FAO(国際連合食糧農業機関)が提供した最新データによると、トンガのオレンジ生産量は1961年から2022年までの間に大きな変動を示しています。初期には増加傾向を見せましたが、1990年をピークに急激な減少が見られ、その後は緩やかな回復傾向にあります。しかし近年では、おおむね800〜900トンの範囲内での安定が見られます。この推移は、農業技術の変遷や地域的な要因、地政学的背景、そして自然災害の影響などが複合的に影響していると考えられます。
トンガのオレンジ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 903 |
1.23% ↑
|
2022年 | 892 |
0.35% ↑
|
2021年 | 889 |
0.35% ↑
|
2020年 | 886 |
-0.8% ↓
|
2019年 | 893 |
3.09% ↑
|
2018年 | 866 |
0.79% ↑
|
2017年 | 859 |
0.04% ↑
|
2016年 | 859 |
-1.07% ↓
|
2015年 | 868 |
-2.92% ↓
|
2014年 | 895 |
6.64% ↑
|
2013年 | 839 |
11.85% ↑
|
2012年 | 750 |
-14.29% ↓
|
2011年 | 875 |
-3.8% ↓
|
2010年 | 910 |
-3.55% ↓
|
2009年 | 943 |
-3.28% ↓
|
2008年 | 975 |
-15.21% ↓
|
2007年 | 1,150 |
4.55% ↑
|
2006年 | 1,100 |
19.13% ↑
|
2005年 | 923 |
1.22% ↑
|
2004年 | 912 |
1.78% ↑
|
2003年 | 896 |
-5.81% ↓
|
2002年 | 952 |
-4.83% ↓
|
2001年 | 1,000 |
44.93% ↑
|
2000年 | 690 |
200% ↑
|
1999年 | 230 |
-49.28% ↓
|
1998年 | 453 |
-16.85% ↓
|
1997年 | 545 |
-4.95% ↓
|
1996年 | 574 |
14.76% ↑
|
1995年 | 500 |
-23.68% ↓
|
1994年 | 655 |
-6.51% ↓
|
1993年 | 701 |
-5.92% ↓
|
1992年 | 745 |
-5.49% ↓
|
1991年 | 788 |
-21.19% ↓
|
1990年 | 1,000 |
-62.96% ↓
|
1989年 | 2,700 | - |
1988年 | 2,700 | - |
1987年 | 2,700 | - |
1986年 | 2,700 | - |
1985年 | 2,700 |
-1.82% ↓
|
1984年 | 2,750 |
1.85% ↑
|
1983年 | 2,700 |
10.2% ↑
|
1982年 | 2,450 |
-2% ↓
|
1981年 | 2,500 | - |
1980年 | 2,500 | - |
1979年 | 2,500 | - |
1978年 | 2,500 | - |
1977年 | 2,500 |
4.17% ↑
|
1976年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1975年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
1974年 | 2,200 |
4.76% ↑
|
1973年 | 2,100 |
5% ↑
|
1972年 | 2,000 | - |
1971年 | 2,000 | - |
1970年 | 2,000 | - |
1969年 | 2,000 | - |
1968年 | 2,000 | - |
1967年 | 2,000 | - |
1966年 | 2,000 | - |
1965年 | 2,000 | - |
1964年 | 2,000 |
96.85% ↑
|
1963年 | 1,016 |
1.6% ↑
|
1962年 | 1,000 | - |
1961年 | 1,000 | - |
1961年のトンガにおけるオレンジ生産量は1,000トンであり、1964年以降には2,000トン代に大幅な増産が見られました。この初期の増加は、南太平洋の温暖な気候により柑橘類栽培が適していること、農業政策の改善、そして国内市場の成長が背景にあったと考えられます。その後、1973年から1989年の間には年平均2,700トン付近に達し、持続的な生産がなされました。これはトンガ経済にとってオレンジが重要な農産物であり、安定した生産が可能だったことを示しています。
しかし1990年になると、これまでの高い生産水準から一転して1,000トンに急落しました。その原因として、自然災害の影響や農業労働力の減少、栽培面積の縮小が挙げられる可能性があります。南太平洋地域はサイクロンの多発地帯として知られており、オレンジ生産は直接的な被害を受けやすい作物です。さらにトンガは他の先進国と比較して農業技術の普及が遅れており、生産体制の脆弱性が顕著でした。1990年以降の急激な減少はそのようなリスクが実際に生産に影響を与えたことを示していると言えるでしょう。
その後1990年代には状況はさらに悪化し、1999年には230トンにまで落ち込みました。ただし、2000年以降には緩やかな回復傾向が見られ、特に2006年からは1,000トンを超える年もあるなど振れ幅のある増加を見せました。これは、農業技術の改善や国際支援機関からの援助が一部寄与した可能性があります。しかし、2022年時点では800〜900トンの比較的安定した生産水準に達しており、増加傾向が収まっています。
現状の課題としては、生産量が依然として1970年代のピーク時と比較して大幅に低い水準にあり、これは気候変動や土壌の劣化、労働人口の地域外流出などの長期的な問題が要因と考えられます。また、新型コロナウイルスのパンデミックは輸出入の物流を停滞させ、農家に直面する経済的なプレッシャーを増大させました。さらに、南太平洋地域における地政学的な状況では、島嶼国としての脆弱性が表面化しています。これは輸入資材や技術の依存が高いという特徴を持つトンガ経済の農業生産に影響を与えました。
今後の課題解決に向けて、以下の具体的な提言を行います。まず、オレンジ生産を持続可能なものとするために、災害耐性の高い品種の導入や栽培技術の近代化が必要です。また、新興農家を支援することで農業人口の減少を防ぎ、農業従事者の高齢化を食い止めることが重要です。加えて、国際協力を通じてサイクロン対策のインフラ整備や農業資材の確保を進めるとともに、融資や技術援助を実施するべきです。さらに、国内マーケティングや輸出ルートの効率化を図ることで、生産者の利益を確保する枠組みも検討されるべきでしょう。
総合的に見ると、トンガのオレンジ生産の未来は、気候変動や地政学的問題といった多くの要因に左右されますが、長期的な戦略と国際的な協力の強化が鍵となります。国際連合や地域協力機関がリーダーシップを発揮し、持続可能な生産の実現に取り組む必要があります。