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シリア

Syrian Arab Republic

シリアのCO2排出量推移

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、シリア・アラブ共和国のCO2排出量は、1990年の64,171,969トンから2008年に94,048,425トンへと増加する一方で、2011年以降急激に減少し、2017年には42,388,361トンと大幅に落ち込みました。その後、2018年以降はやや増加の兆しを見せつつも、2020年には48,856,441トンと依然として低い水準に留まっています。この変動は、社会的および経済的な要因、特にシリア国内での紛争と各種インフラの損壊が与える影響を反映していると考えられます。

「シリア」のCO2排出量推移

年度 CO2排出量
2020年 48,856,441トン
2019年 51,196,089トン
2018年 50,985,539トン
2017年 42,388,361トン
2016年 45,055,208トン
2015年 45,256,523トン
2014年 47,237,760トン
2013年 54,230,932トン
2012年 65,407,933トン
2011年 82,568,979トン
2010年 88,557,174トン
2009年 89,998,502トン
2008年 94,048,425トン
2007年 94,450,857トン
2006年 81,404,585トン
2005年 77,908,923トン
2004年 77,307,936トン
2003年 81,823,190トン
2002年 66,554,510トン
2001年 79,672,614トン
2000年 88,265,126トン
1999年 88,351,052トン
1998年 86,323,636トン
1997年 82,258,124トン
1996年 80,220,141トン
1995年 78,884,250トン
1994年 77,901,227トン
1993年 76,611,377トン
1992年 72,540,898トン
1991年 73,250,512トン
1990年 64,171,969トン

シリア・アラブ共和国のCO2排出量推移を見ると、1990年から2008年まではおおむね増加傾向を示しており、これは経済の成長とそれに伴うエネルギー消費量の増加を背景としていると考えられます。この時期、近年急速に進展している中国やインド、あるいは東アジア諸国とは異なり、シリアの経済規模はそれほど大きくないものの、工業化や都市化の進展によってエネルギー需要も高まり、中東地域では比較的穏やかなCO2排出量の増加が観察されました。

しかし、2011年を境にCO2排出量は急速に減少しています。これはシリア内戦の勃発とそれに伴うインフラの崩壊、産業基盤の縮小、化石燃料の供給網の途絶と深く結びついています。特に発電所や輸送セクターなど、CO2排出の主要源が稼働する能力を失ったことが大きな要因であると考えられます。その結果、2013年から2017年にかけてCO2排出量は40 - 50%近く低下しています。このような急激な減少は、大規模な社会的混乱時に特有の特徴です。

2018年以降には若干の回復が見られますが、これは一部地域での相対的な安定に伴い、経済活動が部分的に再開されていることを示唆しています。ただし2020年にわずかに減少している点は、新型コロナウイルスによる社会的・経済的影響も一定の役割を果たしている可能性が高いです。パンデミックにより、世界的にCO2排出量が落ち込んだことがシリアにも反映されていると予想されます。

一方、このデータは中東地域のCO2排出量の全体的な動向とも比較する必要があります。例えば、隣国イラクやトルコでは同期間において排出量が増加しており、それに対しシリアの顕著な減少は紛争や社会的混乱の影響が特に大きいことを示しています。また、日本やドイツといった先進国では、政策的な取り組み(再生可能エネルギーの普及や省エネルギー技術の導入)によって、持続可能な形でのCO2排出量削減が進んでいる点にも違いが見られます。

このデータが示す課題として、以下の点が挙げられます。まず、紛争により経済の安定そのものが損なわれている点です。この問題解決の第一歩として、地域間の協力による復興支援や、国際社会によるインフラ再建のための資金援助が不可欠です。さらに、再建の際には、従来型の化石燃料への依存から脱却するための「グリーン復興」を進めることが求められます。例えば、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率化技術の採用を積極的に進めることが将来の安定的な成長につながるでしょう。

また、地政学的リスクと気候変動問題を関連させると、中東地域全体で水不足や食糧危機が今後更に深刻化する可能性が高いです。これにより、エネルギー政策や地域の平和維持に関する国際的な取り組みがより重要になっていくと考えられます。例えば、EUや国連が主導する中東地域の「気候と平和のための国際枠組み」を構築することで、長期的な安定と環境保護を両立できる可能性があります。

結論として、このデータはシリアのCO2排出量が経済と政治の動向と密接に関連していることを示しています。紛争による削減傾向が必ずしも持続可能な形で達成されていないことを考慮すると、復興と環境政策を両立させる戦略が急務です。また、国際社会は地域の安定化と併せて、持続可能なエネルギーシステムの構築を支援し、地球規模での気候変動目標達成に向けた協調を強化する必要があります。