最新のITU(国際電気通信連合)のデータによると、ヨルダンにおける人口100人あたりの携帯電話契約数は2022年に67.568件となりました。この指標は、1990年代初期には1人に満たない契約数から急速に増加し、2013年にはピークとなる134.038件を記録しました。しかし、その後は減少傾向に転じ、2020年代に入って穏やかな回復を見せています。この動向には技術進化や経済状況だけでなく、地域情勢や社会的要因が影響を及ぼしています。
ヨルダンの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1990年 | 0.041 |
1991年 | 0.039 |
1992年 | 0.037 |
1993年 | 0.035 |
1994年 | 0.033 |
1995年 | 0.265 |
1996年 | 0.523 |
1997年 | 0.951 |
1998年 | 1.701 |
1999年 | 2.391 |
2000年 | 7.692 |
2001年 | 16.765 |
2002年 | 23.118 |
2003年 | 24.56 |
2004年 | 29.356 |
2005年 | 55.255 |
2006年 | 71.484 |
2007年 | 73.71 |
2008年 | 80.109 |
2009年 | 88.701 |
2010年 | 95.509 |
2011年 | 105.24 |
2012年 | 124.576 |
2013年 | 134.038 |
2014年 | 128.116 |
2015年 | 145.33 |
2016年 | 98.532 |
2017年 | 94.987 |
2018年 | 83.478 |
2019年 | 72.707 |
2020年 | 63.94 |
2021年 | 65.261 |
2022年 | 67.568 |
携帯電話契約数の推移は、社会のインフラ整備や経済的な動き、技術の普及度を示す重要な指標です。ヨルダンでは、1990年に人口100人あたり0.04件という極めて低い契約率からスタートし、その後2000年代にかけて携帯電話の利用が急速に普及していきました。2000年に7.69件だった契約数は、2010年には95.51件、2013年には134.038件に達しました。この急激な普及の背景には、通信インフラの整備や、安価で利用可能な携帯端末の供給拡大、通信事業の自由化が大きく寄与していたと考えられます。その一方で、スマートフォン普及以前の携帯電話利用の一部は、複数契約が一般的で、一人が複数SIMカードを利用することで契約数が実態以上にカウントされる場合もありました。
2013年以降は契約数が減少に転じており、特に2016年には98.53件、2020年には63.94件まで落ち込みました。この減少は、いくつかの要因が考えられます。一つに経済状況の変化が挙げられます。ヨルダンは中東地域の経済的変動に左右されやすく、緊張する地域情勢や難民の流入が社会基盤に圧力をかけています。また、スマートフォンの普及やモバイルインターネットの需要拡大に伴い、通信サービスが統合され、一人あたりの契約数が減少傾向にあることが影響していると予測されます。このような背景は、日本やアメリカ、ドイツといった先進国でも同様に観察されており、スマートフォンの普及が従来型携帯電話の契約重複を減少させたとされています。
2020年の最低値以降、契約数は微増し、2022年には67.568件に達していますが、その回復は緩やかです。この増加の理由として、新型コロナ感染症のパンデミックがもたらした電子商取引や遠隔学習、リモートワークの普及が契約件数を押し上げた可能性が考えられます。しかし、全体的な回復には至らず、安定的な増加を目指すには通信インフラのさらなる発展が不可欠です。
今後の課題としては、まず通信インフラの拡充を進めることが挙げられます。ヨルダンは地政学的に中東の交差点に位置し、多様な文化や経済的影響を受ける一方で、周辺地域の紛争や経済的不安定さが課題となっています。このような背景のもと、国家が主導して通信技術への投資を行うことで、人々が安定的にモバイルサービスを利用できる環境を構築することが重要です。また、デジタルリテラシーの向上や年齢・所得層別の利用格差を縮小する取り組みも求められます。
さらには、ヨルダン政府及び国際機関による協力を通じて、既存のユーザー層のニーズに応えるだけでなく、地方や都会の周辺部における未接続地域を減らす努力が必要です。例えば、学術機関や企業と協力し、学校や地元企業への通信設備の提供を推進することで、地域社会の通信利用を支える基盤を整えるべきです。
結論として、ヨルダンにおける携帯電話契約数の減少は、社会経済の変化を反映しており、単なる普及率の低下ではなく、新しい時代に即したコミュニケーションの利用形態に転換していることを示しています。これを踏まえ、政府及び民間の協力を通じて通信インフラの改善とデジタル利用の促進を図ることが、今後の持続的な成長に向けた鍵となるでしょう。