Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年に更新した最新データによると、カナダのそば生産量は1960年代から現在に至るまで大きな変動を見せています。ピークとなる1978年には72,700トンを記録した一方、2004年にはわずか1,500トンまで減少しました。2010年代後半以降、生産量は回復傾向にあり、2019年には18,000トンと再び安定化しています。しかし、2020年代では増減があり、直近の2022年で10,829トンとなり、依然として長期的な課題が残ります。
カナダのそば生産量推移(1961年~2023年)
| 年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
|---|---|---|
| 2023年 | 11,715 |
8.18% ↑
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| 2022年 | 10,829 |
18.34% ↑
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| 2021年 | 9,151 |
2.82% ↑
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| 2020年 | 8,900 |
-50.56% ↓
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| 2019年 | 18,000 |
20% ↑
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| 2018年 | 15,000 |
177.78% ↑
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| 2017年 | 5,400 |
174.44% ↑
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| 2016年 | 1,968 |
390.68% ↑
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| 2014年 | 401 | - |
| 2013年 | 401 |
301% ↑
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| 2012年 | 100 |
-97.83% ↓
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| 2007年 | 4,600 |
-37.84% ↓
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| 2006年 | 7,400 |
60.87% ↑
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| 2005年 | 4,600 |
206.67% ↑
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| 2004年 | 1,500 |
-84.85% ↓
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| 2003年 | 9,900 |
-18.85% ↓
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| 2002年 | 12,200 |
-25.15% ↓
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| 2001年 | 16,300 |
19.85% ↑
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| 2000年 | 13,600 |
8.8% ↑
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| 1999年 | 12,500 |
-15.54% ↓
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| 1998年 | 14,800 |
-10.3% ↓
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| 1997年 | 16,500 |
-25.68% ↓
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| 1996年 | 22,200 |
4.72% ↑
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| 1995年 | 21,200 |
70.97% ↑
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| 1994年 | 12,400 |
65.33% ↑
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| 1993年 | 7,500 |
-30.23% ↓
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| 1992年 | 10,750 |
-53.86% ↓
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| 1991年 | 23,300 |
-24.1% ↓
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| 1990年 | 30,700 |
63.3% ↑
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| 1989年 | 18,800 |
-17.18% ↓
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| 1988年 | 22,700 |
-48.53% ↓
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| 1987年 | 44,100 |
14.25% ↑
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| 1986年 | 38,600 |
77.88% ↑
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| 1985年 | 21,700 |
-6.06% ↓
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| 1984年 | 23,100 |
-35.65% ↓
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| 1983年 | 35,900 |
23.79% ↑
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| 1982年 | 29,000 |
-45.08% ↓
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| 1981年 | 52,800 |
106.25% ↑
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| 1980年 | 25,600 |
-29.09% ↓
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| 1979年 | 36,100 |
-50.34% ↓
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| 1978年 | 72,700 |
65.98% ↑
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| 1977年 | 43,800 |
121.21% ↑
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| 1976年 | 19,800 |
-10% ↓
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| 1975年 | 22,000 |
-16.9% ↓
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| 1974年 | 26,475 |
-11.82% ↓
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| 1973年 | 30,024 |
-19.4% ↓
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| 1972年 | 37,252 |
-32.24% ↓
|
| 1971年 | 54,974 |
-11.25% ↓
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| 1970年 | 61,941 |
65.89% ↑
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| 1969年 | 37,339 |
22.15% ↑
|
| 1968年 | 30,568 |
7.59% ↑
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| 1967年 | 28,412 |
12.11% ↑
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| 1966年 | 25,343 |
31.08% ↑
|
| 1965年 | 19,334 |
-30.3% ↓
|
| 1964年 | 27,738 |
6.43% ↑
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| 1963年 | 26,061 |
3.99% ↑
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| 1962年 | 25,060 |
-5.42% ↓
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| 1961年 | 26,496 | - |
カナダのそば生産量は、他の主要農産物と比べニッチな市場でありながら、同国農業における一定の役割を担ってきました。データの長期的な傾向を分析すると、生産量には著しい変動があり、特に1970年代後半から1980年代初頭にかけては大幅な増加、その後の2000年代初頭には急激な減少が見られます。これは、気象条件、市場動向、政府の農業政策、および国際的な需要の影響を大きく受けていることを示しています。
まず注目すべき点は、1978年の最大生産量72,700トンと、2004年の最小生産量1,500トンという極端な違いです。この急激な減少には、気候変動による干ばつや洪水といった異常気象、農地の他作物への転用、また一時的な国際市場での需要の減少が影響していると考えられます。同時に、そば栽培の主要地域が地政学的リスクにさらされやすい環境にあることも、変動に拍車をかけています。
2010年代以降、カナダのそば生産量は低水準から徐々に回復し、2019年には18,000トンを記録しました。この回復は、グルテンフリー食品の需要増加や、健康志向の高まりが背景にあり、そばの消費が再評価されていることが要因と見られます。特に欧米市場では、食文化の多様化に伴い、そばが新たな健康食品としての価値を持ち始めています。
直近の2020年代では、やや不安定な推移が続いています。2020年の8,900トンから2022年の10,829トンへの増加は見られるものの、未だ安定生産には至っていません。この背景には、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響で輸出・流通が停滞したことが挙げられます。また、農村地域の労働力不足および経済的な不安定要因も挙げられます。
カナダのそば生産を長期的に安定させるためには、いくつかの対策が必要です。例えば、省力化技術の導入や気候変動に強い品種改良が重要になります。これに加え、政府による補助金の提供や、そば栽培を支援する政策枠組みの整備が効果的です。また、地域間での協力体制や国際市場の開拓も視野に入れるべきでしょう。特に、日本、中国、韓国といったそば消費の盛んな国々での市場基盤の強化は、輸出拡大の大きな可能性を持っています。
さらに、地政学的背景を考えると、カナダの農業において、天候変動や人道的リスクが生産に与える影響を最小限に抑える努力が求められます。エネルギー供給や輸送インフラの強化も生産効率向上につながります。また、国際機関や他国と協力して、市場の安定化を図ることも視野に入れるべきです。
現在のデータが示す結論として、カナダのそば生産は、過去の高水準に戻る可能性を秘めています。しかし、そのためには依然として多くの課題を解決する必要があり、国内外での貿易拡大と持続可能な農業の実践が鍵となります。カナダ政府と国際機関が協力し、そば生産の安定化に向けた具体的な計画を立てることが今後の課題となるでしょう。