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中国、香港特別行政区の牛乳生産量推移(1961年~2022年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、中国、香港特別行政区の牛乳生産量は、1961年の6,177トンから徐々に減少を続け、1990年代には急激な落ち込みを見せました。その後2000年代に入ると低水準で横ばいが続き、2022年時点では60トンと、過去6,000トンを超えていた時代と比べると極端に少ない生産量となっています。この推移は農業の変化や都市化、経済構造の転換など香港独自の要因と密接な関係があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 60 -
2021年 60 -
2020年 60 -
2019年 60 -
2018年 60 -
2017年 60 -
2016年 60 -
2015年 60 -
2014年 60 -
2013年 60 -
2012年 60 -
2011年 60 -
2010年 60
122.22% ↑
2009年 27
-43.75% ↓
2008年 48
-54.72% ↓
2007年 106
-21.48% ↓
2006年 135
1.5% ↑
2005年 133
13.68% ↑
2004年 117
21.88% ↑
2003年 96
-25.58% ↓
2002年 129
-41.1% ↓
2001年 219
-15.44% ↓
2000年 259
7.47% ↑
1999年 241
-2.03% ↓
1998年 246
14.42% ↑
1997年 215
-51.03% ↓
1996年 439
7.86% ↑
1995年 407
10% ↑
1994年 370
-28.85% ↓
1993年 520
-56.04% ↓
1992年 1,183
-28.3% ↓
1991年 1,650
-8.74% ↓
1990年 1,808
-2.11% ↓
1989年 1,847
-8.43% ↓
1988年 2,017
-8.32% ↓
1987年 2,200
-8.33% ↓
1986年 2,400
-20% ↓
1985年 3,000
-18.39% ↓
1984年 3,676
-12.68% ↓
1983年 4,210
-17.61% ↓
1982年 5,110
14.32% ↑
1981年 4,470
4.44% ↑
1980年 4,280
12.34% ↑
1979年 3,810
-4.44% ↓
1978年 3,987
-11.75% ↓
1977年 4,518
-5.52% ↓
1976年 4,782
2.86% ↑
1975年 4,649
-10.87% ↓
1974年 5,216
-10.07% ↓
1973年 5,800
-13.43% ↓
1972年 6,700
0.04% ↑
1971年 6,697
-0.49% ↓
1970年 6,730
3.3% ↑
1969年 6,515
-2.5% ↓
1968年 6,682
5.78% ↑
1967年 6,317
0.89% ↑
1966年 6,261
0.21% ↑
1965年 6,248
11.45% ↑
1964年 5,606
14.81% ↑
1963年 4,883
-13.05% ↓
1962年 5,616
-9.08% ↓
1961年 6,177 -

香港特別行政区における牛乳の生産量は、1961年の6,177トンをピークに緩やかな減少を始め、1970年代後半から顕著に低下しました。1980年代に入るとこの減少傾向は加速し、1990年代には1993年の520トンと急激な落ち込みが記録され、2008年にはわずか48トンとなるまで減少しました。それ以降は、60トン前後の水準で推移しています。このデータは、香港の農業構造や経済基盤の劇的な変化を反映しており、牛乳の生産が地域の主要産業でなくなった現状を物語っています。

このような牛乳生産量の大幅な減少は、香港が急速な都市化と産業化を経て、農業よりも商業や金融業を中心とした経済へと移行したことに起因しています。狭小な土地面積と密集した人口は酪農という土地集約型の生産活動に適しておらず、これが酪農の縮小につながっています。また、1960年代から1970年代にかけての安価な海外の乳製品輸入は地元の生産者にとって大きな競争圧力となり、さらなる生産縮小を招きました。

さらに、香港の地政学的状況や政策もこの減少に影響を与えています。行政区としての香港は中国本土とは異なる独自の法制度を有していますが、1997年の返還以降、中国本土との経済統合や国際貿易の中心地という役割が強化されました。その結果、農業や酪農といった伝統的産業の優先度は大幅に低下しました。

これに加え、気候変動や疫病の影響も考慮する必要があります。例えば、食品安全の観点から牛乳や乳製品に対する高い基準が求められる中、小規模な酪農生産者には厳しい規制が課され、生産の持続可能性が脅かされました。具体的には、1990年代以降に見られた疫病の流行や環境基準の強化が、小規模酪農に残存する困難となったと考えられます。

このような状況を踏まえ、香港における牛乳生産の将来に関してはいくつかの課題と提案があります。一つ目は、食料自給率向上の観点から、適度な規模の酪農業復興を目指すことです。農業技術の高度化や土地利用の効率化を図り、小規模ながらも高付加価値の酪農生産を支援する政策が求められます。二つ目は、国際市場からの安定的かつ高品質な乳製品調達のため、地域協力枠組みの構築が重要となります。例えば、中国本土や周辺地域との協力を通じて、乳製品供給の安定性を確保することが考えられます。

結論として、香港特別行政区の牛乳生産量推移は、経済や農業の転換期を反映する重要な指標といえます。都市化、輸入依存、地政学的背景の相互作用によって長期的に減少を続けており、未来に向けて持続可能な酪農体制の確立や輸入政策の強化が課題として浮かび上がります。国際機関や政府は、技術援助や政策支援を通じて、この地域の農業の持続可能性を確保するための取り組みを強化すべきです。