国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した最新のデータによると、フィンランドのCO2排出量は長年にわたり変動してきましたが、おおむね減少傾向を示しています。特に2020年のデータでは、1990年時点の84,097,374トンと比較して約23%の削減が見られます。この減少はフィンランド政府の再生可能エネルギーへの移行政策や省エネルギー技術の普及が影響していると考えられます。
「フィンランド」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 64,633,479トン |
2019年 | 72,516,555トン |
2018年 | 76,910,716トン |
2017年 | 75,340,437トン |
2016年 | 78,397,948トン |
2015年 | 79,435,361トン |
2014年 | 84,280,422トン |
2013年 | 84,216,381トン |
2012年 | 84,939,910トン |
2011年 | 90,607,159トン |
2010年 | 96,364,808トン |
2009年 | 85,400,496トン |
2008年 | 89,554,907トン |
2007年 | 95,773,313トン |
2006年 | 101,773,443トン |
2005年 | 87,965,648トン |
2004年 | 102,503,483トン |
2003年 | 100,482,285トン |
2002年 | 92,178,409トン |
2001年 | 87,875,755トン |
2000年 | 82,859,146トン |
1999年 | 86,140,077トン |
1998年 | 85,974,213トン |
1997年 | 90,093,554トン |
1996年 | 91,428,458トン |
1995年 | 84,422,025トン |
1994年 | 89,084,603トン |
1993年 | 81,698,554トン |
1992年 | 78,479,742トン |
1991年 | 85,746,831トン |
1990年 | 84,097,374トン |
フィンランドのCO2排出量は1990年から2020年の約30年間にわたって大きな変化を遂げてきました。当初、排出量は1990年の84,097,374トンから1994年には89,084,603トンまで増加し、その後も波動的な増減を見せながら、2003年と2004年にはそれぞれ100,482,285トンと102,503,483トンに達しました。この時期のピークは、おそらくエネルギー需要の増加や当時の石炭火力発電所の稼働が影響していると考えられます。しかし、それ以降は再生可能エネルギーや原子力エネルギーへの転換が進むにつれて、排出量は徐々に減少していきました。
注目すべきは、2016年以降に特に顕著な減少が見られることです。2016年の78,397,948トンから、2020年には64,633,479トンへと約17%削減されました。この急激な転換は、フィンランドが政策的に掲げるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出を実質ゼロにすること)目標と、再生可能エネルギーの普及促進策が影響していると推測されます。また、2020年は新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞が、大幅な排出量削減を後押しした可能性があります。
加えて、フィンランドではバイオ燃料の利用が進んでおり、木質バイオマスエネルギーの利用が排出量削減の主要な要因となっています。他の先進国と比較すると、ドイツやアメリカが依然として化石燃料に依存する割合が高い一方、フィンランドは地理的条件を生かして森林資源を活用した持続可能なエネルギー政策を採用してきました。この点では日本や韓国も注視すべき課題があります。日本は原子力再稼働を含むエネルギー政策見直しを進めているものの、バイオ燃料や再生可能エネルギーの導入においてフィンランドのような成果を上げるには至っていません。
しかし、これらの成果にもかかわらず、フィンランドの取り組みには依然として課題が残ります。一つは交通セクターの排出量が他分野に比べて減少のペースが遅い点です。特に寒冷地であるフィンランドでは、暖房需要や車両燃料の高エネルギー消費が続いています。電動車両やハイブリッド車の普及を加速させるとともに、公共交通インフラをさらに強化する必要があります。また、隣国ロシアからのエネルギー供給依存のリスクが地政学的に問題視されており、エネルギー安全保障を強化する方策が求められています。
フィンランドが今後も持続可能な社会を築いていくためには、まずエネルギー多様性をさらに拡充する必要があります。これには、陸上風力や海上風力発電のさらなる活用、蓄電技術の強化、そして炭素回収・貯留技術(CCS)の普及が含まれます。また、エネルギー効率の向上に向けて建築物の断熱性能改善や、省エネ技術の普及を進めることが重要です。さらに国際的な協力も不可欠であり、北欧諸国やEU全体で連携した政策の策定と実施が鍵となります。
これらの取り組みによって、フィンランドは高い再生可能エネルギー利用率を基盤とした脱炭素社会の実現に近づくことができるでしょう。同時に、これらの政策は、他国、特に日本や韓国などフィンランドに学べる点の多い国々にとっても示唆に富んだ指針となります。