ボスニア・ヘルツェゴビナのCO2排出量は、1992年から2020年にかけて大きな変動を見せています。1990年代初頭の排出量は21,654,650トンと高かったものの、1994年には6,830,529トンと急激に減少しました。その後、2000年代中盤から再び増加傾向にあり、2011年には31,666,505トンとピークに達しました。2010年代後半以降は安定し、2020年の排出量は30,263,214トンであり、それ以降ほぼ横ばいとなっています。
「ボスニア・ヘルツェゴビナ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 30,263,214トン |
2019年 | 30,671,503トン |
2018年 | 30,753,826トン |
2017年 | 30,831,352トン |
2016年 | 30,493,648トン |
2015年 | 27,117,569トン |
2014年 | 27,825,434トン |
2013年 | 29,569,762トン |
2012年 | 29,919,810トン |
2011年 | 31,666,505トン |
2010年 | 28,693,663トン |
2009年 | 27,829,031トン |
2008年 | 27,039,133トン |
2007年 | 24,040,965トン |
2006年 | 24,022,614トン |
2005年 | 22,287,074トン |
2004年 | 21,398,556トン |
2003年 | 19,743,605トン |
2002年 | 19,136,008トン |
2001年 | 18,268,585トン |
2000年 | 18,917,630トン |
1999年 | 15,243,099トン |
1998年 | 15,082,152トン |
1997年 | 12,378,826トン |
1996年 | 7,239,371トン |
1995年 | 6,689,123トン |
1994年 | 6,830,529トン |
1993年 | 18,391,529トン |
1992年 | 21,654,650トン |
国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年11月更新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのCO2排出量は近30年間で顕著な変化を見せています。このデータは国内で排出された二酸化炭素の総量を指し、エネルギー消費、産業活動、交通、発電所などから排出される温室効果ガスの排出動向を示しています。
1992年のCO2排出量は21,654,650トンに達していましたが、これは独立後の経済活動やライフラインの混乱がまだ発生しておらず、旧ユーゴスラビア時代のインフラが稼働していたことを反映しています。しかし1992年から続いたボスニア紛争が経済基盤と産業を著しく破壊したことで、1994年には排出量が6,830,529トンへと急減しました。このような大幅な減少は、工業施設や電力発電所の被害、さらにはエネルギー消費が減少したことの影響が指摘されます。紛争終了後、1998年以降は再建によるインフラの復旧と経済成長の影響で排出量が増加しました。特に2006年から2011年の間には大幅な伸びが見られ、これは発電所の稼働増加や産業復興が進んだためと考えられます。
一方、2011年を頂点にした後は排出量の増加が緩やかになり、近年は30,000,000トン前後で推移しています。この停滞は国内経済がある一定の発展段階を迎えたことや、持続可能性や再生可能エネルギーへの関心が徐々に高まっていることとも関係があります。特に近隣のヨーロッパ諸国やEU加盟国が、パリ協定の目標達成に向けて着実に排出削減を進めているのに対し、ボスニア・ヘルツェゴビナは改善途上にあります。
ただし、ボスニア・ヘルツェゴビナのCO2排出量は日本、ドイツ、アメリカのような先進国が排出する量に比べると比較的小規模です。しかし、一人当たりの排出量などを考えると国内の人口規模に対して依然として高い水準にあり、これが将来的な環境負荷の課題として浮上しています。また、エネルギー構成としては石炭火力発電が主要な供給源である点が、排出量削減の妨げとなっている可能性があります。
地政学的背景も重要な要素です。ボスニア・ヘルツェゴビナはバルカン半島に位置し、エネルギー資源の輸入に頼る一方、自国内の資源利用も環境基準が厳格でないため、排出削減の取り組みは他のEU諸国と足並みをそろえにくい環境にあります。また、紛争後のインフラ再建が進む中、エネルギー効率が低い旧型設備が稼働し続けている点も、さらなるCO2排出をもたらしている要因の一つです。
こうした課題に対応するためには、国内のエネルギー政策の改革が重要です。具体的には、再生可能エネルギーである水力、風力、太陽光エネルギーの導入を進めることが優先されるべきです。また、EUとの協力を強化し、欧州全体のグリーンディール(環境・気候対応戦略)の一環として資金援助や技術移転を受ける枠組みを築くことが考えられます。さらに、エネルギー効率を高めるための一般家庭や産業向けの省エネ技術を普及させる取り組みも重要です。
結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナのCO2排出量は過去の紛争と復興に大きく影響されながらも、比較的安定した水準に達しています。しかし、より持続可能な未来を目指すためには、国際市場や地域情勢を考慮した政策の策定、そしてシステムの効率化による排出削減が欠かせません。同時に、これを推進するための国際的な連携と支援が必要です。このような取り組みを行うことで、グローバルな気候変動への責任を果たしつつ、長期的なエネルギー安全保障を確保する道筋が開けるでしょう。