国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ニューカレドニアのサツマイモ生産量は、長期的には1960年代後半から1990年代初期まで比較的安定していたものの、その後急激な減少を見せており、2000年以降は低い水準で推移しています。しかしながら、2020年ごろから一部回復の兆しも見られ、2020年の生産量724トンをピークに、その後も概ね500~700トン前後で推移しています。
ニューカレドニアのサツマイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 558 |
-1.4% ↓
|
2022年 | 566 |
-0.39% ↓
|
2021年 | 569 |
-21.51% ↓
|
2020年 | 724 |
15.7% ↑
|
2019年 | 626 |
-4.5% ↓
|
2018年 | 656 |
32.34% ↑
|
2017年 | 495 |
-14.57% ↓
|
2016年 | 580 |
-1.28% ↓
|
2015年 | 587 |
25.78% ↑
|
2014年 | 467 |
15.59% ↑
|
2013年 | 404 |
26.65% ↑
|
2012年 | 319 |
-17.99% ↓
|
2011年 | 389 |
-56.29% ↓
|
2010年 | 890 |
29.17% ↑
|
2009年 | 689 |
-30.75% ↓
|
2008年 | 995 |
21.19% ↑
|
2007年 | 821 |
-9.98% ↓
|
2006年 | 912 |
-17.91% ↓
|
2005年 | 1,111 |
-1.81% ↓
|
2004年 | 1,132 |
83.8% ↑
|
2003年 | 616 |
54.33% ↑
|
2002年 | 399 |
46.69% ↑
|
2001年 | 272 |
-25.92% ↓
|
2000年 | 367 |
-25.07% ↓
|
1999年 | 490 |
-28.7% ↓
|
1998年 | 687 |
-18.22% ↓
|
1997年 | 840 |
-36.57% ↓
|
1996年 | 1,324 |
-22.15% ↓
|
1995年 | 1,701 |
-17.78% ↓
|
1994年 | 2,069 |
-14.16% ↓
|
1993年 | 2,410 |
-10.99% ↓
|
1992年 | 2,708 |
-9.73% ↓
|
1991年 | 3,000 |
-3.23% ↓
|
1990年 | 3,100 |
-3.13% ↓
|
1989年 | 3,200 |
-3.03% ↓
|
1988年 | 3,300 |
-2.94% ↓
|
1987年 | 3,400 | - |
1986年 | 3,400 | - |
1985年 | 3,400 | - |
1984年 | 3,400 | - |
1983年 | 3,400 |
3.03% ↑
|
1982年 | 3,300 |
3.13% ↑
|
1981年 | 3,200 |
3.23% ↑
|
1980年 | 3,100 |
-1.59% ↓
|
1979年 | 3,150 |
-1.56% ↓
|
1978年 | 3,200 | - |
1977年 | 3,200 | - |
1976年 | 3,200 | - |
1975年 | 3,200 | - |
1974年 | 3,200 |
6.67% ↑
|
1973年 | 3,000 | - |
1972年 | 3,000 |
11.11% ↑
|
1971年 | 2,700 |
-10% ↓
|
1970年 | 3,000 |
20% ↑
|
1969年 | 2,500 | - |
1968年 | 2,500 | - |
1967年 | 2,500 |
-44.44% ↓
|
1966年 | 4,500 |
50% ↑
|
1965年 | 3,000 | - |
1964年 | 3,000 | - |
1963年 | 3,000 | - |
1962年 | 3,000 | - |
1961年 | 3,000 | - |
ニューカレドニアは太平洋に位置するフランス海外領土で、熱帯性気候を持ち、農業の中でも特に根菜類の栽培に適した地域とされています。その中でサツマイモは、伝統的にこの地域の重要な食糧作物でありながら、過去数十年間で生産量の推移に大きな変動を見せています。1960年代初頭、3,000トン前後で安定していたサツマイモの生産量ですが、1966年には一時的に4,500トンまで増加を見せました。その後、1967年には2,500トンへ減少し、1980年代までは概ね3,000トン台を維持していました。
しかし1990年代に入り、明らかな下降傾向が顕著になり、1997年から1999年にかけて生産量は1,000トンを下回りました。そして2000年に367トンという最低水準に達した後、2004年まで回復を見せたものの、長期的には安定しない状況が続いています。
減少の背景として考えられる要因は複数あります。一つは地政学的リスクです。ニューカレドニア特有の土地利用競争や、鉱業資源(ニッケル)の採掘に伴う農地の減少が、生産量の変動に影響を及ぼしている可能性があります。また、この地域では気候変動による干ばつや豪雨など、極端な気象条件が発生しやすく、農作物の収穫量に直接的な影響を及ぼしています。さらに、農業従事者が高齢化し、若年層が都市部に集中しているため、農業人口の減少も大きな課題となっていると考えられます。
近年の動向としては、2020年に724トンと回復傾向が見られ、その後も500~700トン台で推移しています。これは、地元政府や国際支援機関の支援による農地再生プロジェクトや、土壌改良の取り組みが進展していることが関係していると考えられます。また、新型コロナウイルスの影響で世界的に食料安全保障が注目された結果、地域レベルで農業政策の見直しが行われたことも、生産回復の一因として挙げられるでしょう。
今後の課題としては、まず持続可能な農業の確立が必要です。具体的には、気候変動に対処するための耐乾性の高い品種の導入や、灌漑システムの整備が求められます。さらに、若年層や地元住民に対して農業の価値を再認識させ、農業経営を職業選択肢の一つとして促進するための教育や支援の強化も重要です。
また、ニューカレドニアのような小規模な経済圏では、外部市場との連携も欠かせません。近隣の太平洋諸島やアジア諸国との貿易協力を強化し、地域全体での農業生産性向上を目指すことが必要です。このような取り組みは、日本や韓国、中国といった主要経済国が展開する農業技術支援プログラムを取り入れることでも可能となるでしょう。
結論として、ニューカレドニアのサツマイモ生産量は、長期的な減少トレンドが続く中で回復の兆しを見せていますが、持続的かつ安定的な生産には政策的な介入が求められます。地球規模での気候変動リスクを考慮しつつ、地域特性に合わせた技術投資と教育が将来の安定に寄与すると考えられます。国際的な連携を強化することが、ニューカレドニアだけでなく周囲の太平洋地域全体の食料安全保障を高める鍵となるでしょう。