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パナマの天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、パナマにおける天然蜂蜜の生産量は2011年の755トンから急激に減少し、2022年には134トンにまで落ち込んでいます。この減少傾向は一貫しており、一時的な増加が見られる年もあるものの、長期的には著しい低下が確認されています。

年度 生産量(トン)
2022年 134
2021年 201
2020年 170
2019年 201
2018年 237
2017年 228
2016年 404
2015年 433
2014年 535
2013年 547
2012年 512
2011年 755

パナマの天然蜂蜜生産量は過去10年以上にわたり連続的に減少しており、その推移は大きな懸念を呼んでいます。2011年の段階では755トンと比較的良好な水準を記録していましたが、その後の数値は一貫して下落。直近の2022年には134トンと、約82%もの減少率を記録しています。この背景には複合的な要因が関与していると考えられます。

まず、気候変動の影響が挙げられます。気温や降雨パターンの変化が蜜源植物の生育に悪影響を及ぼし、それが蜜蜂の活動範囲や生産性にも直接的な影響を及ぼしている可能性があります。また、特にラテンアメリカ全体で深刻化している森林減少や、農業開発の広がりがパナマでも同様に蜜源の減少を引き起こしていることが推察されます。

次に、蜜蜂自体に影響を与える外的要因として、農薬使用や病害虫の蔓延、さらにはコロニー崩壊症候群(蜂群崩壊症候群:突然巣の蜜蜂が消える現象)の増加も考えられます。農薬の使用は蜜蜂にとって生命を脅かす問題であり、同様に蜂の健康を損なう病害虫(例えばバロアダニなど)の増加も蜜蜂集団を著しく減少させる要因となり得ます。

地域ごとの特性を鑑みると、パナマはその地政学的条件から北米市場やヨーロッパ市場への蜂蜜輸出が期待される国ですが、生産量の急激な低下によりその競争力は著しく損なわれています。例えば、同様の気候条件にある他の中南米諸国、ブラジルやアルゼンチンでは、精算の近代化と持続可能な養蜂手法の普及により生産量をある程度維持できています。これと比較すると、パナマの養蜂業は遅れが目立つと言わざるを得ません。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大やそれによる輸送や流通の混乱も、現地の養蜂業に影響を与えたと考えられます。パンデミック下では人員や資材の不足が起こりやすく、適切な管理が難しくなるため、生産の停滞につながった可能性があります。

課題克服のためには、複数の取り組みが求められます。まず、国レベルで気候変動への適応策を取り込みつつ、蜜源植物の保全や再生のための植林活動を推進することが重要です。また、農薬使用の制限や持続可能な農業手法の導入も急務です。併せて、養蜂農家向けの教育プログラムを整備し、高度な養蜂技術や病害虫の予防策を普及させる必要があります。

国際的な協力もまた鍵となるでしょう。他国との技術交流や研究協力を通じて、持続可能な養蜂業モデルの導入を目指すべきです。特に、中南米における成功事例をモデルにした地域間協力の枠組みを構築することは、長期的に安定した生産量の回復に寄与する可能性があります。

結論として、天然蜂蜜の生産量減少はパナマだけの問題ではなく、気候変動や環境劣化といった世界的な課題と深く結びついています。国際社会としても地域独自の問題に耳を傾け、それに基づいた支援を行っていくことが求められています。