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レソトの100人当たりの携帯電話の契約数推移

ITU(国際電気通信連合)の最新データによると、レソトの人口100人当たりの携帯電話の契約数は1996年には0.06契約に過ぎませんでしたが、2017年には109.68契約と過去最高を記録しました。その後、2018年以降は契約数に減少傾向が見られ、2022年には67.52契約にまで下がっています。この変動から、レソトの通信分野の発展と課題、そしてそれに関連する社会的要因を見ていくことができます。

年度 100人当たりの携帯電話の契約数
1996年 0.064
1997年 0.177
1998年 0.495
1999年 0.601
2000年 1.08
2001年 2.85
2002年 6.906
2003年 6.319
2004年 9.882
2005年 12.631
2006年 18.105
2007年 24.323
2008年 29.734
2009年 32.899
2010年 48.817
2011年 60.478
2012年 75.183
2013年 86.323
2014年 102.078
2015年 101.021
2016年 106.486
2017年 109.683
2018年 71.98
2019年 75.555
2020年 69.324
2021年 79.833
2022年 67.517

ITUのデータから、レソトの携帯電話契約数の推移を分析することで、同国における携帯通信技術の進化と、それに伴う社会的・経済的課題が浮かび上がります。このデータが示す携帯電話契約数は、移動通信インフラの普及程度や社会経済活動の変化、さらには住民の情報アクセス能力を表します。

1996年にはほぼゼロに近い水準であった契約数が、2000年以降急増しました。この期間は、アフリカ南部全体で携帯電話の普及が広がり、インフラ開発が進んだ時期でもあります。特に2001年から2007年にかけて、契約数は二桁成長を続け、2013年には人口の86.32%が携帯電話を契約していました。そして2014年から2017年にかけて契約数はさらに増加し、2017年には人口100人当たり109.68契約に達しました。この値は、1人が複数契約を保有する「オーバーサブスクリプション」状態を示しており、携帯通信が都市部を中心に日常生活の一部となっていることを意味します。

しかし、2018年以降は契約数に大幅な減少が見られます。この背景にはいくつかの要因が挙げられます。まず、レソトは経済規模が小さく、農業が主要産業であるため、経済全体の成長が緩慢であることが通信市場にも影響を及ぼしていると考えられます。また、失業率の高さや所得の低さから、住民が通信サービスを維持する負担に直面している可能性があります。2020年からは新型コロナウイルスによる経済的影響も大きく、特に低所得層の契約見直しや通信インフラ投資の停滞がこの減少を助長した可能性があります。

さらに、地政学的背景も無視できません。レソトは南アフリカ共和国に完全に囲まれている立地から、国際通信企業や都市部の経済に依存した形で成長してきましたが、近年ではその集中度が課題として浮き彫りになっています。自然災害や政治的な不安定性が通信インフラへの投資を一部妨げており、地方部ではまだインターネットを含む通信手段が十分に普及していません。

これらの点から、今後取り組むべき課題が見えてきます。通信インフラを維持・拡充するためには、政府と通信事業者間の協力が不可欠です。たとえば、農村地域への投資を促進するための財政支援策や、低所得世帯向けに通信費用を抑える補助金プログラムを導入することが考えられます。また、南アフリカとの地域連携を強化し、安定した通信インフラを構築するための協力体制を作ることも重要です。これにより、国全体の通信格差の是正が期待できます。

同時に、デジタル教育の普及を推進し、スマートフォンや通信サービスを活用した生産性向上の機会を住民に提供することも不可欠です。デジタル技術を利用した農業や小規模事業の活発化が、経済全体の向上につながるでしょう。

契約数の減少はレソトが直面している課題を反映していますが、これは同時に改善のチャンスを示しています。通信技術は人口の生活水準を向上させ、経済の基盤を強化する重要な要素です。国際機関や国際的通信企業の支援を得ながら、レソト政府が地方地域への政策を強化すれば、この国は再び上昇傾向を見せる可能性があります。