも影響を与え、飼育数減少の一因となりました。

2016年から2022年にかけては、豚飼育数は増加の兆しを再び見せています。この時期の増加は、国内外の豚肉需要が再び回復したことの表れと考えられます。特にアジア諸国では豚肉消費の増加により輸入量が増加しており、カナダ産豚肉への需要が伸びています。また、カナダ政府が農業産業の支援に注力し、豚飼育業者に対して融資や補助金などの政策的支援を実施してきた点も注目に値します。さらに、気候変動の影響に対処するための農業技術の革新が飼育効率を向上させる結果につながっています。

ただし、今後の豚飼育産業には複数の課題が残ります。まず第一に気候変動の影響です。豚飼育には大量の飼料が必要であり、これらの飼料作物の収穫は干ばつや洪水などの自然災害リスクに直面しています。第二に、地政学的リスクによる輸出政策への影響です。例えば、中国やアメリカなどとの貿易摩擦が豚肉輸出量に打撃を与える可能性があります。また、新たな疫病の発生リスクも依然として看過できません。

これらの課題に対して提案できる具体策としては、複数あります。気候変動に対応するためには、飼料作物を安定的に供給できる技術や農場の環境管理の高度化が必要です。また、貿易政策の安定を図るためには、他国との国際協力の枠組みを強化し、自由貿易協定を通じた取引条件の安定化が重要です。さらに、疫病対策については、従来型の予防策に加え、新しい診断技術やワクチンの開発に投資することが必要です。

結論として、カナダの豚飼育数の推移は、多くの要因が複雑に絡み合った結果であり、その背景には国内外の経済状況や政策、地政学的情勢、疫病変遷などが影響を及ぼしています。これを基に今後の持続可能な豚飼育業の発展を目指すには、国内外での協調的な取り組み、資源の効率的な利用、そして環境負荷の軽減を考慮したスマート農業技術の導入が不可欠と言えるでしょう。