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リビアの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、リビアの小麦生産量は過去60年以上にわたり大きな変動が見られます。とりわけ1960年代から1980年代にかけては、大幅な増加や減少を繰り返しており、1980年代には一時的に年間20万トンの生産量を達成しました。その後、1990年代以降は12万〜15万トンの水準が続き、2010年代には断続的に20万トンに到達したものの、2020年以降は13万トン付近で停滞しています。本データは、リビアが直面する政策的・気候的課題と、その食料自給率改善の必要性を浮き彫りにしています。

年度 生産量(トン)
2022年 130,000
2021年 130,000
2020年 130,000
2019年 140,000
2018年 200,000
2017年 140,000
2016年 200,000
2015年 160,000
2014年 200,000
2013年 200,000
2012年 200,000
2011年 166,000
2010年 132,239
2009年 105,000
2008年 104,000
2007年 104,000
2006年 104,000
2005年 125,000
2004年 125,000
2003年 125,000
2002年 125,000
2001年 125,000
2000年 125,000
1999年 130,000
1998年 140,000
1997年 156,400
1996年 124,000
1995年 117,000
1994年 120,000
1993年 126,000
1992年 125,000
1991年 130,000
1990年 128,760
1989年 185,000
1988年 161,011
1987年 172,000
1986年 190,000
1985年 149,000
1984年 183,634
1983年 209,737
1982年 188,000
1981年 123,110
1980年 140,500
1979年 110,000
1978年 99,295
1977年 48,117
1976年 133,101
1975年 75,134
1974年 38,682
1973年 67,327
1972年 41,585
1971年 17,726
1970年 27,189
1969年 78,421
1968年 52,041
1967年 62,221
1966年 57,788
1965年 56,913
1964年 28,000
1963年 34,100
1962年 33,600
1961年 29,992

リビアの小麦生産量の推移を振り返ると、1960年代から1980年代にかけては大幅な変動が見られます。例えば、1965年の約5.69万トンから翌1966年には5.77万トンに増加したものの、1970年には2.7万トンに大きく減少しています。その後、1980年代に入ると政府の農業政策や灌漑整備などの影響もあり、生産量は20万トン前後まで大きな成長を遂げました。この間の増減は、気候状況や農業技術の発展度合い、そして国の政策の変化が直接的に影響を与えたものと考えられます。

1990年代中盤以降から2010年代前半にかけて生産量は概ね安定していましたが、20万トンを超えるピークが訪れる一方で、それ以上の持続的向上は見られませんでした。2010年代に入り一時的に20万トンを再び記録しますが、最近の2020年から2022年にかけては13万トン付近で伸び悩む状況にあります。このような停滞の背景には、紛争や経済的混乱、さらには気候変動といった地政学的・環境的リスク要因が影響していると考えられます。

リビアの小麦生産量が重要視される理由は、造林可能な面積が限られるリビアの地理的条件と直接関係しています。リビアは砂漠地帯が国土の大半を占めており、農業に適した土地と水資源が不足しています。このため、小麦を含む穀物の生産に高度な灌漑技術や政策支援が必要不可欠です。また、人口増加による食料需要の高まりを背景に、輸入依存度の増加が予想されるため、食料自給率をいかにして向上させるかは喫緊の課題です。

国際的な視点で見ると、近隣の大麦や小麦の主要生産国であるエジプトやトルコと比較すると、リビアの小麦生産量は極めて限定的です。エジプトは年間880万トン以上の小麦を生産しており、これはリビアの現在の生産量の約68倍にもなります。また、アメリカやフランスなどの伝統的な農業国は、気候危機や市場変動を受けつつも数百万〜数千万トン規模の小麦を安定的に供給できています。これに対するリビアの生産能力・地政学的安定度は依然課題が多いといえます。

気候条件や地政学的紛争の影響が特に深刻です。2020年代初めの停滞は、国内の政治的対立や内戦の影響が背景にあると考えられます。また、乾燥した気候条件のため、頻発する干ばつも農業生産を阻む大きな要因です。このような状況下でリビアが「持続可能な農業」を実現するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。

第一に、灌漑インフラのさらなる整備が求められます。オアシスの地下水や海水淡水化施設を活用するほか、雨水貯蓄システムの導入も効果的です。第二に、農業技術の向上があります。耐乾燥性の高い作物の導入や、生産性向上が期待できる品種改良が鍵となります。第三に、FAOや他の国際機関との連携を強化し、援助プログラムを通じて農家への技術指導を強化すべきです。この点で、周辺地域との協力や専門的支援の受け入れが推進されるべきです。

結論として、リビアの小麦生産量は過去の実績からみても増減を繰り返しており、2020年代は停滞傾向にあります。長期的に国内農業の生産性を向上させるためには、気候変動への適応、水資源の最適化、技術革新、さらには地政学的な安定の回復が不可欠です。どの対策も容易ではありませんが、これらが取り入れられることで、リビアが小麦生産の持続可能性を確保し、食料安全保障を改善する大きな一歩となるでしょう。