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北マケドニアのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した北マケドニアのテンサイ(甜菜)生産量データによると、同国の生産量は1992年の61,439トンから2023年の4,240トンへと大幅に減少しています。このデータは、北マケドニアの主要農産物であるテンサイ生産が長期的な停滞傾向にあることを示しています。特に、1990年代中盤から徐々に減少傾向を辿り、2007年以降は顕著な低水準に固定されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,240
-0.8% ↓
2022年 4,274
1.2% ↑
2021年 4,223
0.03% ↑
2020年 4,222
-3.53% ↓
2019年 4,377
7.51% ↑
2018年 4,071
-3.5% ↓
2017年 4,219
-12.85% ↓
2016年 4,841
53.5% ↑
2015年 3,154
-32.35% ↓
2014年 4,662
-30.49% ↓
2013年 6,707
-19.91% ↓
2012年 8,374
-18.45% ↓
2011年 10,269
12.69% ↑
2010年 9,112
16.82% ↑
2009年 7,800
-2.5% ↓
2008年 8,000
1.88% ↑
2007年 7,852
-68.59% ↓
2006年 25,000
-56.77% ↓
2005年 57,836
10.8% ↑
2004年 52,199
34.17% ↑
2003年 38,904
-11.18% ↓
2002年 43,800
15.26% ↑
2001年 38,000
-32.68% ↓
2000年 56,450
-15.79% ↓
1999年 67,036
15.4% ↑
1998年 58,091
-19.6% ↓
1997年 72,249
-7.7% ↓
1996年 78,278
43.35% ↑
1995年 54,607
0.93% ↑
1994年 54,103
-1.81% ↓
1993年 55,102
-10.31% ↓
1992年 61,439 -

北マケドニアにおけるテンサイ生産量のデータは、地元の農業生産がどのような変化を遂げてきたのかを明確に示しています。1992年には61,439トンもの生産量が記録されていましたが、その後の減少傾向により、2023年時点ではわずか4,240トンと大幅な低下を見せています。この減少は、気候条件の変化、農業関連政策の不足、国内農業技術の停滞、そして地域の農業生産の需要構造の変化など複合的な要因に起因していると考えられます。

1990年代初頭から1990年代後半にかけて、テンサイの生産量は比較的安定した水準を保っていましたが、特に2007年以降、極端な落ち込みが見られます。この背景には、テンサイの国際的な需要低下や、競争力のある他国の生産増加による価格低迷があると考えられます。例えば、ヨーロッパ全体では、ドイツやフランスをはじめとした主要農業国が効率的かつ大量の生産体制を維持しており、北マケドニアはこれらの農業大国に圧迫されている状況が推測されます。また、国内の農業インフラの老朽化や気候変動による干ばつなどの環境要因も無視できない課題です。

さらに、2007年以降のデータは、生産量が1万トンを下回る低水準に固定されており、これは地方経済や農民の収入に対して深刻な影響を及ぼしている可能性があります。同国の国内総生産(GDP)における農業セクターの割合は依然として重要であるものの、農業の競争力低下が全体の成長を抑制していると推測されます。

将来的には、北マケドニアのテンサイ生産の競争力を補強するための具体策が求められます。たとえば、農業従事者への技術支援や資金提供に重点を置いた国家政策は欠かせません。EUの農業補助金や技術協力プログラムを活用することも効果的です。また、持続可能な農業に向けた灌漑技術の導入や新しい耐干ばつ性テンサイ品種の開発は、気候変動の影響を軽減する可能性があります。

加えて、北マケドニアのテンサイ産業と地域経済を振興するためには、生産物を付加価値の高い製品に変換する加工産業の発展も重要です。他国事例を見ても、テンサイから砂糖やバイオエタノールを製造する付加価値化のプロセスが、経済の多様化と農業セクターの競争力強化に繋がる例が確認されています。例えばドイツでは、農産物加工技術の開発と適切な市場メカニズムを伴う政策が生産の安定化に貢献しています。

一方で、地政学的な背景も北マケドニアのテンサイ生産に影響を与える重要な要素です。バルカン半島の歴史的な地域衝突や政治的緊張が、農業支援政策の遅れや市場アクセスの閉塞感を引き起こしている可能性は否定できません。さらに、経済格差や移民問題が地域の農業人口減少に繋がり、これが間接的に生産量減少の一因となっている可能性もあります。

結論として、現在の北マケドニアのテンサイ生産における低迷は、複数の課題が交錯する中で深刻な状況にあります。しかし、技術革新、政策支援、国際協力を通じた包括的な取組みにより、この状況を回復へと導いていくことが可能でしょう。農業の重要性を再確認し、生産者を主体とした持続可能な農業開発モデルへのシフトが、同国の農業セクター全体に活力をもたらす鍵となるはずです。