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プエルトリコの牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、プエルトリコの牛乳生産量は1961年には282,182トンであり、その後1970年代後半に最盛期を迎え、ピーク時には439,880トン(1978年)を記録しました。しかし、1980年代以降は全体的に減少傾向にあり、特に2007年以降は生産量が30万トンを下回る状態が続いています。2022年には229,973トンと、最盛期の約52%まで落ち込んでおり、過去60年で顕著な長期低下が見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 229,973
0.41% ↑
2021年 229,037
-5.38% ↓
2020年 242,057
2.98% ↑
2019年 235,057
-2.08% ↓
2018年 240,059
-1.64% ↓
2017年 244,060
-2.4% ↓
2016年 250,060
1.63% ↑
2015年 246,058
0.41% ↑
2014年 245,063
-1.87% ↓
2013年 249,725
-2.78% ↓
2012年 256,854
-2.78% ↓
2011年 264,191
0.78% ↑
2010年 262,136
-2.36% ↓
2009年 268,468
-3.78% ↓
2008年 279,005
-2.82% ↓
2007年 287,095
-10.82% ↓
2006年 321,923
-4.93% ↓
2005年 338,608
-3.15% ↓
2004年 349,615
-3.18% ↓
2003年 361,082
-2.79% ↓
2002年 371,450
-4.44% ↓
2001年 388,715
2.57% ↑
2000年 378,989
7.2% ↑
1999年 353,549
-6.36% ↓
1998年 377,560
5.73% ↑
1997年 357,115
-1.65% ↓
1996年 363,089
-3.09% ↓
1995年 374,658
4.46% ↑
1994年 358,661
-1.42% ↓
1993年 363,831
-3.04% ↓
1992年 375,219
-3.38% ↓
1991年 388,326
-3.49% ↓
1990年 402,363
1.05% ↑
1989年 398,197
9.03% ↑
1988年 365,216
-3.75% ↓
1987年 379,455
11.55% ↑
1986年 340,163
3.78% ↑
1985年 327,758
-6.64% ↓
1984年 351,052
-8.36% ↓
1983年 383,081
-3.96% ↓
1982年 398,876
-4.08% ↓
1981年 415,840
2.09% ↑
1980年 407,307
-6.99% ↓
1979年 437,928
-0.44% ↓
1978年 439,880
0.79% ↑
1977年 436,451
7.16% ↑
1976年 407,273
7.27% ↑
1975年 379,673
1.4% ↑
1974年 374,420
-2.48% ↓
1973年 383,954
0.34% ↑
1972年 382,669
2.23% ↑
1971年 374,333
1.23% ↑
1970年 369,798
-0.2% ↓
1969年 370,552
1.09% ↑
1968年 366,560
2.88% ↑
1967年 356,290
1.66% ↑
1966年 350,473
0.26% ↑
1965年 349,569
5.02% ↑
1964年 332,847
2.51% ↑
1963年 324,684
7% ↑
1962年 303,453
7.54% ↑
1961年 282,182 -

プエルトリコの牛乳生産量は1960年代から1970年代にかけて持続的な増加を記録しました。この期間、国内の農業生産基盤が強化され、管理技術の進歩や酪農業への政府支援が産業を発展させたことが背景にあります。最盛期の1978年には439,880トンを達成し、これは記録上の最高値であると同時に、酪農業の主要な時代を象徴するデータでもあります。しかし、それ以降は完璧な減少とは言えないにせよ、生産量の持続的な縮小が見られました。

1980年代の初期には依然として40万トンを超える規模を維持していましたが、1984年以降の減少は顕著でした。この現象の一因は、アメリカ本土への依存度が高いプエルトリコ経済が農業から他産業へとシフトしたことに加え、世界的な酪農業の競争激化により生産コストが上昇したことにあります。また、輸入食品が増加し、自国産品の競争力が低下した点も重要です。加えて、1988年から1990年にかけて一時的な回復が見られましたが、1990年代には国内の気候変動や都市化、労働力不足が影響を及ぼしました。これらの要因が相まって、結果的に酪農業は縮小し、特に生産設備の老朽化と小規模農家の廃業が課題となりました。

2007年以降の生産量が30万トンを下回った点は特筆に値します。この時期、プエルトリコは記録的な経済危機と資本流出を経験しており、その影響が牛乳生産のさらなる減少を招きました。同時に、牛乳生産を支える労働力やインフラへの投資の減少も見逃せません。さらに、近年では自然災害も影を落としており、2017年に襲来したハリケーン・マリアは、酪農場の壊滅と農業全体の生産量低下に大きく関与しました。実際、ハリケーンの発生後、多くの地域で酪農設備の復旧が困難となり、2020年代の低迷へとつながる結果をもたらしました。

2022年の牛乳生産量は229,973トンまで縮小しましたが、これは一時的な回復を示した2020年(242,057トン)を下回る数値です。この値は、1960年代の初期水準にほぼ等しく、プエルトリコ酪農業の現在の縮小規模を示しています。地政学的には、アメリカとの政策的依存が深いプエルトリコでは、支援や規制が直接的に酪農業に影響します。輸入牛乳製品の増加に伴い、地場産業の競争がさらに厳しくなっていることを見逃すことはできません。

将来を見据えると、プエルトリコ酪農業の再生には戦略的な計画が必要です。例えば、酪農設備の近代化や省力化技術の導入とともに、国内市場を保護するための政策が重要です。そして、小規模農家への補助金や支援体制を強化することで、生産量の持続的な成長を可能にするかもしれません。また、気候変動への対応策として、耐性のある飼料用作物や省水型農業技術を活用することも有効でしょう。

さらに、観光産業や地域ブランド化を絡めた酪農製品のプロモーションも、新たな可能性を示しています。近年、消費者はより高品質で地域性を持つ製品を選ぶ意識を高めており、プエルトリコ特有の特徴を活かした乳製品の開発が輸出産業へとつながる可能性もあります。加えて、国際機関やアメリカ本土の資金支援を取り込むことで、酪農業振興のための包括的プログラムを推進することが肝要です。

このように、長期的な視野に立った具体的な取り組みを進めることで、牛乳生産量の安定や酪農業の復興が可能となるでしょう。また、地域経済の発展や雇用創出といった副次的な利点も期待されます。プエルトリコはその豊かな自然環境と歴史ある農業基盤を活かし、未来へ向けた持続可能な生産体制の再構築を目指すべきです。