ITU(国際電気通信連合)が発表したモロッコの人口100人当たりの携帯電話契約数のデータによると、1990年にはほぼゼロに近い契約数だったものが、2022年には約141.38に達しました。このデータは、モロッコの通信技術の発展と携帯電話の普及の歴史を鮮明に示しており、特に2000年代以降で急成長が見られます。近年、契約数が人口を上回るような「複数契約」が一般化していることも顕著です。
モロッコの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1990年 | 0.003 |
1991年 | 0.006 |
1992年 | 0.012 |
1993年 | 0.026 |
1994年 | 0.052 |
1995年 | 0.11 |
1996年 | 0.159 |
1997年 | 0.271 |
1998年 | 0.419 |
1999年 | 1.31 |
2000年 | 8.201 |
2001年 | 16.494 |
2002年 | 21.154 |
2003年 | 24.813 |
2004年 | 31.088 |
2005年 | 40.723 |
2006年 | 51.907 |
2007年 | 64.129 |
2008年 | 72.121 |
2009年 | 78.99 |
2010年 | 98.513 |
2011年 | 111.094 |
2012年 | 116.983 |
2013年 | 125.501 |
2014年 | 128.806 |
2015年 | 124.219 |
2016年 | 118.249 |
2017年 | 123.609 |
2018年 | 124.523 |
2019年 | 128.543 |
2020年 | 134.703 |
2021年 | 138.454 |
2022年 | 141.382 |
モロッコの携帯電話契約数の推移をみると、1990年代には通信インフラが発展途上にあったため、契約数がごくわずかにとどまっていました。1990年のデータでは、人口100人当たりの契約数はわずか0.004未満で、この段階では携帯電話は主に特権層や都市部の一部の人々にしか利用可能ではありませんでした。しかし2000年に入ると、急激な発展が見られ、100人当たりの契約数は8.20と大幅に増加しました。これは技術革新や通信サービスの価格低下などに起因しており、多くの新興国でも見られる特徴です。
2010年代に入ると、モロッコは「モバイルファースト」の国家的な通信政策とともに、さらに契約数が増加しました。この時点で、携帯電話は都市部だけでなく地方部にも普及し、国全体で新しいサービスへのアクセスが可能となりました。2010年には100人当たり98.51と、ほぼすべての国民が携帯電話を所有している状態に近づきました。2011年以降は人口を超える契約が一般化しており、複数台の端末所有やデータ専用SIMカードの利用が増えたことを反映しています。
最新のデータである2022年では、契約数が100人当たり141.38に達し、さらなる成長を示しています。これは、スマートフォンの普及率が高まり、デジタル化が加速していることを象徴しています。ただし、成長率は鈍化しており、これは市場の成熟度の高さや、携帯電話契約数が一定の飽和状態に近づいていることを示唆しています。日本や韓国、アメリカなどの先進国では、多くの国が100人当たり100を超えている状況である一方、モロッコの契約数伸び幅は他の中所得国と似た傾向を見せています。
課題として挙げられるのは、都市部と地方部間の接続性の格差です。多くの地方住民がスマートデバイスやモバイルインターネットを十分に利用できていない状況が、一部報告されています。また、携帯電話市場は十分に競争的な環境であるとは言えず、サービスの価格と質においてさらなる改善が必要とされています。さらに、地政学的な背景として、モロッコが地域の安定性や隣国との関係維持に努めている事実が、経済成長と通信インフラ拡大を支える上で重要な要因となっています。この点で、周辺地域の政情不安が悪影響を与える可能性も視野に入れておくべきです。
今後の施策としては、地方部への通信インフラ投資を強化することや、携帯電話市場の競争を促進する政策が求められます。例えば、通信企業間の競争を促すための規制施策が有効です。また、公共政策として通信教育やデジタル化の推進を進めることで、デジタル格差の是正が期待されます。さらに、地域間協力の強化も長期的には有効な手段となるでしょう。また、新型コロナウイルスによるリモートワークやオンライン教育の需要拡大がデジタル技術への依存を高めている現状から、より迅速な動的対応が必要です。
総じて、このデータはモロッコが20世紀末から急速な通信技術の発展を遂げた一方で、次段階への成長を進めるには、都市と地方間の格差是正と質の向上が鍵であることを示しています。国際的で持続可能な通信モデルを採用することが、将来の持続的発展とデジタル社会構築に寄与するでしょう。