ITU(国際電気通信連合)が発表した最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の人口100人あたりの携帯電話の契約数は、2009年の0.28件から2022年の24.37件へと増加しました。この期間中、特に2010年代初頭から中盤にかけて緩やかに伸び、2020年以降に再度急増したことが特徴です。一方で、2021年から2022年の増加率は低下傾向にあり、今後の増加ペースが重要な観点となることが示唆されます。他国と比較して契約数は依然として低く、中国、日本、韓国などの隣国との格差が顕著であると言えます。
朝鮮民主主義人民共和国の100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
2009年 | 0.281 |
2010年 | 1.749 |
2011年 | 4.034 |
2012年 | 6.83 |
2013年 | 9.679 |
2014年 | 11.143 |
2015年 | 12.827 |
2016年 | 14.202 |
2017年 | 14.931 |
2019年 | 16.513 |
2020年 | 23.195 |
2021年 | 23.101 |
2022年 | 24.371 |
北朝鮮における携帯電話の契約数の推移は、同国の経済的、社会的背景、そして地政学的な状況を反映したものと考えられます。2009年にわずか0.28件であった契約数は、2010年には1.75件、そして2022年には24.37件に達しました。この伸びは、政府によるインフラ投資や技術導入が進展したことを示しています。しかし、2000年代後半以降、携帯電話の普及が急速に進んだ他の都市化された国々と比較すると、北朝鮮の普及率は著しく低いままです。同じ2022年のデータで比較すると、日本は携帯電話契約数が100人あたり約100件を超えており、近隣の中国や韓国も同様の数値を示しています。こうした先進国との格差は、経済制裁や国内技術基盤の制約が影響を及ぼしていると考えられます。
北朝鮮の携帯電話普及率の足踏み状態は、いくつかの要因に由来しています。まず、政府による厳格な情報管理政策があり、国外と通じる通信手段の制限が存在することが挙げられます。さらに、全体的な経済状況やインフラ開発の遅れが普及の障壁となっています。例えば、北朝鮮には外貨の不足や基盤的技術開発の遅れがあり、最新の通信技術を取り入れるための資源が不足していると言えます。
一方で、2020年以降の契約数の急激な増加は注目すべき特長です。この伸びは、コロナ禍を契機として国内の情報通信需要が高まったことを示している可能性があります。世界的に見ても、感染症拡大に伴いリモート通信技術の利用が副次的に加速した傾向がみられましたが、北朝鮮でも同様の現象が見られたのかもしれません。
しかしながら、2021年から2022年にかけてのわずかな伸び率や、契約数が他国に比べて依然として少ない現状は、政策と社会面での課題を浮き彫りにしています。特に、技術普及に対する需要はあるものの、それに対応するインフラや自主開発技術の供給が追いついていない可能性があります。
北朝鮮がこの状況を改善するためには、いくつかの施策を講じることが考えられます。具体的には、政府が通信インフラの改善に積極的に投資し、地方都市や農村地帯など、都会以外のエリアへのインフラ展開を進める必要があります。また、国外からの技術導入や通信事業支援を受け入れることで、技術的・経済的障壁を克服する道を模索することが重要です。そのためには、まずは制裁解除に向けた多国間の外交交渉と、透明性のある共同プロジェクトの立ち上げがカギとなります。
さらに、地政学的背景も携帯電話契約率に影響を及ぼしている点に留意すべきです。北朝鮮がしばしば直面する地域的衝突や緊張は、通信技術分野にも大きな影響を及ぼします。例えば、制裁や孤立化政策により、専用ネットワークや先端技術の輸入が制限されています。このような状況を踏まえ、国連や他国際機関が公平な形で北朝鮮に技術的支援を提供する枠組みを設けることも考えられます。
今後重要となるのは、技術の普及を進めつつ、同時に情報の自由化やインフラの地域間格差の解消に向けた具体的な政策を実行することです。この目標を達成するためには、国のみならず国際社会が一体となって北朝鮮との協力を進める必要があります。通信技術の普及は、経済成長の促進、教育機会の拡大、そして地域間や国家間の平和構築に寄与する可能性があり、その実現は北朝鮮の将来にとっても非常に重要な一歩となるでしょう。