国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、ブルンジにおける豚の飼育数は2022年で962,472頭に達しました。この数字は1961年の4,400頭から大幅に増加しており、特に2000年代後半以降、著しい成長を見せています。一方で、1970年代から1990年代には減少傾向や明確な停滞期も観測されています。同国の豚飼育数推移は独自の農業事情、経済発展、さらには地政学的要因にも影響を受けています。
ブルンジの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 962,472 |
2021年 | 892,926 |
2020年 | 845,781 |
2019年 | 804,013 |
2018年 | 774,689 |
2017年 | 618,176 |
2016年 | 561,184 |
2015年 | 529,998 |
2014年 | 565,152 |
2013年 | 388,242 |
2012年 | 404,315 |
2011年 | 296,813 |
2010年 | 244,362 |
2009年 | 207,171 |
2008年 | 166,721 |
2007年 | 158,604 |
2006年 | 178,737 |
2005年 | 169,572 |
2004年 | 136,360 |
2003年 | 105,753 |
2002年 | 115,835 |
2001年 | 165,143 |
2000年 | 194,218 |
1999年 | 206,276 |
1998年 | 106,648 |
1997年 | 74,235 |
1996年 | 74,235 |
1995年 | 79,184 |
1994年 | 74,785 |
1993年 | 99,714 |
1992年 | 104,962 |
1991年 | 80,983 |
1990年 | 102,799 |
1989年 | 91,286 |
1988年 | 115,005 |
1987年 | 80,402 |
1986年 | 76,574 |
1985年 | 60,120 |
1984年 | 76,000 |
1983年 | 76,100 |
1982年 | 56,400 |
1981年 | 47,800 |
1980年 | 53,000 |
1979年 | 32,000 |
1978年 | 30,000 |
1977年 | 29,000 |
1976年 | 47,000 |
1975年 | 31,606 |
1974年 | 27,339 |
1973年 | 25,362 |
1972年 | 24,093 |
1971年 | 19,939 |
1970年 | 16,938 |
1969年 | 20,371 |
1968年 | 16,365 |
1967年 | 6,500 |
1966年 | 8,000 |
1965年 | 4,000 |
1964年 | 2,888 |
1963年 | 4,300 |
1962年 | 4,700 |
1961年 | 4,400 |
ブルンジにおける豚の飼育数の推移は、農業生産や経済、社会的状況を理解する上で重要な指標となります。このデータからは、同国の豚飼育業が大きな浮き沈みを経て2020年代に飛躍的な成長を遂げた軌跡を読み取ることができます。
初期データの1960年代は、年平均数千頭という規模で微増が続きましたが、1964年の減少(2,888頭)やその後の回復・増加に見られるように、安定性に欠ける状況でした。この時期は農業基盤が脆弱だったこと、独立後の政治的混乱や社会的制約が影響を与えたと考えられます。1970年代に入ると、年々増加基調に転じ、1976年には47,000頭と急増しました。これは農業政策や地域社会での家畜利用に対する意識が高まってきたことが要因として挙げられます。しかし、1977年から1980年代前半にかけて飼育数は上昇と下降を繰り返し、不安定な推移を見せました。
1980年代後半から1990年代にかけては、一時的なピーク(1988年の115,005頭)を迎えましたが、その後内戦による影響が色濃く表れます。その結果、飼育数は1990年代中盤にかけて大きく変動し、一時的に74,235頭(1996年、1997年)まで減少しました。このような内戦や社会的不安が農業従事者や農村経済に与えた影響は計り知れず、農地や家畜資源の破壊といった現象が飼育数の減少を引き起こしたと考えられます。
2000年代に入ると、ブルンジは経済復興および国内の安定化を進め、飼育数は再び増加基調を示しました。特に2010年代後半以降、年ごとの大幅な増加が顕著になり、2022年には962,472頭に達しました。この増加は、経済発展に伴う食肉需要の高まり、地域社会での農業技術の普及、さらには国際的な食糧援助政策による影響が相まった結果といえます。
特筆すべきは、2014年以降の急激な増加です。特に2018年から2022年にかけて飼育数が約200,000頭以上増加しており、ブルンジが食肉生産を重要視した政策を推進してきた可能性があります。豚肉需要の高まりは、国内での栄養改善やインフラ整備の要因とも考えられますが、一方で感染症のリスク上昇や飼育効率の問題にも目を向ける必要があります。
同国の飼育数推移を国際的に比較すると、アフリカ大陸全体では依然として豚飼育業は牛や羊に比べ主要産業とはいえません。ただし、ブルンジの成長率は世界でも注目に値し、アジア諸国、とりわけ豚肉生産が盛んな中国やベトナムのような需要主導型成長の初期段階にあるともいえます。
ブルンジの豚飼育業が直面する課題として、まず内戦や地域衝突など地政学的リスクの再燃が挙げられます。家畜を含む農業資源は紛争で直接的な被害を受ける可能性が高く、また農業従事者の間での継続的な技術普及が妨げられる可能性があります。さらに、家畜感染症や自然災害も脅威であり、防疫体制の深化が不可欠です。
今後の対策として、安定した食肉生産のためには公的な農業関連政策の強化が求められます。具体的には、豚飼育の技術支援、経済的なインセンティブ付与、感染症対策を強化するための予防接種事業の拡充が挙げられます。また、農村地域住民に向けた教育や普及活動を進め、持続可能な農業の実践を助けることが重要です。国際機関や近隣諸国との協調も、こうした取り組みの強力な後押しとなるでしょう。