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ネパールの100人当たりの携帯電話の契約数推移

ITU(国際電気通信連合)が発表した最新データによると、ネパールの人口100人あたりの携帯電話の契約数は、1999年の0.02契約から2022年には129.6契約まで増加しました。この増加は特に2005年以降急速であり、2015年に初めて100契約を超えました。その後2018年にピークとなる137.4契約を記録しましたが、それ以降減少傾向にあり、2022年では再び緩やかな上昇に転じている状況です。この推移からネパール社会における通信技術の普及の進展と現在の市場成熟度が示されています。

年度 100人当たりの携帯電話の契約数
1999年 0.022
2000年 0.041
2001年 0.069
2002年 0.086
2003年 0.318
2004年 0.449
2005年 0.864
2006年 4.363
2007年 12.236
2008年 15.624
2009年 20.712
2010年 33.855
2011年 48.977
2012年 60.769
2013年 78.017
2014年 83.829
2015年 99.658
2016年 115.287
2017年 128.077
2018年 137.436
2019年 134.21
2020年 130.204
2021年 127.228
2022年 129.642

ネパールでは1999年、携帯電話の普及はほとんど進んでおらず、人口100人あたりの契約数は0.02契約という極めて低い値から始まりました。この時期、ネパール国内では携帯電話の普及が都市部に限られており、インフラ設備の未整備、経済規模の小ささ、そして山岳地形による地政学的制約などが普及を妨げる要因となっていました。

しかし2005年に1契約を超えると、そこから急速に普及が進みました。この背景には、技術革新とともに携帯電話端末の価格が下がり、中所得者層や地方部でも利用が広がったことが挙げられます。また、移動通信インフラの整備が進む一方で、海外からの資金援助や支援プロジェクトが通信セクターの発展を強く後押ししました。特に2010年以降の契約数の急増は、スマートフォン市場が成長し、インターネットを利用したサービス需要が増大したことも要因の一つといえます。

2015年には100人あたり99.7契約に達し、ほぼ全人口が何らかの形式で携帯電話を所有している状況になりました。そして2018年に137.4契約でピークを迎えるものの、それ以降は若干の減少傾向が見られました。この減少は市場が成熟期を迎えたことや、回線の複数契約の解消が進んだ可能性、さらには経済面や社会情勢の影響が関係していると考えられます。新型コロナの拡大が生活様式や消費行動に変化をもたらし、一部では支出を抑えるために契約を削減した家庭もあったと推測されます。

一方で、2022年には129.6契約まで上昇に転じた点は注目すべきです。この背景には、デジタル時代におけるネットワークの重要性が再認識され、生活やビジネスのオンライン化が進行しつつあるネパールの現状があります。また、政府や関連機関による情報通信技術(ICT)推進政策や都市部での5Gインフラ整備が影響している可能性も考えられます。

他国と比較すると、日本は2022年の携帯電話契約数が人口100人あたり約157.5契約(総務省データ)で、世界的に見ても高い値を示しています。韓国(153.3契約)、アメリカ(120.7契約)など先進国と比べるとネパールはやや低い水準ですが、インド(87.0契約)よりも上回っています。また、欧州の先進諸国の一部の国々ではすでに契約数が150契約を超えており、ネパールの契約率は新興国の中では中程度に位置するといえます。

ネパールがさらに発展するためには、以下の課題が顕在化しています。一つは地方や山岳地帯における残されたデジタル格差です。これらの地域では依然として通信インフラが不十分であり、携帯電話サービスの利用が制限されています。さらに、経済的なハードルによって低所得世帯が利用を控えている現実もあります。これを解決するためには、政府主導でのユニバーサルサービス政策の強化や、民間事業者との協力的なインフラ整備、また通信料金のさらなる引き下げが重要です。

地政学的に見ても、ネパールはインドと中国という二大国に挟まれており、通信セクターの技術的支援や投資をめぐる競争が注目されます。これに加え、将来の混迷による地域紛争や環境リスク(例えば、地震による被害)が通信インフラに直接的な影響を及ぼす可能性があるため、災害に強い通信網の整備も急務となります。

総じて、ネパールの携帯電話契約数の推移は通信分野の躍進を示していますが、そこには新たな課題や改善の余地も見られます。今後、政府と民間の連携を深め、地方部も含めた全土でのデジタル包摂を進める政策を展開する必要があります。また、持続可能な通信インフラへの投資を重視し、未来の災害や情勢不安にも耐えうる強靭な通信基盤を整えることが求められます。