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【世界一の医師密度】キューバ医療の最前線:国際支援の光と影、そして現実の課題

キューバといえば、カリブ海に浮かぶレトロな島国、革命の歴史、そして医療大国としての意外な顔が知られています。特に「人口10,000人あたり94.28人」という世界一の医師密度を誇り、国際的な医療支援でも名を馳せるキューバ。しかし、その輝かしい表舞台の裏には、課題も潜んでいます。今回は、直近のキューバ医療チームの活躍、世界からの評価、そして直面する現実を、雑学豆知識を交えて深掘りしてみましょう。

キューバ医療チームの国際支援:世界に広がる白衣の連帯

キューバの医療チームは、60年以上にわたり165カ国以上で支援を展開してきました。2025年現在も、この「医療外交」は健在です。たとえば、2020年代初頭~2023年頃、約3万人の医療従事者が海外で活動し、特にラテンアメリカやアフリカでの感染症対策や災害支援に貢献しています。新型コロナウイルス禍では、独自開発のワクチン「アブダラ」や「ソベラナ」を携え、イタリアやハイチなど20カ国以上に医師団を派遣。近年、ハイチでのコレラ流行抑制に数百人規模が投入、現地で高い評価を受けました。

興味深いのは、キューバが経済制裁下にあるにもかかわらず、これほどの規模で支援を続ける点。フィデル・カストロの言葉「我々は爆弾ではなく医師を送る」を体現し、「キューバの医療協力は希望の光」とSNSで称賛されています。外貨獲得の柱でもあり、年間数十億ドルの収入を国にもたらすこの活動は、単なる善意を超えた戦略的意義を持っています。

直近の国際支援:カリブ海での奮闘

キューバの医療体制は、その高い医師密度と無償の医療サービスで世界的に知られています。​しかし、近年の経済的困難や人材流出により、国内の医療サービスに課題が生じています。​例えば、腎不全患者が必要な治療を受けられず、国外での治療を余儀なくされるケースも報告されています。

さらに、アメリカ政府はキューバの医療ミッションを「強制労働」と見なし、関与者へのビザ制限を検討しています。​これに対し、カリブ共同体(Caricom)の外相らは、キューバの医療専門家が地域の医療に不可欠であると強調し、アメリカの新政策に反発しています。

これらの状況は、キューバの医療体制が直面する現実と、その国際的影響力を示しています。

世界から見られるキューバの医師・医療:賞賛と批判の二面性

キューバの医師と医療システムは、グローバルにユニークな評価を受けています。WHOは、キューバのプライマリケア(一次医療)を「途上国のモデル」と称し、乳児死亡率(人口1,000人あたり4.3)や平均寿命(約78歳)が先進国並みな点を高く評価。2024年の国際保健会議でも、「低コストで高効率な医療」の事例として紹介されました。医師一人ひとりが地域住民の健康を把握する「ファミリードクター制」は、他国が学ぶべき成功例とされています。

一方で、批判も存在します。スペインのNGO「Prisoners Defenders」は、海外派遣医師が「政府の奴隷」と呼ばれ、低賃金かつ過酷な条件で働かされていると訴えています。2023年の報告では、派遣医師の給与の8割以上が政府に徴収され、本人には月数十ドルしか渡らないケースが指摘されました。また、亡命を試みる医師が年間数百人に上り、2020年代初頭までに1万人以上が他国に逃れたとの推計も。「キューバ医療は素晴らしいが、医師の犠牲の上に成り立っている」との声も見られ、世界からの見方は賞賛と疑問が交錯しています。

キューバ医療の現実と直面する課題:輝きの裏の苦悩

キューバ医療の現実と直面する課題
キューバ医療の現実と直面する課題

国内に目を向けると、キューバ医療の現実は理想と乖離しています。医師数は豊富でも、経済制裁による医療機器や医薬品の不足は深刻。近年、ハバナの病院でMRIが故障したまま修理できず、患者が隣国へ移送される事例が急増しました。医薬品もジェネリック中心で、先進的な抗がん剤などは入手困難。医師が「ハーブと創意工夫で治療するしかない」と語るほど、現場は逼迫しています。

さらに、医師の低賃金問題も顕著です。2025年時点で平均月収は約50~100ドル程度とされ、生活を支えるには不十分。海外派遣で稼ぐ医師が多い一方、国内に残る医師の士気低下が懸念されています。「医師が多すぎて仕事がない」「優秀な人材が国外流出」とのSNS投稿が散見され、過剰な医師供給が逆効果を生む一面も。

興味深い雑学として、キューバでは伝統医療と近代医療の融合が進んでいます。チェ・ゲバラ(Ernesto Guevara、1928年6月14日 - 1967年10月9日)の影響もあり、1980年代から軍主導で薬草研究が始まり、現在も「自然療法」が広く活用されています。2020年代初頭に、コロナ対策でホメオパシー薬「PrevengHo-Vir」が再注目され、賛否両論を呼んだのも記憶に新しいですね。

グローバル視点での教訓と未来

キューバ医療の強みは、予防重視と医師の身近さにあります。2025年のデータでも、ワクチン接種率は90%を超え、災害時の迅速な対応力は他国の追随を許しません。しかし、課題解決には国際協力が不可欠。経済制裁の緩和や医療機器の輸入ルート拡大が進めば、キューバの潜在能力はさらに開花するでしょう。

世界がキューバから学ぶべきは、「少ない資源で最大限の効果を出す」発想です。日本でも過疎地の医師不足が課題ですが、キューバ式の地域密着型医療は参考になるかもしれません。一方で、医師の待遇改善やシステムの持続可能性は、キューバ自身が向き合うべき宿題です。

キューバの医師数は確かに世界一で、国際支援での活躍は感動的です。しかし、その裏には経済的制約や医師の犠牲が隠れています。現在も進化を続けるキューバ医療は、雑学以上の深い洞察を与えてくれます。次にキューバの話を聞くとき、白衣の医師たちの笑顔と、その背後の苦労をぜひ思い出してください。そして。。。