Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)による最新データによると、チャドの天然蜂蜜の生産量は1961年の830トンから2022年の1,038トンまで増加しました。特に1960年代から1970年代にかけて安定的に増加が見られた一方、1990年代以降は一部の年で減少や停滞も見られました。2020年代に入ると再び緩やかに増加し、近年は1,000トンを超える水準を維持しています。
チャドの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,026 |
-1.15% ↓
|
2022年 | 1,038 |
0.31% ↑
|
2021年 | 1,035 |
0.31% ↑
|
2020年 | 1,032 |
-0.03% ↓
|
2019年 | 1,032 |
3.04% ↑
|
2018年 | 1,001 |
-0.48% ↓
|
2017年 | 1,006 |
-0.79% ↓
|
2016年 | 1,014 |
-1.52% ↓
|
2015年 | 1,030 |
-2.44% ↓
|
2014年 | 1,056 |
0.53% ↑
|
2013年 | 1,050 |
5% ↑
|
2012年 | 1,000 |
1.01% ↑
|
2011年 | 990 |
1.02% ↑
|
2010年 | 980 |
-0.51% ↓
|
2009年 | 985 |
0.51% ↑
|
2008年 | 980 |
0.51% ↑
|
2007年 | 975 |
0.52% ↑
|
2006年 | 970 |
0.73% ↑
|
2005年 | 963 |
0.62% ↑
|
2004年 | 957 |
0.1% ↑
|
2003年 | 956 |
0.58% ↑
|
2002年 | 951 |
0.58% ↑
|
2001年 | 945 |
0.58% ↑
|
2000年 | 940 |
0.59% ↑
|
1999年 | 934 |
0.59% ↑
|
1998年 | 929 |
0.59% ↑
|
1997年 | 923 |
0.6% ↑
|
1996年 | 918 |
0.6% ↑
|
1995年 | 912 |
0.61% ↑
|
1994年 | 907 |
0.61% ↑
|
1993年 | 901 |
0.61% ↑
|
1992年 | 896 |
0.62% ↑
|
1991年 | 890 |
-4.48% ↓
|
1990年 | 932 |
-2.92% ↓
|
1989年 | 960 | - |
1988年 | 960 | - |
1987年 | 960 | - |
1986年 | 960 | - |
1985年 | 960 | - |
1984年 | 960 | - |
1983年 | 960 | - |
1982年 | 960 | - |
1981年 | 960 | - |
1980年 | 960 |
-3.03% ↓
|
1979年 | 990 |
1.02% ↑
|
1978年 | 980 |
1.03% ↑
|
1977年 | 970 | - |
1976年 | 970 |
1.04% ↑
|
1975年 | 960 | - |
1974年 | 960 | - |
1973年 | 960 |
3.23% ↑
|
1972年 | 930 |
1.09% ↑
|
1971年 | 920 |
1.1% ↑
|
1970年 | 910 |
1.11% ↑
|
1969年 | 900 | - |
1968年 | 900 |
1.12% ↑
|
1967年 | 890 |
1.14% ↑
|
1966年 | 880 |
1.15% ↑
|
1965年 | 870 |
1.16% ↑
|
1964年 | 860 |
1.18% ↑
|
1963年 | 850 |
1.19% ↑
|
1962年 | 840 |
1.2% ↑
|
1961年 | 830 | - |
チャドはその地理的条件と伝統的な養蜂の技術が相まって、天然蜂蜜の生産が長い歴史を持つ国の一つです。1961年には830トンを記録しており、その後1970年代までは年平均10トン程度の穏やかな増加傾向を維持していました。ただし、1980年代には生産量が960トンで長期間停滞するなど、拡大ペースが鈍化する状況も見えました。この背景にはチャド国内の気候変動やインフラ整備の遅れ、地域紛争といった地政学的要因が影響した可能性があります。
1990年代に入ると、1991年の890トンを底にして徐々に上昇し始め、2000年代には再び安定的な成長が見られます。この時期、チャドにおける農業振興政策や持続可能な資源利用への意識向上が生産回復の一因と考えられます。特に2012年には初めて1,000トンに達し、その後10年間おおむね高い水準が維持されています。しかし、2015年から2018年の間に一時的な減少や停滞(1,030トンから1,001トン)も見られました。これは、この期間に起こった気候変動の影響として、干ばつや豪雨が蜂蜜生産に与えた影響とも関連している可能性があります。
最近の2022年には1,038トンと過去最高水準に達しましたが、これでも生産拡大のスピードが遅いと評価されます。世界的な蜂蜜の需要は、健康志向の高まりや自然食品への関心の増加により上昇しており、この点ではチャドには一層の生産基盤の強化が求められています。
一方、課題としては、人為的要因と自然環境要因が挙げられます。例えば、輸送網や加工施設の不足は、生産者が適正な価格で蜂蜜を市場に流通させるための大きな障害です。また、気候変動による干ばつや植生の変化が、養蜂に必要な植物資源に影響を及ぼし、生産の安定性を低下させるリスクも存在しています。さらに、蜂の生息地を脅かす乱開発や農薬の影響にも注意する必要があります。
これらの課題を解決するためには、複合的な取り組みが必要です。具体的には、養蜂技術の向上を目指した人材育成プログラムの導入、および持続可能な養蜂を支援するための補助金制度の創設が考えられます。また、地域コミュニティや国際機関と連携し、効率的な輸送およびインフラ環境の改善を進めることも重要です。さらに、気候変動に対応するため、植林プロジェクトの推進や農薬使用の制限を含む環境保護策の強化が欠かせません。
地政学的なリスクも無視することはできません。チャドはアフリカ大陸のサヘル地帯に位置しており、この地域の不安定な政情が蜂蜜市場にも影響を与える可能性があります。これに対しては、地域内での協力体制の強化や農産物輸出の多角化を図ることで生産者のリスク分散を助ける施策が求められます。
総じて、チャドにおける天然蜂蜜の生産量は、過去数十年で少しずつ成長してきたものの、増加幅は緩やかであるため更なる努力が必要です。持続可能な成長を実現するためには、技術支援やインフラ改善だけでなく、環境保護や地域協力を含む包括的なアプローチが鍵となるでしょう。この方向性に基づき、政府や国際機関が一層積極的な支援策を講じるべきです。