国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータをもとに、ミャンマーの豚飼育数の推移を分析すると、1961年から2017年までほぼ一貫して豚の飼育数が増加していることが分かります。2017年には19,273,357頭を記録しピークを迎えましたが、その後2018年に急減し6,069,098頭に落ち込みました。これ以降、緩やかに回復を見せていますが、依然としてピーク時の水準には達していません。
ミャンマーの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 7,000,000 |
2021年 | 7,147,000 |
2020年 | 6,778,694 |
2019年 | 6,428,563 |
2018年 | 6,069,098 |
2017年 | 19,273,357 |
2016年 | 16,524,336 |
2015年 | 15,055,885 |
2014年 | 13,760,958 |
2013年 | 12,566,827 |
2012年 | 11,600,000 |
2011年 | 10,497,493 |
2010年 | 9,416,208 |
2009年 | 8,496,240 |
2008年 | 7,676,712 |
2007年 | 7,006,825 |
2006年 | 6,293,129 |
2005年 | 5,677,277 |
2004年 | 5,217,000 |
2003年 | 4,840,000 |
2002年 | 4,498,680 |
2001年 | 4,261,000 |
2000年 | 3,974,000 |
1999年 | 3,714,960 |
1998年 | 3,500,508 |
1997年 | 3,357,500 |
1996年 | 3,229,200 |
1995年 | 2,944,000 |
1994年 | 2,728,000 |
1993年 | 2,655,000 |
1992年 | 2,630,000 |
1991年 | 2,520,000 |
1990年 | 2,278,000 |
1989年 | 3,246,000 |
1988年 | 3,201,000 |
1987年 | 3,061,000 |
1986年 | 2,988,000 |
1985年 | 2,955,000 |
1984年 | 2,708,000 |
1983年 | 2,735,000 |
1982年 | 2,885,000 |
1981年 | 2,634,000 |
1980年 | 2,196,000 |
1979年 | 1,961,000 |
1978年 | 1,985,000 |
1977年 | 1,955,000 |
1976年 | 1,780,524 |
1975年 | 1,578,215 |
1974年 | 1,432,178 |
1973年 | 1,503,000 |
1972年 | 1,603,226 |
1971年 | 1,605,636 |
1970年 | 1,478,191 |
1969年 | 1,258,559 |
1968年 | 1,175,394 |
1967年 | 1,317,000 |
1966年 | 1,032,193 |
1965年 | 851,188 |
1964年 | 814,866 |
1963年 | 745,143 |
1962年 | 643,301 |
1961年 | 652,241 |
ミャンマーの豚飼育数のデータを見ると、1961年から2017年までの間に長期的な増加傾向が続いていたことが明らかになります。この期間中、特に1980年代以降の経済発展や農村部の家畜産業の拡大により、豚の飼育数は一貫して成長しました。これに伴い、ミャンマーの食糧事情や地域経済にも肯定的な影響を与えたと考えられます。豚肉はミャンマー国内で広く消費され、農村部では豚の飼育が小規模農家の重要な収入源となっています。2017年の記録的な飼育数19,273,357頭は、ミャンマー国内の豚肉消費が最大化したことを示しており、畜産業が急速に成長していたことを裏付けています。
しかしながら、2018年以降には著しい飼育数の減少が見られます。これは6,069,098頭という前年の3分の1程度にまで急激に落ち込みました。この劇的な減少は、アフリカ豚熱(ASF)などの家畜の感染症の発生が大きく関与していると思われます。この感染症はアジア全域で深刻な影響をもたらしており、ミャンマーもその影響から逃れることはできなかったと推測されます。また、政治的混乱や経済的困難も、適切な防疫措置の実施や家畜生産の調整に支障をきたした可能性があります。
さらに近年の回復基調について見ると、2021年には7,147,000頭、2022年には7,000,000頭と増加は緩やかに落ち着いていますが、依然として過去のピークからは遠い水準にとどまっています。この背景には、感染症の長期的な影響に加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による物流や生産サプライチェーンの混乱が絡んでいることが考えられます。また、ミャンマー国内の政治的不安定性により、家畜産業を支えるための政策が十分に機能していない可能性も示唆されます。
将来の課題としては、まず感染症の予防措置を徹底するためのインフラ整備と国際的な協力が挙げられます。特に、地域的な防疫ネットワークの構築を通じて、ASFの再発を防ぐ取り組みが急務です。また、農村部の小規模農家を支援するために、安定した飼料供給チェーンや技術指導プログラムの導入が求められています。これらの施策を通じて、ミャンマーは国内の畜産業を再建し、飼育数増加に向けた道筋を立てることが可能になるでしょう。
さらに、地政学的リスクに目を向けると、ミャンマーにおける豚飼育業の脆弱性が浮き彫りとなります。農村部の安定した家畜生産のためには、国内外の政治的安定も不可欠です。地域紛争が解決されない限り、輸送や物資供給が滞る可能性があり、畜産業の安定成長に悪影響を及ぼしかねません。こうした状況への対応としては、農業と農村開発を包括的に支援する国際的な枠組み構築によって、安定した生産環境を築くことが重要です。
結論として、このデータが示す現状から、ミャンマーは豚飼育数の急増と急減の両方を経験した国であるといえます。これにより、感染症や政治的混乱が畜産業に与える影響の大きさが浮き彫りになりました。今後、感染症対策の強化と農村部の持続可能な開発、そして国際的な支援枠組みの強化が求められるでしょう。これらの施策が実施されることで、ミャンマーの豚飼育業の持続可能な回復が期待されます。