Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによれば、ベネズエラ(ボリバル共和国)の天然蜂蜜生産量は、過去60年以上にわたり大きな変動を示しています。1960年代にはおおむね800トン前後で安定していた生産量は、1970年代後半から急激に減少し、一時は100トンを下回りました。1980年代後半に回復傾向を見せたものの、1990年代再び減少が続きました。その後も波のある推移を見せながら、2022年には643トンまで増加しています。これらのデータは、生態的・経済的影響や政策の変化が生産量に及ぼした影響を物語っています。
ベネズエラ (ボリバル共和国)の天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 643 |
2021年 | 620 |
2020年 | 607 |
2019年 | 589 |
2018年 | 631 |
2017年 | 1,008 |
2016年 | 610 |
2015年 | 537 |
2014年 | 529 |
2013年 | 455 |
2012年 | 515 |
2011年 | 497 |
2010年 | 509 |
2009年 | 366 |
2008年 | 244 |
2007年 | 270 |
2006年 | 320 |
2005年 | 240 |
2004年 | 90 |
2003年 | 100 |
2002年 | 151 |
2001年 | 253 |
2000年 | 403 |
1999年 | 323 |
1998年 | 320 |
1997年 | 317 |
1996年 | 319 |
1995年 | 331 |
1994年 | 500 |
1993年 | 600 |
1990年 | 800 |
1989年 | 983 |
1988年 | 921 |
1987年 | 671 |
1986年 | 616 |
1985年 | 574 |
1984年 | 490 |
1983年 | 383 |
1982年 | 323 |
1981年 | 88 |
1980年 | 115 |
1979年 | 139 |
1978年 | 278 |
1977年 | 464 |
1976年 | 580 |
1975年 | 600 |
1974年 | 600 |
1973年 | 600 |
1972年 | 600 |
1971年 | 600 |
1970年 | 620 |
1969年 | 650 |
1968年 | 700 |
1967年 | 720 |
1966年 | 750 |
1965年 | 750 |
1964年 | 800 |
1963年 | 800 |
1962年 | 800 |
1961年 | 800 |
ベネズエラの天然蜂蜜生産量は、時代ごとの政治・経済状況や環境変化によって大きな影響を受けてきました。1960年代から1970年代前半までのベネズエラでは、蜂蜜生産量は比較的安定しており、年間800トン付近で推移していました。しかし、1970年代後半から1980年代初期にかけて、劇的な減少が見られています。この背景には、農業技術の未発達な点や、インフラ不足、さらにその間に発生した気候変動や森林伐採の影響などが考えられます。また、この期間は、産油国としての経済集中による他産業への無関心が、蜂蜜生産という小規模産業をさらに弱体化させた時期とも解釈できます。
その後、1980年代中盤には一時的に回復が見られ、これはおそらく農業支援政策と地域協力の拡大によるものと考えられます。1988年には921トン、1989年には983トンと、高い生産量を記録しました。しかし、その後再び1990年代に減少を始め、この時期には経済の混乱や森林破壊がさらなる悪影響を及ぼした可能性があります。また、国際市場における蜂蜜の価格低下が、生産者のモチベーションと持続性を損なったことも一因とみられます。
その後2000年以降、安定的ではないものの生産が上下を繰り返しています。とりわけ2017年には1,008トンを記録するなど、短期間ではありますが大幅な増加も見られました。ただし、このようなピークの直後には再び生産が縮小するケースが多くあります。2022年には643トンと一定の安定を見せつつも、まだ高いレベルでの安定には至っていません。
現代において、この変動する生産量の背景には、環境変化や政策の不安定性の他にも、新型コロナウイルス感染症流行の影響が少なからず関係していると考えられます。このパンデミックによって輸送や市場流通が一時的に阻害されたことが、蜂蜜生産のサプライチェーンに打撃を与えた可能性があります。また、気候変動による生態系への影響や養蜂業の課題は依然として無視できません。
ベネズエラは豊かな自然環境を持つ国であり、蜂蜜生産の潜在的な成長余地は大きいと考えられます。ただし、環境保護と持続可能な農業技術の推進が今後の重要な課題となります。具体的には、森林保全と結びつけた養蜂活動の支援、農村部への教育・技術訓練の提供、在来種のミツバチを活用した生態系保全型の農業推進が求められます。また、地域協力を通じて、生産者と国内外市場を直接つなぐ仕組みを強化することも重要です。例えば、南米諸国間での養蜂業のベストプラクティスの共有や合同のマーケティング活動が、地域全体の競争力を高める支援となるでしょう。
地政学的リスクの観点から、ベネズエラはしばしば政情の不安定が課題として挙げられます。この不安定さが、農業分野への予算不足や適切な政策支援の欠如を引き起こしていることが問題です。特に、蜂蜜のような非石油産業においては、政策的に後回しにされる可能性があります。さらに、外貨不足によって輸入品(例えば養蜂に必要な機材や医薬品)の調達が困難となる現状も見逃してはなりません。
今後は、政策の一環として養蜂業の重要性を再認識し、経済多様化の柱の1つとしての位置づけが必要です。国際協力機関や開発機関との連携を強化し、技術移転や資金援助を活用して生産基盤を強化する戦略が求められます。また、気候変動への対応として、耐性の高い在来種の保護と再生が優先されるべきです。これらの取り組みが整えば、ベネズエラの天然蜂蜜生産量は持続可能な成長を遂げ、国内外の市場での競争力も向上する可能性があります。