国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、中国、香港特別行政区のエンドウ豆(生)生産量は1993年の800トンから1998年には300トンにまで大幅に減少した後、その後2000年代に入っても一定のばらつきを見せながら低水準で推移しています。特に、2000年代中盤以降は年間生産量が500トンを下回る水準で横ばいが続く状態が顕著となっており、2023年現在では421トンと過去最低レベルにとどまっています。
中国、香港特別行政区のエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 421 |
0.07% ↑
|
2022年 | 421 |
-0.93% ↓
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2021年 | 425 |
-0.92% ↓
|
2020年 | 429 |
0.67% ↑
|
2019年 | 426 |
1.05% ↑
|
2018年 | 422 |
-3.22% ↓
|
2017年 | 436 |
-4.91% ↓
|
2016年 | 458 |
5.89% ↑
|
2015年 | 433 |
-2.09% ↓
|
2014年 | 442 |
-11.6% ↓
|
2013年 | 500 | - |
2012年 | 500 |
11.11% ↑
|
2011年 | 450 |
4.65% ↑
|
2010年 | 430 |
-2.27% ↓
|
2009年 | 440 |
-6.35% ↓
|
2008年 | 470 |
-2.48% ↓
|
2007年 | 482 |
-2.04% ↓
|
2006年 | 492 |
-2.26% ↓
|
2005年 | 503 |
0.63% ↑
|
2004年 | 500 |
25% ↑
|
2003年 | 400 |
-20% ↓
|
2002年 | 500 |
-28.57% ↓
|
2001年 | 700 |
40% ↑
|
2000年 | 500 |
-16.67% ↓
|
1999年 | 600 |
100% ↑
|
1998年 | 300 |
-40% ↓
|
1997年 | 500 |
-16.67% ↓
|
1996年 | 600 |
-25% ↓
|
1995年 | 800 |
-27.27% ↓
|
1994年 | 1,100 |
37.5% ↑
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1993年 | 800 | - |
中国、香港特別行政区のエンドウ豆(生)生産量は、1990年代の800トン規模から減少傾向が見られ、特に1998年には300トンと大幅に落ち込みました。その後は回復の兆しがあったものの、2000年代以降はおおむね500トン未満の低水準に留まっています。2022年および2023年の421トンは、記録の中でも最低水準を示しており、この地域におけるエンドウ豆農業の継続的な困難を浮き彫りにしています。
この減少の背景として、まず考えられる要因は土地利用の変化や都市化の進行です。中国、香港特別行政区はその地理的性質から可耕地が限られ、農地の都市開発への転用や農業分野での輸入依存度の増加が影響を与えていると推測されます。加えて、この地域は国際経済活動の主要な中心地であり、食糧生産よりもサービス業や貿易業に経済的重点が置かれてきたことも、エンドウ豆の生産減少に寄与している可能性が高いです。
また、気候変動の影響も無視できません。エンドウ豆は温和な気候を好む作物であり、近年の気候変動による降雨量の変動や気温の上昇が、生産活動に悪影響を及ぼしている可能性があります。特に、台風や異常気象が頻発するこの地域では、短期間の一時的な気候災害が作物の生育に与えるダメージも大きいと言えます。
課題としては、香港特別行政区が限られた土地資源をいかにして効率的に利用するかが挙げられます。また、国内市場において農業生産よりも輸入品への依存が高まっている現状では、農作物の国内生産が競争面で不利となることも課題とされています。特に、労働力不足やコストの高騰も大きな阻害要因と考えられます。
この課題を解決するためには、まず農業の効率向上と持続可能性の確保が重要です。具体的には、先端農業技術の導入により省スペースでの高収量を可能にするスマート農業の普及が挙げられます。また、政府による農業助成金の拡張や、小規模農家支援のための融資制度でも一定の効果が期待されます。並行して、都市や農村の食糧需給のバランスを保つため、地域間での協力体制を強化することも重要です。
国際的な文脈では、香港は中国本土や近隣諸国との緊密な経済的および事業的連携があるため、これらの地域からの輸入エンドウ豆供給は引き続き重要性を持つでしょう。同時に、安定的で低価格な輸入に依存しすぎないよう、香港自身が農業技術革新に貢献することで、長期的な自立性を高めるべきです。
さらに、地政学的な観点を考慮する必要があります。現下の国際貿易摩擦や、輸出入政策の変動が香港の食料供給に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、生産量の増加は難しいとしても、生産技術の共有や共同研究など、近隣諸国との協力を通じて、安全保障の確保を図る姿勢が求められます。
まとめとして、香港特別行政区におけるエンドウ豆生産量の減少は、土地や気候の制約、都市化、経済構造の変化、そして国際環境の影響によるものと考えられます。この現状を打開するためには、農業技術駆使を核とした多角的な対策が求められます。さらに、地元の農業が再び地場経済と密接に連動し、輸入に頼る現在の体制を適度に補完する取り組みが必要です。持続可能な農業分野への投資が、今後の香港の食糧安全保障の枠組みを強化することにつながると期待されます。