Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)のデータによると、チャドのサツマイモ生産量は1960年代から現在までに大幅な変動を経験しています。2022年の生産量は218,015トンであり、1990年代中頃の増加傾向や2000年代初頭の急激な落ち込みを経て、2010年代には大きく回復しました。特に2011年以降の劇的な生産量の増加が顕著です。一方で、2019年以降はやや減少傾向が見られ、これには気候変動や農業インフラの影響が推測されます。
チャドのサツマイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 218,334 |
0.15% ↑
|
2022年 | 218,015 |
11.32% ↑
|
2021年 | 195,842 |
-5.04% ↓
|
2020年 | 206,243 |
-5.1% ↓
|
2019年 | 217,324 |
-14.92% ↓
|
2018年 | 255,447 |
27.78% ↑
|
2017年 | 199,912 |
17.3% ↑
|
2016年 | 170,431 |
75.47% ↑
|
2015年 | 97,128 |
-31.92% ↓
|
2014年 | 142,667 |
-50.83% ↓
|
2013年 | 290,137 |
-44.04% ↓
|
2012年 | 518,448 |
139.4% ↑
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2011年 | 216,562 |
373.63% ↑
|
2010年 | 45,724 |
58.46% ↑
|
2009年 | 28,856 |
-33.42% ↓
|
2008年 | 43,342 |
-24.83% ↓
|
2007年 | 57,658 |
5268.53% ↑
|
2006年 | 1,074 |
-89.84% ↓
|
2005年 | 10,575 |
-57.7% ↓
|
2004年 | 25,000 |
458.78% ↑
|
2003年 | 4,474 |
-87.22% ↓
|
2002年 | 35,000 |
-12.5% ↓
|
2001年 | 40,000 |
-22.33% ↓
|
2000年 | 51,497 |
-16.94% ↓
|
1999年 | 62,000 |
-4.62% ↓
|
1998年 | 65,000 |
8.33% ↑
|
1997年 | 60,000 |
4.23% ↑
|
1996年 | 57,565 | - |
1995年 | 57,565 |
3.31% ↑
|
1994年 | 55,722 |
18.56% ↑
|
1993年 | 47,000 |
13.9% ↑
|
1992年 | 41,263 |
24.87% ↑
|
1991年 | 33,046 |
-28.98% ↓
|
1990年 | 46,533 |
1.16% ↑
|
1989年 | 46,000 | - |
1988年 | 46,000 |
4.55% ↑
|
1987年 | 44,000 |
10% ↑
|
1986年 | 40,000 | - |
1985年 | 40,000 |
5.26% ↑
|
1984年 | 38,000 |
8.57% ↑
|
1983年 | 35,000 | - |
1982年 | 35,000 | - |
1981年 | 35,000 | - |
1980年 | 35,000 | - |
1979年 | 35,000 |
2.94% ↑
|
1978年 | 34,000 |
3.03% ↑
|
1977年 | 33,000 |
3.13% ↑
|
1976年 | 32,000 |
6.67% ↑
|
1975年 | 30,000 |
15.38% ↑
|
1974年 | 26,000 |
4% ↑
|
1973年 | 25,000 |
-7.41% ↓
|
1972年 | 27,000 |
3.85% ↑
|
1971年 | 26,000 |
4% ↑
|
1970年 | 25,000 | - |
1969年 | 25,000 |
-3.85% ↓
|
1968年 | 26,000 |
-7.14% ↓
|
1967年 | 28,000 |
-6.67% ↓
|
1966年 | 30,000 |
-14.29% ↓
|
1965年 | 35,000 |
-12.5% ↓
|
1964年 | 40,000 |
-11.11% ↓
|
1963年 | 45,000 |
-10% ↓
|
1962年 | 50,000 |
4.17% ↑
|
1961年 | 48,000 | - |
チャドのサツマイモ生産量の推移を見ると、1960年代初頭には生産量は年間約48,000トンを記録しましたが、以降は徐々に減少し、1970年代後半から1980年代初頭にかけて35,000トン前後に安定しました。この時期の減少は、主に農業技術やインフラの未発展、また政治的な不安定さが影響していたと考えられます。しかし1980年代半ばから1990年代初頭にかけて穏やかな増加が見られ、1994年には55,722トンに達しました。この増加期には、地域の農業振興政策や、より効率的な生産技術の導入が一役買った可能性があります。
興味深いのは、2001年から2006年にわたる大幅な減少です。この期間には生産量がわずか1,074トン(2006年)まで減少しました。この急落の背景には、干ばつなどの自然災害や、農業用水や種苗といった必要なインフラの不足が大きく影響したと考えられます。また、地域的な衝突や紛争も生産低下に寄与した可能性があります。
一方、2011年以降は劇的な回復が見られ、2012年には518,448トンと、記録的な生産量を達成しました。このような劇的な増加は、チャド政府や国際機関による農村開発プロジェクトや、気候条件の一時的な改善が寄与したと考えられます。ただし、2013年以降からは再び年ごとの変動が大きくなり、特に2014年と2015年は減少傾向を示しています。
近年では、2018年の255,447トンをピークとして、それ以降はやや減少する傾向にあります。2022年には218,015トンとなり、2018年以降の水準を下回る結果となりました。この減少には、干ばつや洪水などの極端な気象現象が関与していると考えられます。気候変動による農業生産への影響は、近年多くの研究で指摘されており、チャドのサツマイモ生産においても例外ではありません。
このデータから浮かび上がる課題の一つは、気候変動への適応力の強化です。チャドは地理的にサハラ砂漠に近接し、干ばつの影響を受けやすい地域であるため、耐乾性のある作物選定や効率的な灌漑システムの普及を促進することが重要です。また、農村地域のインフラ整備や農業技術の向上も不可欠です。特に、サツマイモは食糧安全保障と収入源の両面で重要な作物であり、これを安定して生産できる基盤を整えることが大切です。
さらに、地域衝突や社会不安が農業生産に与えるリスクについても注目する必要があります。安全保障の強化や政府による支援体制の整備は、農家が農業活動を安心して行える環境を提供するために必要です。同時に国際機関や他国との協力により、人道支援や気候変動対策を進めることが求められます。
今後は、これらの課題に対応するため、気候変動への戦略的な対処(例:水資源管理や作付けスケジュールの見直し)の具体化や、持続可能な農業技術の導入を積極的に推し進める必要があります。加えて、グローバル化する市場を活用し、サツマイモの輸出拡大を目指すことで、チャドの経済全体に寄与するビジョンを描くことも重要な戦略となります。このような幅広い対策により、チャドのサツマイモ生産はより安定し、持続可能性を高める方向に向かうことでしょう。