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エジプトの100人当たりの携帯電話の契約数推移

ITU(国際電気通信連合)が発表したデータによると、エジプトの人口100人当たりの携帯電話の契約数は、1990年代初頭では0.01未満という非常に低い普及率から始まりました。その後、2000年代に急速に拡大し、2012年には106.09と100を超えました。しかし、2013年以降は停滞あるいは低下傾向が見られ、2020年には88.73とピーク時から減少しましたが、2022年には92.01と再びやや回復しました。この推移は、技術革新だけでなく、国内の経済状況や地域紛争、政治的不安定などが影響を与えた可能性があります。

年度 100人当たりの携帯電話の契約数
1990年 0.006
1991年 0.007
1992年 0.008
1993年 0.011
1994年 0.011
1995年 0.011
1996年 0.011
1997年 0.097
1998年 0.132
1999年 0.688
2000年 1.905
2001年 3.834
2002年 6.041
2003年 7.632
2004年 9.859
2005年 17.236
2006年 22.325
2007年 36.602
2008年 49.241
2009年 64.738
2010年 80.984
2011年 93.525
2012年 106.092
2013年 106.776
2014年 99.711
2015年 96.206
2016年 98.003
2017年 101.148
2018年 90.402
2019年 90.268
2020年 88.733
2021年 85.39
2022年 92.009

エジプトの携帯電話契約数の推移を見てみると、1990年代はまだ技術や市場が成熟しておらず、携帯電話が一部の高所得層に限られた高級な通信手段であったことが分かります。1997年ごろから急激な成長が見られ、2000年代にはインフラ整備や価格の低下、そして競争の激化により広範な普及が可能となりました。この頃、多くのエジプト人が携帯電話を初めて手にするようになり、2007年には36.60、2010年には80.98に達しました。その後、2012年には契約数が人口を上回るレベルに達し、特殊な利用例を含むような多重契約が増えていきました。

しかし2014年以降、契約数が低下に転じました。この背景には、経済の低迷や所得の伸び悩み、ならびに通信事業者がSIMカードの不正利用を防ぐために契約整理を行ったことが影響したと考えられます。また、エジプトの社会経済的な課題や中東地域特有の地政学的な不安定性も影響を与えたと言えるでしょう。さらに近年、携帯電話契約数が人口100人を超えている国々では、飽和した市場の中での緩やかな減少が共通の現象となっています。エジプトにおいても同様に、これらの人口統計的・経済的要因による減少が見られました。

国際的な比較に目を向けると、同じ中東地域でもUAEやサウジアラビアなどの石油輸出国では、エジプトよりも高い普及率が続いています。一方でインドのような新興国では、普及率が急上昇していながらも、100人当たり数を超えていない国もまだ多く、エジプトはその中間に位置する存在と考えられます。また、日本や韓国といった技術先進国ではより早い段階で普及のピークを迎えており、現在ではデバイスの多様化や5G技術の導入が契約数動態の特徴となっています。

考慮すべきもう一つのポイントは、新型コロナウイルスの世界的流行とそれに伴う経済的圧力です。2020年から2021年にかけて世界中で苦境が広がった際、エジプトでも契約数が低下した点には注目すべきです。こうした現象は、収入の減少や生活費の削減を強いられた経済的困窮の中で通信費が見直された結果と言えるでしょう。

今後の課題としては、まず低所得層や農村部のような周辺地域でのさらなる通信インフラの充実が挙げられます。都市部との格差縮小を目指すとともに、安価で高品質なサービスの提供が鍵となるでしょう。また、モバイルインターネット接続や新しい通信技術(5Gなど)の普及を進めることで、契約数の改善につなげる取り組みが重要です。同時に、政府が通信事業者との連携を深め、通信インフラへの投資や規制の見直しを進める必要があります。

エジプトは地政学的にも戦略的に重要な位置にあり、この通信技術が国力や地域での影響力を高める可能性を持っています。特に若年層が比較的多いエジプトにおいて、モバイル技術を活用した教育や雇用支援プログラムを展開することで、国全体の経済成長を押し上げる効果が期待されます。国際機関も含めたさらなる支援と協力が鍵と言えます。今後、国内外が具体的な対策を講じることで、エジプトの携帯電話契約数減少は持続可能な成長路線にシフトできるでしょう。