Skip to main content

聖座

Holy See

聖座のCO2排出量推移

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、聖座(バチカン市国)のCO2排出量は1990年以降全体として減少傾向にあり、2020年には4,428トンとなっています。1990年代には年平均約6,600トンを記録していたものの、2014年以降著しい削減が見られ、直近では1990年比でおよそ31%の削減を達成しています。この結果は、聖座が行ってきた環境保護への取り組みが一定の効果を上げたことを示しています。

「聖座」のCO2排出量推移

年度 CO2排出量
2020年 4,428トン
2019年 4,634トン
2018年 5,191トン
2017年 5,195トン
2016年 5,285トン
2015年 5,375トン
2014年 5,225トン
2013年 5,517トン
2012年 5,989トン
2011年 6,241トン
2010年 6,414トン
2009年 6,315トン
2008年 7,037トン
2007年 7,287トン
2006年 7,429トン
2005年 7,588トン
2004年 7,596トン
2003年 7,542トン
2002年 7,260トン
2001年 7,163トン
2000年 7,146トン
1999年 7,077トン
1998年 6,949トン
1997年 6,756トン
1996年 6,662トン
1995年 6,690トン
1994年 6,289トン
1993年 6,362トン
1992年 6,465トン
1991年 6,491トン
1990年 6,446トン

聖座(バチカン市国)は全域で0.44平方キロメートルという世界最小の国家である一方、その宗教的、文化的影響力は世界中に及んでいます。その特殊な立場から、世界に対する環境保護のメッセージを発信する役割も担っています。FAOのデータによると、1990年のCO2排出量は6,446トンでしたが、この数値はその後、2004年には過去最高の7,596トンまで増加しました。しかし、それ以降は経年的に減少傾向に転じ、2020年には4,428トンと、1990年比で大幅な削減に成功しています。

この推移を分析すると、1990年代から2000年代の増加は、インフラ整備や観光客増加に伴うエネルギー使用量の増加によるものであると考えられます。しかし、2005年以降の減少傾向を背景には、聖座で行われた具体的な省エネ対策が挙げられます。たとえば、バチカン市国では太陽光発電設備の設置や建物のエネルギー効率を向上させる取り組みが進められ、結果的に一人当たりのCO2排出量が効果的に削減されました。また、2015年には教皇フランシスコがエンチクリカ(回勅)「ラウダート・シ(Laudato Si')」を発表し、地球環境問題への取り組みを促進しました。このメッセージに合わせる形で構造改革が進められたことも、数値の減少に大きな影響を与えた要因といえます。

それに対し、CO2削減の最大の課題は、エネルギー資源のさらなる脱炭素化と輸送手段の効率化です。聖座では車両交通や輸入品に頼らざるを得ない部分があり、その影響で一部の活動が間接的にCO2排出の原因となっています。これに対しては、公共交通のさらなる電化、自転車の利用促進、近隣地域との連携強化などの政策が有効と考えられます。また、観光業により訪れる多くの人々の影響も無視できないため、観光客数を制御する仕組みや、持続可能な観光モデルの導入も検討すべき課題となっています。

2020年には4,428トンと、過去30年間で最も低い排出量を記録しましたが、この年の減少には新型コロナウイルスの感染拡大が影響を及ぼしています。観光客や訪問者の減少が一過性にエネルギー需要を減らした結果であり、パンデミック終息後には再び増加のリスクがあることが予想されます。このため、聖座は長期的視野に立った持続可能な政策を継続する必要があります。

将来的には、バチカン市国がその小規模性ゆえ、国際的な模範として更なる脱炭素化に向けた取組みを世界に示していくことが期待されます。例えば、完全なエネルギー独立を目指した再生可能エネルギーの全面導入や、他国の宗教的団体と連携した地球環境保護キャンペーンの推進が挙げられます。これにより、聖座が他国に対し強い影響力を持つ存在として、グローバルな環境問題に対するリーダーシップを発揮することが可能になるでしょう。

結論として、聖座のCO2排出量の推移は、これまでの努力が確かな成果をもたらしていることを示していますが、気候変動というグローバルな課題への対応にはさらなる努力が必要です。世界中の小国や都市圏が環境対策における手本として聖座の実績を学び、共有できれば、地球的規模での環境改善に大きく貢献することができるでしょう。