ブラジルの伝統的なコーヒー文化

カフェジーニョ(Cafezinho)とは?
ブラジルでは、「カフェジーニョ」と呼ばれる小さなカップに入った濃いコーヒーが親しまれています。FAO(国際連合食糧農業機関)によると、ブラジル国内のコーヒー消費量は年間約2,300万袋(1袋=60kg)に達し、その多くがカフェジーニョとして消費されています。カフェジーニョは、家庭や職場、商談の場などで頻繁に提供され、社交の一環として重要な役割を果たしています。特に、訪問者へのおもてなしとして欠かせない存在です。
砂糖たっぷりの甘いコーヒー
ブラジルのコーヒーは、砂糖をたっぷり加えて飲むのが一般的です。多くの場合、コーヒーを淹れる際に砂糖を一緒に加えて抽出します。そのため、ブラックコーヒーを好む人は少数派で、甘いコーヒーが主流となっています。このスタイルは、19世紀から20世紀初頭にかけてのコーヒー消費文化の名残であり、甘みを加えることで、当時のコーヒーの苦味を和らげる意図があったと言われています。
ネルドリップの使用
家庭では、布製のフィルター「ネル」を使ってコーヒーを淹れる「ネルドリップ」が伝統的に行われています。布製フィルターは繰り返し使用できるため、経済的で環境にも優しい方法として広く採用されています。また、ネルドリップを使うことで、コーヒーのオイル成分が適度に残り、より豊かな風味を楽しむことができます。
進化するブラジルのコーヒー文化!最新トレンド

スペシャルティコーヒーの台頭
近年、ブラジル国内でも高品質なスペシャルティコーヒーへの関心が高まっています。専門のカフェやバリスタが増え、コーヒーの産地や焙煎方法にこだわる消費者が増加しています。FAOの統計によると、2024年のスペシャルティコーヒー市場は前年比15%成長し、消費者の嗜好が多様化していることが示されています。これにより、伝統的な甘いコーヒーだけでなく、ブラックでコーヒー本来の味を楽しむスタイルも浸透しつつあります。
カプセル式コーヒーマシンの普及
都市部を中心に、カプセル式のコーヒーマシンが家庭やオフィスで普及しています。これにより、手軽に様々なフレーバーのコーヒーを楽しむことができるようになり、コーヒーのバリエーションが広がっています。また、カフェ文化が発展する中で、バリスタによる抽出技術やラテアートを楽しむ人々も増えており、コーヒーはより洗練された飲み物へと進化しています。
日本とブラジルのコーヒーのつながり

日本とブラジルのコーヒーには深いつながりがあります。1908年、日本から最初の移民船「笠戸丸」が神戸港を出航し、その後、日本人移民の労働力への感謝としてブラジル政府からコーヒー豆が無償提供されました。
一方、大正時代にはブラジルからのコーヒー輸入量が急増し、日本市場への浸透が進みました。1913年にはコーヒー輸入量が100トンを超え、1926年には1,057トンに達しました。この流れの中で、水野龍(みずのりょう)が設立した「カフェ・パウリスタ」が重要な役割を果たしました。水野龍は、ブラジルコーヒーを広めるために積極的に宣伝を行い、全国に約20店舗を展開。手軽で安価なコーヒーと料理を提供し、日本のカフェ文化の発展に大きく貢献しました。こうした背景が、日本におけるブラジルコーヒーの定着を促し、今日のカフェ文化の礎を築くことにつながりました。
また、現在でも日本のカフェや家庭でブラジル産のコーヒー豆は広く愛されており、特に酸味が少なく、まろやかな味わいのアラビカ種は人気があります。
おうちで簡単!本場ブラジル風コーヒーの楽しみ方

ブラジルのコーヒー文化を自宅で気軽に楽しめる方法をご紹介します。本場ブラジルの伝統的な甘いコーヒーの味わいを再現し、特別なひとときを過ごしてみませんか?
- コーヒー豆の選択:ブラジル産の中深煎りの豆を選びます。
- 挽き方:中細挽きにします。
- 抽出方法:ネルドリップやペーパードリップを使用します。
- 砂糖の追加:抽出前にお湯に砂糖を加え、溶かしてからコーヒーを抽出します。
- 仕上げ:小さなカップに注ぎ、熱いうちにお召し上がりください。
お好みに合わせて、ミルクを加えてカフェ・コン・レイチ風にしたり、シナモンやカカオパウダーをふりかけたりして、あなただけの特別な一杯を楽しんでみてください。
ブラジルのコーヒー文化は、甘くて濃厚なカフェジーニョから、こだわりのスペシャルティコーヒーまで、実に多彩です。ブラジルの人々にとって、コーヒーは毎日の暮らしに欠かせない存在であり、家族や友人とのおしゃべり、ちょっとした休憩のひとときを彩る大切なアイテムです。最新のFAOデータによると、ブラジルは世界全体のコーヒー生産量の約30.8%を占めるコーヒー大国であり、その豊かな文化は世界中のコーヒー愛好家にも影響を与えています。
旅行の機会があれば、本場ブラジルで本格的なカフェジーニョを味わってみてはいかがでしょうか?現地ならではの雰囲気とともに、さらに深くコーヒー文化を楽しめるはずです。