アゼルバイジャンのテンサイ(甜菜)生産量は、1992年から2023年にかけて大きく変動しています。初期の1990年代には比較的低い生産量が続きましたが、2000年代初頭から改善の兆しを見せ、2006年には初めて15万トンを超えました。2010年に大きく増加し、2016年から2017年にかけてピークを迎えました。その後は減少傾向が見られるものの、2020年代には20万トン前後で安定した水準となっています。これらは、農業政策や経済情勢の影響を強く受けた結果と考えられます。
アゼルバイジャンのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 206,105 |
-2.16% ↓
|
2022年 | 210,645 |
18.81% ↑
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2021年 | 177,299 |
-24.15% ↓
|
2020年 | 233,760 |
6.97% ↑
|
2019年 | 218,525 |
-21.17% ↓
|
2018年 | 277,217 |
-32.4% ↓
|
2017年 | 410,085 |
31.18% ↑
|
2016年 | 312,605 |
69.64% ↑
|
2015年 | 184,280 |
6.34% ↑
|
2014年 | 173,287 |
-7.79% ↓
|
2013年 | 187,923 |
8.1% ↑
|
2012年 | 173,848 |
-31.27% ↓
|
2011年 | 252,949 |
0.43% ↑
|
2010年 | 251,854 |
33.49% ↑
|
2009年 | 188,670 |
-1.05% ↓
|
2008年 | 190,680 |
34.36% ↑
|
2007年 | 141,916 |
-15.14% ↓
|
2006年 | 167,231 |
357.12% ↑
|
2005年 | 36,584 |
-35.57% ↓
|
2004年 | 56,777 |
-55.95% ↓
|
2003年 | 128,884 |
11.34% ↑
|
2002年 | 115,759 |
180.12% ↑
|
2001年 | 41,325 |
-11.47% ↓
|
2000年 | 46,679 |
10.67% ↑
|
1999年 | 42,179 |
1.9% ↑
|
1998年 | 41,394 |
22.83% ↑
|
1997年 | 33,700 |
-26.9% ↓
|
1996年 | 46,100 |
64.16% ↑
|
1995年 | 28,083 |
57.97% ↑
|
1994年 | 17,777 |
22.6% ↑
|
1993年 | 14,500 |
-26.94% ↓
|
1992年 | 19,847 | - |
国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、アゼルバイジャンのテンサイ生産は1992年以降、大きく揺れ動く歴史を辿ってきました。1990年代は19,847トン(1992年)という低い水準から始まりましたが、2000年代初頭には徐々に増加し、2006年には167,231トンと明らかな増加傾向が見られました。特に2016年から2017年には過去最高の410,085トンを記録し、農業生産として一つの高水準を達成しました。しかしながら、それ以降は減少傾向が続き、2023年には206,105トンとなり、数値としてはピーク時の半分程度にまで落ち込みました。
この生産量の変動にはいくつかの要因が影響していると考えられます。一つ目は、農業技術の導入やインフラ整備です。アゼルバイジャン政府は2000年代初頭に農業技術の改善に取り組み、大規模なインフラ投資を行ったことがテンサイ生産の伸びを支えました。また、2002年や2006年に見られる大幅な生産量の伸びは、特定の収穫年の気象条件の好転や、新しい灌漑施設の稼働開始による影響が挙げられます。
一方で、2017年以降の減少は、いくつかの課題が重なった結果と見られます。広範な課題として挙げられるのは、地政学的な要因や気候変動の影響です。アゼルバイジャンはカスピ海沿岸に位置しており、同地域での気象災害や水不足が農業生産に悪影響を与えています。加えて、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに伴う物流の混乱や労働力の不足も、2020年代初頭の減少要因となりました。
他国と比較すると、アゼルバイジャンのテンサイ生産量はドイツやフランスのような主要なテンサイ生産国と比べると、依然として小規模です。例えば、ドイツの年間平均生産量は約3,000万トンであり、アゼルバイジャンのピーク時の20倍を超えている状況です。一方で、近隣国や中規模農業国の水準と比較すると、アゼルバイジャンの規模は地域的には一定の重要性を持っています。
未来に向けた課題としては、まず気候変動に対する適応策の強化が重要です。特に、干ばつや洪水のリスクを軽減するためには、効率的な灌漑システムの整備や適切な作付け転換が求められます。また、耕地の効率的な利用と肥料・農薬の使用方法を見直すことで、持続可能な生産モデルを構築することが可能です。さらに、地域間の協力を強化し、生産技術や市場アクセスの改善を図ることで、より安定した農業収益につなげることができます。
結論として、アゼルバイジャンのテンサイ生産は気候条件や政策的な支援によって大きな変動を経験してきました。今後の課題として、気候変動への適応と効率的な農地利用のための具体的対策を講じつつ、地域での競争力を高める必要があります。国際機関や農業専門家との連携を強化し、持続可能な農業モデルを追求することで、安定的な生産と地域経済への貢献を両立させることが期待されます。