ITU(国際電気通信連合)が発表した2022年のデータによると、ラオス人民民主共和国の人口100人当たりの携帯電話の契約数は63.6031件となっています。この数値は1992年の0.0064件から大幅に増加しており、特に2000年代後半に急激な伸びを見せました。しかし、2011年の85.4204件をピークに、その後は減少と停滞の兆候が見られ、近年は50~60件台で推移しています。このデータは、ラオスにおける通信インフラ発展の流れや課題を示唆しています。
ラオス人民民主共和国の100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1992年 | 0.006 |
1993年 | 0.007 |
1994年 | 0.012 |
1995年 | 0.031 |
1996年 | 0.075 |
1997年 | 0.095 |
1998年 | 0.122 |
1999年 | 0.226 |
2000年 | 0.233 |
2001年 | 0.535 |
2002年 | 0.983 |
2003年 | 1.973 |
2004年 | 3.539 |
2005年 | 11.234 |
2006年 | 16.977 |
2007年 | 24.471 |
2008年 | 32.956 |
2009年 | 51.921 |
2010年 | 63.31 |
2011年 | 85.42 |
2012年 | 66.064 |
2013年 | 69.88 |
2014年 | 69.022 |
2015年 | 54.912 |
2016年 | 57.441 |
2017年 | 53.041 |
2018年 | 51.545 |
2019年 | 64.294 |
2020年 | 63.348 |
2021年 | 64.955 |
2022年 | 63.603 |
ラオスの人口100人当たりの携帯電話契約数は、1990年代初頭には非常に低い水準にあり、わずか0.006件程度にとどまっていました。この時期、携帯電話は非常に高価な技術であり、発展途上国での普及は限定的でした。しかし、2000年代に入ると、世界的な技術革新や通信機器のコスト低下により、ラオスでも携帯電話の契約数が目覚ましい成長を遂げました。特に2005年から2011年の期間は急激な伸びを記録し、契約数は11.2341件(2005年)から85.4204件(2011年)まで増加しました。これには、大手通信企業の参入やインフラ整備などが影響したと考えられます。
一方で、2011年以降の動向に注目すると、急激な成長期が終わり、むしろ減少傾向または緩やかな増加にシフトしています。2012年以降は100人当たりの契約数が減少し、2022年時点での63.6031件まで低下しています。この現象にはいくつかの要因が考えられます。一つには、ラオス国内の携帯電話市場が飽和状態に近づき、新規契約の伸びが自然に鈍化していることが挙げられます。また、所得水準の上昇とともに、複数回線を維持する必要性が薄れ、契約数が整理された可能性もあります。加えて、他の通信手段(例えばインターネットを利用したメッセージアプリなど)の普及が契約数減少に影響している可能性も指摘されます。
ラオスの100人当たり携帯電話契約数の現状を他国と比較してみると、日本(2022年時点で100人当たり契約数約135件)や韓国(同じく150件以上)などとは大きな差があります。同様に、インドの約85件、中国の約115件と比べても見劣りする状況です。一方で、一部アフリカ諸国に比べれば依然として高い水準を維持していることから、中進国としての位置付けが鮮明になります。
地政学的背景を含めて考えると、ラオスは海への出口を持たない内陸国であり、通信インフラ整備のための資材輸送や技術移転が容易ではない環境下にあります。また、その経済はタイや中国といった大国に依存する傾向が強く、これらの国々が提供する技術支援および資金調達は、将来の通信市場の発展において重要な意味を持つでしょう。
さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが通信に与えた影響も見逃せません。この間、移動制限により通信手段への需要が一時的に増加したと考えられる一方で、経済の停滞が長期的な成長を阻害した可能性もあります。これにより、契約数の伸び率は安定的な回復を見せつつも、2022年には依然として停滞感が残っています。
未来に向けて、ラオスの通信環境を持続的に向上させるためにはいくつかの課題と対策が必要です。まず、通信事業の競争促進が挙げられます。現在の市場では少数の事業者が支配的な立場にあり、料金の低下やサービスの多様化が限定的である可能性があります。政府は規制改革や海外通信企業との提携を推進し、競争環境を整えるべきです。また、農村部や山岳地帯に暮らす国民への通信インフラ整備も大きな課題です。この点で、公益性のあるプロジェクトとして国際機関との連携が有効でしょう。
さらに、教育分野や医療分野でのICT(情報通信技術)の活用を強化し、国民生活の質を向上させるとともに通信サービスへの依存度を広げる取り組みが必要です。こうした施策はラオスの通信市場の成熟化を促進し、契約数の安定した成長にも寄与するでしょう。国際社会や地域間協力による支援を活用することで、ラオスの通信分野はさらなる発展を遂げる可能性を秘めています。