ITU(国際電気通信連合)が発表した最新データによると、2022年におけるキリバスの人口100人当たりの携帯電話の契約数は48.8件となり、1998年の0.025件から大きく増加しました。特に2009年から急激な伸びが見られ、その後も一定の増加を続けていますが、2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響やその他の要因で一時的な停滞が観察されました。このような推移は、小島嶼(しょうとうしょ)国家であるキリバス特有の地理的・経済的な課題と、技術的進展の影響を反映しています。
キリバスの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1998年 | 0.025 |
1999年 | 0.229 |
2000年 | 0.337 |
2001年 | 0.436 |
2002年 | 0.535 |
2003年 | 0.557 |
2004年 | 0.639 |
2005年 | 0.662 |
2006年 | 0.699 |
2007年 | 0.735 |
2008年 | 0.961 |
2009年 | 9.346 |
2010年 | 9.81 |
2011年 | 12.549 |
2012年 | 16.126 |
2013年 | 17.65 |
2014年 | 26.09 |
2015年 | 35.13 |
2016年 | 43.877 |
2017年 | 38.32 |
2018年 | 43.626 |
2019年 | 43.993 |
2020年 | 43.222 |
2021年 | 40.839 |
2022年 | 48.826 |
キリバスの携帯電話の契約数推移を振り返ると、1998年から2008年までの初期段階では、年ごとの増加は非常に緩やかなものであり、100人当たりの契約数は1件未満に留まっていました。この期間は、同国の基本的な通信インフラの整備が限定的であったことが背景にあります。さらに、キリバスのような太平洋の小島嶼国家は、地理的孤立や人口規模の小ささからくる経済的制約が、通信分野を含むインフラ発展の足かせとなります。
2009年以降になると、100人当たりの契約数が一桁から二桁へと急増し、これまでの低成長から一転して大幅な増加が見られるようになりました。この変化は、国際的な支援や民間投資の積極的な導入、国民全体の通信需要の拡大が要因と考えられます。さらに、隣国であるフィジーやソロモン諸島などとの交流も進み、革新的な通信技術の導入が波及した可能性があります。
2015年には35件、2016年には43.9件と、ここでも比較的急速な契約の伸びが見られます。しかしながら、2017年以降は数値が一時停滞し、2017年から2020年にかけてはむしろ減少傾向も現れました。2020年から2021年にかけて特に顕著で、これは新型コロナウイルス感染症による社会的・経済的な混乱が影響したと考えられます。輸入依存度が高い国であるため、コロナの影響で設備導入や保守が滞り、通信サービスの普及が減速した可能性があります。
2022年には契約数が48.8件にまで上昇し、再び回復基調にあることが見られます。この背景には、国際的な支援プロジェクトや、デジタルインフラの重要性を訴える各種政策の影響があると推察されます。同時に、地区ごとに異なる携帯通信網の格差が解消されつつある兆しも重要な要素となっています。しかし、これでもなお、世界全体の携帯電話契約数の平均に比べると低水準であり、日本(2022年時点で100人当たり170件超)やアメリカ(100件以上)はもちろん、近隣の発展途上国と比較しても遅れが目立ちます。
キリバスにおける携帯電話契約の進展において、今後の課題も多く見受けられます。地理的な孤立性による通信インフラの整備コストの増大、人材や技術の不足といった問題が存在します。また、自然災害による通信網の被害も取り組むべき課題として挙げられます。気候変動による海面上昇が深刻な懸念となっているキリバスでは、災害時でも使用可能な通信システムの構築は喫緊の課題です。
これらに対して、有効な手段として高コストでない通信技術の導入が挙げられます。たとえば、衛星通信技術を活用した携帯ネットワークの構築、持続可能なエネルギーを用いた通信インフラの維持が効果的です。また、国際的な援助や近隣諸国との協調をさらに強化することにより、技術的・人的資源の獲得を図るべきです。
結論として、キリバスの携帯電話契約の推移を追うことで、小島嶼国家特有の発展課題と、その中での技術進展のポテンシャルが見えてきます。今後は、既存の課題を克服しつつ、地球規模での協調に基づいた通信システムの発展が鍵となるでしょう。同時に、災害リスクや気候変動への柔軟な対応を含め、持続可能な通信発展モデルを模索していくことが重要です。