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カナダのリンゴ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)によると、カナダのリンゴ生産量は1961年から2022年にわたり推移を見せてきました。1960年代から1980年代初頭まではおおむね40万~50万トン台を維持しながらも変動し、1980年には55万トン超と最も高い水準に達しました。その後も増減を繰り返しながら1995年や1999年に際立つ高水準を記録しましたが、2000年代に入ると全体として減少傾向が見られます。また、2010年代中盤以降は40万トンを下回る年も増え、2022年には約38万トンと中長期的な減少の兆候があります。こうした推移はカナダの農業政策、市場需要、気候変動の影響など、複数の要因によって説明されることが考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 368,476
-3.18% ↓
2022年 380,571
8.25% ↑
2021年 351,565
-10.09% ↓
2020年 390,999
2.15% ↑
2019年 382,771
-5.01% ↓
2018年 402,978
0.22% ↑
2017年 402,082
-3.81% ↓
2016年 417,989
19.94% ↑
2015年 348,508
-14.96% ↓
2014年 409,839
-4.06% ↓
2013年 427,201
51.08% ↑
2012年 282,766
-32.69% ↓
2011年 420,102
13.23% ↑
2010年 371,025
-14.8% ↓
2009年 435,491
2.02% ↑
2008年 426,858
-4.37% ↓
2007年 446,367
10.82% ↑
2006年 402,773
-2.82% ↓
2005年 414,445
7.29% ↑
2004年 386,297
-4.01% ↓
2003年 402,416
14.23% ↑
2002年 352,285
-27.88% ↓
2001年 488,485
-7.88% ↓
2000年 530,256
-14.67% ↓
1999年 621,392
19.41% ↑
1998年 520,375
3.34% ↑
1997年 503,570
-1.84% ↓
1996年 512,984
-14.35% ↓
1995年 598,902
8.16% ↑
1994年 553,729
14.52% ↑
1993年 483,529
-14.28% ↓
1992年 564,071
9.42% ↑
1991年 515,531
-4.75% ↓
1990年 541,250
0.86% ↑
1989年 536,630
7.18% ↑
1988年 500,660
2.17% ↑
1987年 490,050
26.24% ↑
1986年 388,175
-18.89% ↓
1985年 478,605
10.21% ↑
1984年 434,247
-10.44% ↓
1983年 484,853
1.51% ↑
1982年 477,626
13.08% ↑
1981年 422,379
-23.56% ↓
1980年 552,589
27.06% ↑
1979年 434,898
-3.77% ↓
1978年 451,938
9.85% ↑
1977年 411,420
0.55% ↑
1976年 409,172
-11.13% ↓
1975年 460,438
13.32% ↑
1974年 406,334
8.45% ↑
1973年 374,691
-4.61% ↓
1972年 392,805
0.43% ↑
1971年 391,136
-3.55% ↓
1970年 405,520
-6.83% ↓
1969年 435,241
8.57% ↑
1968年 400,896
-8.19% ↓
1967年 436,644
3.53% ↑
1966年 421,753
-6.47% ↓
1965年 450,928
10.17% ↑
1964年 409,289
-12.95% ↓
1963年 470,193
16.21% ↑
1962年 404,610
19.98% ↑
1961年 337,226 -

1961年以降のカナダのリンゴ生産量の推移データによると、60年以上にわたる生産動向にはいくつかの大きな変化が見られます。1960年代当初の生産量は30万トン台から始まり、その後1970年代から1980年代にかけて増加傾向を示しつつ、8年ごとの収穫サイクルに伴う減少も観察されます。特に1980年代には50万トンを超える高水準を記録しましたが、1990年代にかけて一定の収穫波動を繰り返しながらも安定した水準を維持しました。こうした期間は、国内でのリンゴ市場の需要が堅調であり、栽培技術の向上や輸出の促進が生産量を支える要因の1つとなっていたと考えられます。

しかし、2000年代以降は、厳しい気象条件や農業従事者の高齢化、さらには輸入果物との競争による国内需要の停滞などが重なり、全体的に大きな減少傾向が見られます。特に2002年や2012年には35万トン以下と著しい落ち込みを記録しました。これらの年は農業地帯での異常気象が生産に深刻な影響を及ぼした可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済や物流の混乱が、2020年代初頭の生産量の回復を妨げたことが見て取れます。

国際比較を行うと、アメリカや中国のリンゴ生産と大きな差があることがわかります。例えば2022年、中国は全世界の生産量の6割近くを占めるほどのトップ生産国であり、アメリカも同年、約500万トンと大規模な出荷量を維持しています。一方、カナダの生産量はこれらと比較すると非常に限られており、主に国内での需要を満たすことと一部の輸出にとどまっています。また、気候条件がより温暖なフランスやイタリアなどのヨーロッパの主要生産国とも規模に差がある状況です。

現在直面しているカナダのリンゴ生産における課題としては、まず気象変動のリスクがあります。カナダは寒冷な気候が一部の地域で生産を制約しているだけでなく、頻発する異常気象が開花期や収穫期におけるダメージを高めています。また、農業従事者の高齢化と若年層の参入不足も大きな問題です。リンゴ栽培は労働集約型産業であり、人手不足が生産効率と競争力の低下をもたらしています。さらに、海外からの低価格の輸入リンゴが国内市場を圧迫していることも深刻です。

カナダのリンゴ産業が将来に向けて持続可能性を確保するためには、いくつかの具体的な対策を講じることが重要です。まず、気候変動に備えるために耐病性や耐寒性の高い品種の研究開発に資金を投入することが挙げられます。また、農業従事者の育成や労働環境の整備を進め、若い世代が農業に魅力を見出すためのインセンティブを提供することも必要です。さらに、輸出市場の多様化を進め、国際競争力を高めるために品質管理を徹底することが求められます。特に、有機栽培やエシカルフード(倫理的に生産された食品)市場の拡大を見据えた高付加価値化を推進することが重要です。

結論として、カナダのリンゴ生産は気候や市場の変化に敏感な側面を持ちつつも、高い潜在的能力を秘めています。政府と関連業界が緊密に連携し、環境、技術、そして社会的な課題に対処した持続可能な農業モデルを確立することで、将来にわたる安定した生産を実現し、国内外の市場での影響力を向上させることができます。