Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が更新した最新データによれば、カナダのテンサイ(甜菜)生産量は、ここ数十年で大きな変動を見せており、直近では2022年に1,278,613トン、2023年に1,172,372トンに達しました。1960年代から1980年代にかけては概ね1,000,000トン前後で推移していましたが、1985年を境に記録的な減少が見られ、その後も一時的な増加と減少を繰り返しています。近年では2018年から生産量が増加傾向を示しており、2020年代に入って持続的な回復が見受けられる一方、依然として年ごとの生産量の変動が多いことが特徴的です。
カナダのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,172,372 |
-8.31% ↓
|
2022年 | 1,278,613 |
5.56% ↑
|
2021年 | 1,211,304 |
8.71% ↑
|
2020年 | 1,114,300 |
23.29% ↑
|
2019年 | 903,800 |
-34.35% ↓
|
2018年 | 1,376,700 |
78.54% ↑
|
2017年 | 771,100 |
-5.03% ↓
|
2016年 | 811,900 |
61.25% ↑
|
2015年 | 503,500 |
-13.28% ↓
|
2014年 | 580,600 |
-3.02% ↓
|
2013年 | 598,700 | - |
2012年 | 598,700 |
-14.85% ↓
|
2011年 | 703,100 |
38.41% ↑
|
2010年 | 508,000 |
-22.76% ↓
|
2009年 | 657,700 |
90.8% ↑
|
2008年 | 344,700 |
-54.76% ↓
|
2007年 | 762,000 |
-12.5% ↓
|
2006年 | 870,900 |
43.29% ↑
|
2005年 | 607,800 |
-18.3% ↓
|
2004年 | 743,900 |
9.33% ↑
|
2003年 | 680,400 |
97.39% ↑
|
2002年 | 344,700 |
-36.67% ↓
|
2001年 | 544,300 |
-33.7% ↓
|
2000年 | 821,000 |
10.36% ↑
|
1999年 | 743,900 |
-15.47% ↓
|
1998年 | 880,000 |
38.58% ↑
|
1997年 | 635,000 |
-38.6% ↓
|
1996年 | 1,034,200 |
0.71% ↑
|
1995年 | 1,026,900 |
-5.9% ↓
|
1994年 | 1,091,300 |
39.39% ↑
|
1993年 | 782,900 |
0.93% ↑
|
1992年 | 775,700 |
-28.51% ↓
|
1991年 | 1,085,000 |
15.22% ↑
|
1990年 | 941,700 |
13.73% ↑
|
1989年 | 828,000 |
15.48% ↑
|
1988年 | 717,000 |
-27.5% ↓
|
1987年 | 989,000 |
4.62% ↑
|
1986年 | 945,300 |
136.33% ↑
|
1985年 | 400,000 |
-56.76% ↓
|
1984年 | 925,000 |
-20.76% ↓
|
1983年 | 1,167,400 |
14% ↑
|
1982年 | 1,024,000 |
-15.75% ↓
|
1981年 | 1,215,500 |
37.95% ↑
|
1980年 | 881,100 |
3% ↑
|
1979年 | 855,400 |
-9.63% ↓
|
1978年 | 946,552 |
-6.36% ↓
|
1977年 | 1,010,842 |
-12.74% ↓
|
1976年 | 1,158,400 |
22.89% ↑
|
1975年 | 942,594 |
25.41% ↑
|
1974年 | 751,592 |
-16.67% ↓
|
1973年 | 901,900 |
-7.06% ↓
|
1972年 | 970,455 |
-12.02% ↓
|
1971年 | 1,103,100 |
32.62% ↑
|
1970年 | 831,802 |
-14.96% ↓
|
1969年 | 978,140 |
-1.82% ↓
|
1968年 | 996,289 |
1.59% ↑
|
1967年 | 980,740 |
-7.25% ↓
|
1966年 | 1,057,367 |
2.03% ↑
|
1965年 | 1,036,309 |
-11.99% ↓
|
1964年 | 1,177,440 |
0.95% ↑
|
1963年 | 1,166,404 |
16.28% ↑
|
1962年 | 1,003,070 | - |
1961年 | 1,003,075 | - |
カナダのテンサイ(甜菜)生産量は、1960年代から1980年代半ばまでは主として1,000,000トン前後の水準で安定していました。しかし、1985年に400,000トンという極端な減少が見られ、その後の生産量も激しい変動を示しています。この変動の背景には、天候や地政学的リスク、農業技術の進展、さらには農地利用の変化といった複合的な要因が影響していると考えられます。
特に、1985年以降の減少が顕著であり、これはカナダ国内における砂糖産業の競争力低下や、需要の減少が原因の一つとして挙げられます。一方で、2018年には1,376,700トンという近年の最高値を記録し、その後も1,000,000トン以上を維持するなど、生産力の回復傾向が確認されています。これには改良された農業技術や品種改良、また政府や関係機関による政策的支援などが寄与している可能性があります。
カナダのテンサイ産業が直面している課題としては、まず年ごとに生産量の大きな変動が頻繁に起こる点が挙げられます。特に1985年のような大幅な減少は、農業従事者の安定した収入を損ない、農業コミュニティ全体に負の影響を与えました。また、近年の気候変動は、テンサイ栽培に必要な生育環境を不安定にさせ、さらに問題を複雑化させています。例えば、気温上昇や異常気象は、害虫の発生や水資源の不足につながり、生産量の低下を引き起こす可能性があります。
これらの課題を克服するためには、いくつかの対策が考えられます。一つ目は、気候に適応した柔軟な農業技術の普及と推進です。例えば、干ばつや高温に耐性のあるテンサイの品種を開発し、その普及を図る取り組みが重要です。二つ目は、国内市場だけでなく国際市場を見据えた流通経路の多角化です。テンサイ由来の製品の輸出を積極的に推し進めることで、生産者の利益を増やし、産業全体の競争力を高めることができます。さらに、多雨年や干ばつ年に備えたリスク管理手法の適用、例えば農業保険の導入や供給チェーンの強化も支援策として有効です。
また、他国との比較からアイデアを得ることができます。例えば、アメリカやドイツなどテンサイを主要作物とする国々では、持続可能な農業政策や大規模な手厚い補助金制度が導入されています。これにより、生産量の安定と収益性の向上が実現されており、カナダもこれらの事例を参考にするべきです。
さらに、地政学的リスクへの対応も忘れてはなりません。テンサイは砂糖やバイオ燃料としても活用されることが多いため、需要の変化や国際価格の波及を受けやすい作物です。近年では、ウクライナ危機のような事態が国際食料市場に影響を及ぼし、バイオ燃料への需要が増加しています。このような背景を踏まえ、カナダ政府はテンサイを戦略的な食料およびエネルギー資源として活用する可能性についても模索するべきです。
総括として、カナダのテンサイ生産は長期的な変動と回復の歴史を経てきましたが、持続可能性を確保するためには、技術革新から政策的支援まで多岐にわたるアプローチが必要です。これにより、カナダはテンサイ産業の強化を図り、国内外での地位をさらに高めていくことが期待されます。将来的には、安定した生産基盤を築くとともに、気候変動や国際市場の変化に柔軟に対応できる産業構造を構築することが鍵となるでしょう。