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スウェーデンの牛乳生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、スウェーデンの牛乳生産量は過去数十年にわたり変動を見せています。1960年代初頭に約400万トンという高い生産量を記録したものの、その後減少を続け、1970年代には約300万トンに低下しました。しかし、その後の数十年間には回復と減少を繰り返し、2022年には約276万トンの水準となっています。このデータは、スウェーデンの酪農業の変遷と社会的・経済的背景を反映しています。

年度 生産量(トン)
2022年 2,764,840
2021年 2,782,220
2020年 2,772,740
2019年 2,704,390
2018年 2,760,230
2017年 2,816,660
2016年 2,862,000
2015年 2,933,000
2014年 2,973,000
2013年 2,910,000
2012年 2,901,000
2011年 2,890,000
2010年 2,902,100
2009年 2,974,000
2008年 3,029,000
2007年 3,025,000
2006年 3,172,000
2005年 3,208,000
2004年 3,275,000
2003年 3,253,000
2002年 3,274,000
2001年 3,339,000
2000年 3,348,000
1999年 3,299,000
1998年 3,277,000
1997年 3,276,000
1996年 3,258,000
1995年 3,304,000
1994年 3,421,000
1993年 3,352,000
1992年 3,133,000
1991年 3,200,000
1990年 3,508,000
1989年 3,496,000
1988年 3,355,478
1987年 3,370,229
1986年 3,516,716
1985年 3,674,938
1984年 3,795,000
1983年 3,713,968
1982年 3,654,188
1981年 3,495,975
1980年 3,465,000
1979年 3,394,000
1978年 3,298,000
1977年 3,249,000
1976年 3,247,000
1975年 3,168,000
1974年 3,111,000
1973年 3,031,000
1972年 2,994,000
1971年 2,876,000
1970年 2,932,000
1969年 3,180,000
1968年 3,301,000
1967年 3,318,000
1966年 3,538,000
1965年 3,655,000
1964年 3,640,000
1963年 3,782,000
1962年 3,927,000
1961年 3,977,000

スウェーデンにおける牛乳生産量の推移を見ると、大きく3つの時期に分けることができます。1960年代前半は約400万トン近い高水準の生産量が記録されており、スウェーデン酪農業の全盛期といえる時期でした。この時期は、国民の豊かな乳製品消費習慣や国内市場を支える強固な農業政策が背景にあります。しかし、1960年代半ば以降、徐々に生産量が減少し、1970年代には約300万トン台まで低下しました。

1970年代以降については、段階的な回復と停滞が交互に繰り返される動きが見られます。例えば、1972年から1984年にかけて緩やかな増加傾向が続きましたが、これは国内外での乳製品需要の高まりや、技術革新による生産効率の向上が要因として考えられます。しかし、1986年以降、減少が再び見られるようになり、この時期には環境保護規制の強化や酪農業における経済的競争力の変化が一因として挙げられます。

2000年代に入ると、全体として下落傾向を維持しています。この期間には、スウェーデンをはじめとする先進国で乳製品の消費が伸び悩む傾向があり、さらに欧州連合(EU)の政策や市場競争による影響も受けています。特に2010年代以降では、環境問題への意識の高まりやベジタリアン・ヴィーガンの食生活への移行が、生産量の減少に影響を与えたと考えられます。

最新の2022年のデータでは、生産量が約276万トンまで減少しています。ただし、2020年から2022年にかけては一定の安定した動きも見られます。この要因には、新型コロナウイルス感染症により一時的に地元生産品への需要が高まったことも影響している可能性があります。一方で、長期的には減少傾向が続く可能性が高いと予測されます。

今後の課題は、こうした低迷傾向の中で持続可能な酪農業をどのように維持していくかという点です。具体的には、自動化・デジタル化技術を活用して生産効率をさらに高めることや、気候変動に対応した環境負荷の低い生産方式への転換が鍵となるでしょう。また、乳製品以外の需要、多様な植物性食品の普及に対応し、酪農業の多角化を進めることも重要です。

地政学的な背景としては、気候変動がスウェーデンの農業環境に与える影響への警戒が必要です。北欧地域は他の多くの地域に比べて気候変動の影響が比較的軽微とされつつも、干ばつや異常気象などが作物生産や家畜飼育に及ぼす影響は増加しつつあります。このため、国内外の市場の需要変動だけでなく、自然災害や気候の不安定性にも対応する柔軟な政策が求められます。

また、国際協力も不可欠です。スウェーデンはEUの一員として、他国とも連携しながら乳製品消費や市場ニーズに応じた戦略を進める必要があります。特に日本や中国のような乳製品需要がある地域への輸出拡大を目指しつつ、生態系の保全や持続可能な資源管理への取り組みを行うことが優先されるべきです。

結論として、スウェーデンの酪農業が直面している課題は明確であり、次世代の農業技術の導入や市場の適応、自国での産業の環境化などが課題解決への鍵となります。持続可能な酪農業を実現するには、政府の政策支援とともに市場や消費者の協力が非常に重要です。これにより、スウェーデンは新たなモデルを築き、地球規模での先駆者としての役割を果たすことが期待されています。