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アフガニスタンのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、アフガニスタンのテンサイ(甜菜)生産量は、1960年代から1970年代にかけて増加傾向にありましたが、1980年代以降、急激に減少しました。その後も長期間の低迷を続け、21世紀初頭から徐々に回復の兆しを見せましたが、依然として安定した水準には達していません。近年では2022年と2023年に6,000トンに達しましたが、1960年代や1970年代のピーク期には遠く及びません。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,000 -
2022年 6,000
15.47% ↑
2021年 5,196
3.26% ↑
2020年 5,032
-45.8% ↓
2019年 9,284
73.11% ↑
2018年 5,363
155.14% ↑
2017年 2,102
32.87% ↑
2016年 1,582
-64.81% ↓
2015年 4,495
-60.33% ↓
2014年 11,330
-23.26% ↓
2013年 14,765
4.98% ↑
2012年 14,064
-7.69% ↓
2011年 15,236
0.24% ↑
2010年 15,200
-7.88% ↓
2009年 16,500
23.91% ↑
2008年 13,316
2.92% ↑
2007年 12,938
331.27% ↑
2006年 3,000 -
2005年 3,000
-40% ↓
2004年 5,000
400% ↑
2003年 1,000 -
2002年 1,000 -
2001年 1,000 -
2000年 1,000 -
1999年 1,000 -
1998年 1,000 -
1997年 1,000 -
1996年 1,000 -
1995年 1,000 -
1994年 1,000 -
1993年 1,000 -
1992年 1,000 -
1991年 1,000
-33.33% ↓
1990年 1,500
-57.14% ↓
1989年 3,500
16.67% ↑
1988年 3,000 -
1987年 3,000
-40% ↓
1986年 5,000 -
1985年 5,000
-80.77% ↓
1984年 26,000
62.5% ↑
1983年 16,000
-20% ↓
1982年 20,000 -
1981年 20,000
-42.86% ↓
1980年 35,000
-50% ↓
1979年 70,000
-4.11% ↓
1978年 73,000
-24.74% ↓
1977年 97,000
6.71% ↑
1976年 90,900
-16.22% ↓
1975年 108,500
62.91% ↑
1974年 66,600
16.84% ↑
1973年 57,000
-9.95% ↓
1972年 63,300
5.5% ↑
1971年 60,000
-3.23% ↓
1970年 62,000
-8.82% ↓
1969年 68,000
9.68% ↑
1968年 62,000
-7.46% ↓
1967年 67,000
19.64% ↑
1966年 56,000 -
1965年 56,000
80.65% ↑
1964年 31,000
-44.86% ↓
1963年 56,225
-7% ↓
1962年 60,456
42.58% ↑
1961年 42,400 -

アフガニスタンにおけるテンサイ生産量の推移を見ると、幾つかの重要な特徴があります。まず、1961年から1970年代半ばまでは、生産量が概ね安定して増加していたことが分かります。この期間には農業技術の向上や気候条件の安定などが後押しとなり、1975年に108,500トンというピークを記録しました。しかし、その後、社会不安や地政学的な影響を受け、1970年代後半から急激な減少傾向に転じました。

とりわけ1980年代から1990年代にかけての内戦や政情不安は、農業を含む経済全体に深刻な影響を及ぼしました。この影響で、1980年以降の生産量は急激に減少し、1990年代から2000年代初頭にかけては年間1,000トン程度で低迷しました。この期間は、農地の劣化、インフラの崩壊、農業資材の不足など、多くの障壁が生産環境を悪化させた時期と捉えられます。

21世紀に入り、国際社会の支援や復興努力が進む中で、テンサイ生産の回復が部分的に見られました。とりわけ2007年以降のデータでは、一時的に12,938トンや16,500トンにまで増えた年もあります。しかし、依然として高い波動性があり、安定的成長につながっていません。これは、アフガニスタンが直面している複雑な課題を反映しています。

テンサイは砂糖の原料として知られており、その国内需要は少なくないものの、生産が安定しないことで輸入への依存度が高まっていると考えられます。この背景には、農業基盤の未整備、気候変動の影響、限られた灌漑施設の問題が挙げられます。さらに、農地の多くがケシなどの換金作物の栽培に転換されていることも、生産量の伸びを妨げる一因とされています。

今後の課題として、まずは基幹的な農業インフラの整備が必要です。これには、潤滑な水供給を可能にする灌漑網の拡大や、持続可能な農法の導入が含まれます。また、一貫した農業政策の実施に加え、農家への教育支援や経済的なインセンティブを提供することも求められます。こうした取り組みは、長期的な生産性の向上や国内市場における供給の安定につながると考えられます。

また、アフガニスタンは他国との農業協力を深めることで、外部からの技術支援を活用し、地域間の収穫量格差を克服できる可能性があります。たとえば、隣国であるインドや中国はそれぞれ大規模な農業技術の知見を有しており、これらの国々との協力関係を強化すれば互いに利益をもたらすことが可能です。また、国際機関やNGOによる支援も引き続き重要な要素です。

地政学的なリスクも引き続き無視できません。内戦やテロが続くことで農業従事者の数が減少するだけでなく、農地自体が放置される例が増えるリスクがあります。さらには、気候変動による干ばつや異常気象も大きな脅威となっています。そのため、地域の平和構築や自然災害への予測的な対策が農業発展には欠かせないと言えるでしょう。

結論として、アフガニスタンのテンサイ生産量の安定化・発展には、多角的な取り組みが必要です。国家としての政策支援、地域間協力、国際機関からの技術・資金支援を統合的に活用し、農業を持続可能な形で発展させる方針を明確にすることが求められます。これが、アフガニスタンの国内経済の安定化や基盤強化に寄与すると期待されています。