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パプアニューギニアの牛乳生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、パプアニューギニアの牛乳生産量推移は大きな変動を経験しており、1960年代から1970年代にかけては比較的多い年が続きましたが、1980年代以降は著しく減少し、21世紀以降にわずかな回復の兆しを見せています。2022年の生産量は203トンで、これはピーク時の1973年(1,718トン)の約12%にとどまっています。

年度 生産量(トン)
2022年 203
2021年 203
2020年 203
2019年 203
2018年 203
2017年 214
2016年 215
2015年 213
2014年 220
2013年 230
2012年 228
2011年 225
2010年 217
2009年 228
2008年 222
2007年 215
2006年 213
2005年 207
2004年 202
2003年 195
2002年 197
2001年 186
2000年 178
1999年 165
1998年 157
1997年 168
1996年 160
1995年 181
1994年 166
1993年 180
1992年 185
1991年 181
1990年 175
1989年 190
1988年 180
1987年 185
1986年 190
1985年 203
1984年 186
1983年 208
1982年 250
1981年 366
1980年 482
1979年 494
1978年 434
1977年 536
1976年 798
1975年 965
1974年 1,250
1973年 1,718
1972年 1,555
1971年 1,360
1970年 1,709
1969年 1,429
1968年 1,599
1967年 1,606
1966年 1,456
1965年 1,475
1964年 1,442
1963年 1,356
1962年 1,473
1961年 1,409

パプアニューギニアの牛乳生産量の動向を詳しく見ていくと、1961年から1970年代前半にかけては年間1,000トンを超える生産量を維持していましたが、1975年前後の急激な減少が際立ちます。この年は独立(1975年)を迎えたことによる社会構造の変化が影響している可能性があります。また、1970年代後半以降、特に1980年代になると年間生産量はほぼ200トン以下にまで縮小し、パプアニューギニア国内での牛乳生産が次第に低迷する時期が続きました。

21世紀に入ると、生産量は徐々に回復基調を見せはじめましたが、年間200トン台の停滞が目立ち、大規模な拡大にはつながっていません。2022年のデータからは、2018年以降約5年間、生産量が203トンという一定数に落ち着いていることがわかります。これにより、国内での牛を中心とした畜産業は、生産規模の拡大や技術的な向上が限られていることが推察されます。

このような生産量の低迷は、多くの要因によると考えられます。地理的には、パプアニューギニアは熱帯気候であるため、乳牛の育成に適した涼しい環境の確保が難しいとされています。また、畜産に必要な飼料供給やインフラ整備が十分ではないことも課題の一つです。加えて、国内需要の低迷や輸入品(特にオーストラリアやニュージーランドからの廉価な乳製品)の台頭も、生産活動を削ぐ要因となっていると考えられます。

一方で、乳製品は栄養価が高く、特にタンパク質やカルシウムなどを豊富に含むため、人口増加や健康問題の解決に重要な役割を果たします。そのため、地元での牛乳生産を増加させることは、栄養状態の向上や経済的自立につながると期待されています。

今後の課題としては、乳牛の適切な管理技術およびインフラの整備が挙げられます。たとえば、乳牛が過ごしやすい涼しい環境を整えるためのシェルターの導入や、優れた品種の牛を導入することは、乳量の向上に寄与することでしょう。また、飼料の供給を確保するため、灌漑技術を活用した牧草地の整備が必要です。さらに、他国からの技術協力を受け入れ、トレーニングプログラムを導入することで、現地農民の技術力を向上させることが重要です。

地政学的背景もこれらの課題に影響を与えています。パプアニューギニアは大きく中国やオーストラリアの影響を受ける位置にあり、両国との貿易や投資関係が国内農業基盤に間接的な影響を及ぼしています。特に、輸入品に依存しすぎることは国内産業の弱体化につながるリスクがあるため、地元の生産を育成することが戦略的に重要です。

結論として、パプアニューギニアの牛乳生産の推移は、独自の地理的や社会的制約にもかかわらず、持続可能な畜産業の構築が大きな課題となっています。今後はローカル市場を活性化させる施策を強化し、具体的にはインフラ整備、技術指導、地域内協力の枠組みづくりを通じて、生産量の安定的な成長を目指すべきです。また、国際的な支援を引き続き活用し、長期的には輸入製品への過度な依存から脱却する戦略を追求することが求められます。