国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、アンゴラの小麦生産量は1960年代に最大27,000トンに達したものの、それ以降は低下傾向を示しました。特に1980年代以降、年間生産量が5,000トンを下回り、更に近年では約3,000トン付近で横ばい状況が続いています。これにより、アンゴラは主に輸入品に依存している状況が浮き彫りになっています。
アンゴラの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 2,943 |
2021年 | 2,946 |
2020年 | 2,938 |
2019年 | 2,945 |
2018年 | 2,954 |
2017年 | 2,916 |
2016年 | 2,967 |
2015年 | 2,978 |
2014年 | 2,885 |
2013年 | 3,214 |
2012年 | 3,840 |
2011年 | 4,000 |
2010年 | 4,000 |
2009年 | 4,000 |
2008年 | 4,000 |
2007年 | 4,000 |
2006年 | 4,000 |
2005年 | 4,000 |
2004年 | 3,941 |
2003年 | 3,937 |
2002年 | 4,000 |
2001年 | 4,000 |
2000年 | 4,000 |
1999年 | 4,000 |
1998年 | 6,000 |
1997年 | 5,503 |
1996年 | 5,236 |
1995年 | 5,000 |
1994年 | 3,000 |
1993年 | 3,000 |
1992年 | 2,800 |
1991年 | 2,560 |
1990年 | 2,500 |
1989年 | 2,400 |
1988年 | 2,400 |
1987年 | 2,400 |
1986年 | 2,400 |
1985年 | 3,000 |
1984年 | 3,000 |
1983年 | 4,000 |
1982年 | 5,000 |
1981年 | 6,000 |
1980年 | 7,000 |
1979年 | 8,000 |
1978年 | 10,000 |
1977年 | 10,000 |
1976年 | 13,000 |
1975年 | 13,000 |
1974年 | 16,985 |
1973年 | 11,527 |
1972年 | 15,070 |
1971年 | 12,782 |
1970年 | 11,965 |
1969年 | 14,145 |
1968年 | 27,000 |
1967年 | 27,000 |
1966年 | 22,000 |
1965年 | 20,000 |
1964年 | 13,000 |
1963年 | 20,000 |
1962年 | 20,000 |
1961年 | 20,000 |
アンゴラにおける小麦の生産量の変動には、国内および地域の社会経済的、地政学的背景が大きく影響を与えています。データによると、1960年代には小麦生産が年20,000トンを大きく超えることもあり、持続的な生産が可能だったと言えます。しかし、1970年代から急激に低下し始め、1980年代には1桁となる年間生産量(数千トン台)まで落ち込みます。この低下の背景には、1975年から27年間続いた内戦や、それに伴う農業基盤の崩壊が指摘されています。内戦中、安全な農地管理が困難になり、生産インフラが破壊されたことが、農業全般の停滞と小麦の生産量低下を招いたのです。
過去数十年間の小麦生産量が回復しない理由として、複合的な要因が挙げられます。一つ目の要因は、生育には冷涼な気候を必要とする小麦がアンゴラの多くの地域の気候条件に適していないことです。二つ目に、政策不足も挙げられます。収量を向上させるための技術的支援やインフラ投資が十分ではなく、農家が近代的な農法を採用する機会が限られています。また、アンゴラは経済の石油依存の傾向が強いため、農業分野への国家の関心が相対的に低いことも一因です。
アンゴラが小麦を国内で十分に生産できない現状は、食品の輸入に大きく依存する結果を招いており、食糧安全保障の観点からも注意が必要です。特に2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で国際的な物流が混乱し、小麦価格が高騰する場面も見られました。このような外的要因によりアンゴラ国内の消費者や貧困層が大きな打撃を受けることも懸念されます。
改善に向けて、いくつかのアプローチが考えられます。一つの方策としては、農業技術の向上とそれに伴う教育支援が挙げられます。例えば、小麦栽培に適した地域を特定し、灌漑施設や低温地域を活用した集中的な生産が有効です。隣国である南アフリカやザンビアの成功事例から、気候順応型の品種開発や国際支援による農業プロジェクトが参考となるでしょう。また、地域協力を強化し、隣国と農業の技術やノウハウを共有する枠組み構築も考慮すべきです。さらに、農家に対する財政的なインセンティブの提供や市場アクセスの改善も、長期的な持続可能性を高める重要な手段となります。
地政学的リスクとして、現在のウクライナ危機がアンゴラを含め世界中の小麦供給に及ぼしている影響も無視できません。アンゴラのような輸入依存国は、主要輸出国に依存するリスクを分散させるためにも、地元での生産強化が急務です。気候変動による降雨量や気温の不安定さが今後も影響する可能性があるため、適応型の農業政策を早急に展開する必要があります。
結論として、アンゴラの小麦生産量の停滞は過去の内戦や現在の政策的・環境的な課題に根ざしていることが明らかです。中長期的には、地元の小麦生産を支援するための包括的な農業政策が必須となります。国際的な連合組織や支援機関は、アンゴラ国内の食糧安全保障を確立するために積極的な援助を提供するべきでしょう。これにより、アンゴラは持続可能な農業の復興を実現し、自立的な食糧供給の基盤を築く機会を得られるでしょう。