ITU(国際電気通信連合)の統計データによると、ガーナにおける人口100人当たりの携帯電話の契約数は、1992年の0.002から2013年には101.8と爆発的な成長を遂げました。その後も緩やかに上昇を続けて2016年には129.6を記録しましたが、2017年以降は増減を繰り返し、2022年には119.6と直近数年間で減少傾向が見られます。この長期的な推移から、通信インフラの拡大と、その成長を一因とする利用の成熟が読み取れます。
ガーナの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1992年 | 0.002 |
1993年 | 0.01 |
1994年 | 0.019 |
1995年 | 0.035 |
1996年 | 0.071 |
1997年 | 0.119 |
1998年 | 0.223 |
1999年 | 0.365 |
2000年 | 0.661 |
2001年 | 1.207 |
2002年 | 1.863 |
2003年 | 3.729 |
2004年 | 7.737 |
2005年 | 12.777 |
2006年 | 22.543 |
2007年 | 32.073 |
2008年 | 47.563 |
2009年 | 60.554 |
2010年 | 68.18 |
2011年 | 80.767 |
2012年 | 95.382 |
2013年 | 101.82 |
2014年 | 107.676 |
2015年 | 121.258 |
2016年 | 129.609 |
2017年 | 121.605 |
2018年 | 132.601 |
2019年 | 129.613 |
2020年 | 125.734 |
2021年 | 123.212 |
2022年 | 119.624 |
ガーナにおける携帯電話の契約数の推移データは、国の通信インフラの進化を象徴しています。1990年代から2000年代初頭にかけて、人口100人当たりの契約数が急速に増加し、とりわけ2000年から2010年の間には1.2から68.2へと急拡大しました。この成長は、ガーナ政府や民間通信事業者によるインフラ投資、通信規制の緩和、競争促進政策などが背景にあります。また、携帯電話自体のコスト低下や所得水準の改善が普及を押し上げた要因と考えられます。この時期は、多くのアフリカ諸国が「モバイル革命」とも呼ばれる通信インフラの急成長を経験した時期に重なっています。
ガーナでの契約数は2013年に初めて100を超え、つまり一人平均1台以上の携帯電話を持つ状況に達しました。この指標は、ガーナにおける携帯電話の利用が普及期を迎え、非通信機能(モバイルマネーなど)への活用が増えたことを反映している可能性があります。2016年にはピークの129.6に到達していますが、以降は下降局面を迎え、2022年は119.6に落ち込んでいます。この減少は、ユーザーが複数のSIMカードを保持していた状況が変化したことや、競争の激化で事業者間のシェア争いが激化したことが一因とみられます。また、新型コロナの影響で経済的状況が悪化し、機器購入や通信料金の支払いが難しい層が一部存在している可能性も考えられます。
他国との比較では、ガーナの通信契約数はアフリカ全体の平均値を上回る水準にありますが、日本や韓国などの成熟市場と比較すると依然として大きなギャップがあります。例えば、日本では2020年時点で契約数は100人当たり約170件を超えています。これは、日常生活のさまざまな場面でスマートフォンが完全に浸透しているためであり、ガーナは依然としてその普及率や機能利用において課題を抱えているといえます。
課題としては、一つ目に地域間の格差が挙げられます。都市部では契約数が多い一方で、農村部やインフラが限られた地域では依然としてアクセスが制限されている状況があります。二つ目には、通信費の負担が一部の低所得層にとって高すぎることが問題です。加えて、契約数の推移が示唆するように、さまざまな環境要因が普及に影響しているものの、実際の利用頻度や機能の多様性が一様ではないことも、改善の余地がある点です。
今後、通信普及をより効果的に進めるためには、まず通信インフラへのさらなる投資が不可欠です。特に農村部での基地局の設置やコストの抑制を図ることで、地域格差を埋めることができるでしょう。また、モバイルマネーやデジタルソリューションのさらなる発展を通じて、携帯電話の付加価値を増大させることが求められます。さらに、国際的な支援や地域間協力の枠組みを利用することで、通信技術の輸入促進、経験共有、政策作成を行うことも効果的です。
地政学的にみると、ガーナは比較的安定した政治・経済を維持しているものの、西アフリカ地域全体の紛争や社会不安が通信拡大へのリスクとなる可能性があります。こうしたリスクに対応するためには、地域協力を基盤とする堅牢なインフラネットワークの構築が重要です。
総じて、このデータが示すように、ガーナの携帯電話普及率は過去数十年で著しい成長を遂げました。しかし、減少傾向を逆転させるためには、インフラの強化、地域間の格差是正、高性能なデジタルサービスの提供などが鍵となります。これにより、通信技術をさらに発展させることができれば、ガーナは経済成長と社会福祉の向上の双方を達成する可能性があります。