ITU(国際電気通信連合)が発表したデータによれば、イエメンの人口100人当たりの携帯電話の契約数は、1990年代から急激に増加し、2013年に62.42件でピークを迎えました。その後は、内戦や経済危機の影響もあり、2022年には52.69件と減少傾向が続いています。この数値は世界平均と比較するとかなり低い水準にあり、隣国や他の中東諸国と比べてもやや劣っています。
イエメンの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1992年 | 0.01 |
1993年 | 0.034 |
1994年 | 0.052 |
1995年 | 0.051 |
1996年 | 0.053 |
1997年 | 0.071 |
1998年 | 0.091 |
1999年 | 0.152 |
2000年 | 0.172 |
2001年 | 0.772 |
2002年 | 2.475 |
2003年 | 3.344 |
2004年 | 7.118 |
2005年 | 10.682 |
2006年 | 13.556 |
2007年 | 19.208 |
2008年 | 27.626 |
2009年 | 34.594 |
2010年 | 44.798 |
2011年 | 45.8 |
2012年 | 53.006 |
2013年 | 62.424 |
2014年 | 61.614 |
2015年 | 52.678 |
2016年 | 56.135 |
2017年 | 51.134 |
2018年 | 49.683 |
2019年 | 48.303 |
2020年 | 47.013 |
2021年 | 53.837 |
2022年 | 52.693 |
イエメンの携帯電話契約数の推移を振り返ると、1990年代初期はほぼ普及していない状態でしたが、2000年代に入ると爆発的な成長を遂げました。特に2002年から2010年にかけてはインフラ整備が進み、国内通信市場の拡大が進展しました。この間、2009年には携帯電話契約者数が100人当たり34.59件に到達し、その後も増加していきました。そして2013年には62.42件とピークを迎えましたが、その後は経済や政治の不安定化により、契約数は減少傾向をたどります。
内戦が始まった2015年以降、インフラの破壊や経済危機による通信サービス停止が一因となり、携帯電話契約数の減少が顕著に現れました。ただし2021年には若干の回復傾向がみられるものの、その水準は2013年のピークを下回るものとなっています。最新データである2022年の100人当たり52.69件は、中東地域の他国と比べると低い値です。例えばサウジアラビアやアラブ首長国連邦では100人当たりの契約数が100件を超えており、イエメンの通信インフラの遅れが際立っています。
イエメンの特定の状況を考える場合、大きな要因として内戦の影響が挙げられます。通信インフラの破壊に加え、失業率の上昇や購買力の低下が多くの家庭の通信契約を困難にしていることが考えられます。また、こうした状況下で通信事業者が新たな投資を行うことも難しく、サービスの質も低下している可能性があります。さらに農村部では、もともとインフラの整備が遅れていたため、利用できるサービスの範囲は限られており、都市部との格差が広がっています。
将来的には、安定した通信インフラの整備が政府や国際的支援団体の重要な課題となるでしょう。国際機関や近隣諸国の支援を受け、新たな通信タワーを構築し、破壊された設備の再構築を行うことが必要です。また、通信サービスの再開・改善に向けた専門的人材の育成、低所得層に対するスマートフォンやSIMカードの支援策の導入も効果的です。さらに、複雑な地政学的リスクを軽減するために和平交渉を進め、政治的安定を図ることも、通信環境を整える上で不可欠です。
現在、携帯電話は単なる通話やメッセージ送信の手段にとどまらず、インターネットアクセスや教育、医療サービス、さらには災害救援活動の基盤ともなっています。このため、携帯電話契約数の増加は、単に統計上の改善を示すだけでなく、国民生活の質を向上させる重要な指標としても捉えることができます。イエメンの場合でも、通信インフラの発展は、経済復興や人々の生活水準向上に直結するため、その再整備が急務です。
国際社会の協調によって通信インフラの再建が進めば、携帯電話契約数の増加と同時に、教育や医療分野でもデジタル化が進み、イエメンの未来に明るい兆しが見えてくる可能性があります。そのためには、通信分野への投資拡大とともに、家庭や個人が通信の恩恵を受けられるような政策や支援が不可欠です。