国際連合食糧農業機関が発表した最新データによると、カナダの牛乳生産量は過去60年以上の間で変動を繰り返しつつ、近年は明らかな増加傾向を示しています。1961年の8,325,517トンから、2022年には9,742,541トンにまで成長しました。一時期減少していた時期もありましたが、2000年代以降からはほぼ一貫して増加し続けています。特に2015年以降の増加スピードが顕著であり、これは国内外の市場需要の変化や政策の影響を反映したものと言えるでしょう。
カナダの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 9,742,541 |
2021年 | 9,807,284 |
2020年 | 9,640,572 |
2019年 | 9,512,006 |
2018年 | 9,524,584 |
2017年 | 9,262,710 |
2016年 | 8,733,086 |
2015年 | 8,430,178 |
2014年 | 8,068,606 |
2013年 | 8,062,213 |
2012年 | 8,227,483 |
2011年 | 8,018,190 |
2010年 | 7,911,069 |
2009年 | 8,213,300 |
2008年 | 8,140,000 |
2007年 | 8,145,000 |
2006年 | 8,041,000 |
2005年 | 7,806,000 |
2004年 | 7,905,000 |
2003年 | 7,734,000 |
2002年 | 7,964,000 |
2001年 | 8,106,000 |
2000年 | 8,161,000 |
1999年 | 8,164,000 |
1998年 | 8,200,000 |
1997年 | 8,100,000 |
1996年 | 7,890,000 |
1995年 | 7,920,000 |
1994年 | 7,750,000 |
1993年 | 7,500,000 |
1992年 | 7,633,000 |
1991年 | 7,790,000 |
1990年 | 7,975,000 |
1989年 | 7,980,000 |
1988年 | 7,827,325 |
1987年 | 7,583,895 |
1986年 | 7,521,802 |
1985年 | 7,478,905 |
1984年 | 7,641,567 |
1983年 | 7,417,160 |
1982年 | 7,815,368 |
1981年 | 7,545,367 |
1980年 | 7,412,270 |
1979年 | 7,104,747 |
1978年 | 7,622,033 |
1977年 | 7,749,048 |
1976年 | 7,692,736 |
1975年 | 7,751,230 |
1974年 | 7,633,160 |
1973年 | 7,666,858 |
1972年 | 8,025,749 |
1971年 | 7,931,800 |
1970年 | 8,314,448 |
1969年 | 8,495,296 |
1968年 | 8,336,820 |
1967年 | 8,266,967 |
1966年 | 8,345,021 |
1965年 | 8,335,949 |
1964年 | 8,401,720 |
1963年 | 8,368,608 |
1962年 | 8,345,928 |
1961年 | 8,325,517 |
カナダの牛乳生産量の長期的な推移を見ると、1960年代には8,300,000トン前後で比較的安定していた一方、1970年代から1980年代前半にかけては減少傾向が目立ちます。この時期の減少は、酪農業分野の効率化、国内需要の減少、ならびに国際市場での競争激化が原因と考えられます。また、1970年代のオイルショックや経済不況が農業全般に影響を与えた可能性もあります。しかし1980年代後半以降、政策の見直しや農業技術の進歩がこの動きを部分的に回復させました。
1990年代に入ると生産量は再び一定水準に留まり、7,500,000トンから8,000,000トンの範囲で推移しました。しかし、2000年代以降、特に2015年以降の増加傾向が鮮明になりました。2015年の8,430,178トンから2022年の9,742,541トンまで約15%以上の増加は、カナダ国内における酪農業の需要拡大だけでなく、輸出市場が拡大していることを示している可能性があります。この間、自由貿易協定(例えば、CETAやUSMCA)などが農畜産業の競争力を向上させたと考えられます。
また、牛乳の生産量が増加している背景には、カナダ国内の消費者の健康志向や、乳製品市場の多様化があると推測されます。チーズやヨーグルト、アイスクリームといった関連産業も成長しており、その素材としての牛乳需要が影響しているでしょう。さらに、先住民や地元コミュニティ向けに天然で健康的な乳製品が供給されることへの注目も高まっています。
一方で、急激な増加には課題も伴います。生産の増加が引き金となり、環境への負荷が増大する可能性があります。酪農に関連する温室効果ガスの排出や水資源の使用量増加などは、他国でも問題視されており、カナダもこれに対応するための措置を講じる必要があります。特に、地球温暖化に伴う気候変動が牛の飼育環境や飼料生産に与える影響は無視できません。エネルギー効率を更に向上させる技術や、持続可能な農業技術の普及が重要です。
また、カナダの地政学的状況を考慮すると、酪農製品を輸出する能力は政治的及び経済的安定性に左右されることがわかります。他国、特にアメリカやヨーロッパ諸国との乳製品貿易協定は重要な要素であり、これらの市場における需要が一定以上確保されていることが生産の安定につながります。同時に、中国やインドのような人口規模が大きいが牛乳の輸入依存が増加している国々との新たな市場拡大の可能性も検討に値します。
未来に向けて、カナダ政府及び畜産業者には以下のような具体的な対策が求められます。一つ目は、環境負荷を低減する持続可能な酪農技術の開発と採用の促進です。例えば、メタン排出削減につながる飼料の改良研究や、廃棄物をリサイクルするシステムの追加投資が挙げられます。二つ目は、国内外の市場分析を基に、新しい商品開発と需要予測に基づいた生産計画を立てることです。これにより過剰生産を防ぎ、利益率の向上と無駄の削減が期待できます。三つ目は、酪農業従事者への支援強化であり、新しい農業従事者の育成や移民政策を通じて労働力を確保することも重要です。
全体として、カナダの牛乳生産量の推移は国内外の需要に敏感に応じた成長を示しています。ただし、その発展を持続可能なものとするためには、環境問題や労働力不足、国際市場への依存など、依然として克服すべき課題が残されています。カナダは長期的な視野を持ちながら、環境と経済のバランスを取った酪農政策をより一層進めていく必要があります。