ITU(国際電気通信連合)が発表したデータによると、ポルトガルの人口100人当たりの携帯電話契約数は1990年の0.065件から2022年の124.55件へと急激に増加しています。特に2000年代初頭には普及速度が加速し、2004年には100件を超え、その後も堅調な成長を続けていることが分かります。しかし、2009年から2016年にかけては景気低迷の影響もあり減少傾向が見られました。最も新しい2022年では契約数は124.55件となり、再び上昇トレンドを示しています。
ポルトガルの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1990年 | 0.064 |
1991年 | 0.126 |
1992年 | 0.373 |
1993年 | 1.013 |
1994年 | 1.731 |
1995年 | 3.391 |
1996年 | 6.578 |
1997年 | 14.875 |
1998年 | 30.204 |
1999年 | 45.649 |
2000年 | 64.704 |
2001年 | 76.915 |
2002年 | 83.118 |
2003年 | 95.506 |
2004年 | 100.663 |
2005年 | 108.78 |
2006年 | 115.957 |
2007年 | 127.56 |
2008年 | 132.778 |
2009年 | 111.365 |
2010年 | 115.318 |
2011年 | 116.752 |
2012年 | 113.262 |
2013年 | 114.587 |
2014年 | 114.289 |
2015年 | 113.017 |
2016年 | 111.994 |
2017年 | 114.131 |
2018年 | 115.255 |
2019年 | 115.742 |
2020年 | 115.079 |
2021年 | 120.943 |
2022年 | 124.549 |
1990年に人口100人当たり0.065件という低水準からスタートしたポルトガルの携帯電話普及率は、技術発展と共に急速な伸びを見せました。この時期には世界全体で通信インフラの整備が進み、ヨーロッパでは特に携帯電話の普及が社会的、経済的に重要視されていました。ポルトガルにおいても、1995年から2004年頃にかけてインターネットとデジタル通信が普及する中で携帯電話の契約数が大幅に成長し、2004年には初めて契約数が人口100人を超えました。この時点でほぼ全住民が1台以上の携帯電話を所有する計算となります。
特筆すべきは、2009年から2016年にかけて契約数が減少もしくは横ばいとなった点です。この期間は、2008年の世界金融危機やユーロ圏債務危機が経済に大きな影響を及ぼした時期と重なります。経済的な混乱による所得低下や消費控えが影響している可能性がありそうです。また、この時期には複数契約やプリペイド契約の見直しも進んだため、契約数の減少に寄与したと考えられます。
2017年以降の契約数の回復には、スマートフォンの急速な普及やデジタルサービスの多様化が貢献しています。音声通話からデータ通信へと利用目的が大きくシフトした結果、契約数の伸びにも再び勢いが戻りました。また、コロナ禍の影響が顕著だった2020年以降、リモートワークやオンライン教育への需要が契約数を押し上げる要因となったと分析されます。この背景として、通信インフラおよび通信事業者によるプラン改定や地域的なネットワーク強化の取り組みが挙げられます。
他国と比較すると、2022年時点での124.55件という数値はヨーロッパ平均と同等かやや上回る状況です。例えば、同時期におけるドイツでは約130件、イギリスでは約120件、日本では約120件前後とされています。一方で、これを中国の約115件やインドの約85件と比較することで、ポルトガルがいかに通信インフラの高水準を維持しているかが分かります。あるいは、より高い契約率を誇る韓国やシンガポールなどでは150件を超えることを考えると、ポルトガルにおける更なる成長余地も見えてきます。
課題としては、契約数の増加が過剰となるリスクや人口減少に伴う需要の減少が挙げられます。人口100人当たりの数値がすでに100を超えているため、新規契約の伸びは頭打ちになることが予想されます。さらに、地域格差やシニア層へのデジタルデバイド(情報格差)の解消も今後の重要なテーマです。
これらの課題に対して、政府および事業者にはいくつかの対策が求められます。例えば、農村部や高齢者向けのデジタル普及支援プログラムを推進することで、全地域・全世代への通信技術の浸透を図る必要があります。また、デジタル経済の更なる拡大を目指し、5Gなど新しい通信技術の活用を一層進めることも効果的です。通信料金やプランについても、消費者視点での柔軟性を拡大することで、新たな需要喚起が期待されます。
結論として、ポルトガルの携帯電話契約数は長期的な成長を続けてきましたが、今後は新しいサービスの提供や地域間・世代間の格差解消を通じて、持続可能な発展を実現する必要があります。国際的には、通信技術の普及が経済活性化にも大きく寄与することが分かっており、ポルトガルは地域協力や国際的な基準づくりの中で重要な役割を果たしていくことが期待されます。