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カナダの小麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、カナダの小麦生産量は1961年から注目すべき増減を繰り返してきました。1961年の約770万トンから始まり、2022年には約3433万トンと大きく拡大しています。この間には記録的な増産が見られた年もあれば、乾燥や気候変動の影響により減産した年もあります。1980年代以降は比較的高水準な生産量を保つ傾向を見せており、特に2013年には約3759万トンというピークを記録しました。そして最新の2022年には、前年の干ばつなどから回復し、高生産量を記録しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 31,954,115
-6.93% ↓
2022年 34,334,787
53.13% ↑
2021年 22,422,100
-36.73% ↓
2020年 35,437,200
8.47% ↑
2019年 32,669,800
0.98% ↑
2018年 32,351,900
6.5% ↑
2017年 30,377,235
-5.48% ↓
2016年 32,139,900
16.25% ↑
2015年 27,647,400
-6.1% ↓
2014年 29,442,100
-21.67% ↓
2013年 37,589,100
37.96% ↑
2012年 27,246,000
7.74% ↑
2011年 25,288,000
8.53% ↑
2010年 23,299,600
-13.54% ↓
2009年 26,949,900
-5.83% ↓
2008年 28,619,200
42.45% ↑
2007年 20,090,400
-20.48% ↓
2006年 25,265,400
-1.87% ↓
2005年 25,748,100
3.84% ↑
2004年 24,795,500
7.58% ↑
2003年 23,048,600
44.4% ↑
2002年 15,961,300
-22.63% ↓
2001年 20,630,200
-22.25% ↓
2000年 26,535,500
-1.57% ↓
1999年 26,959,900
11.95% ↑
1998年 24,082,300
-0.89% ↓
1997年 24,299,400
-18.46% ↓
1996年 29,801,400
19.26% ↑
1995年 24,989,400
9.03% ↑
1994年 22,919,500
-15.91% ↓
1993年 27,255,900
-8.77% ↓
1992年 29,877,200
-6.47% ↓
1991年 31,945,600
-0.47% ↓
1990年 32,098,000
29.45% ↑
1989年 24,796,208
55.82% ↑
1988年 15,913,000
-38.67% ↓
1987年 25,945,000
-17.31% ↓
1986年 31,378,000
29.38% ↑
1985年 24,252,000
14.46% ↑
1984年 21,187,904
-19.94% ↓
1983年 26,465,008
-0.94% ↓
1982年 26,715,008
7.71% ↑
1981年 24,802,000
28.56% ↑
1980年 19,292,000
12.19% ↑
1979年 17,196,000
-18.64% ↓
1978年 21,136,800
6.44% ↑
1977年 19,858,208
-15.81% ↓
1976年 23,587,200
38.09% ↑
1975年 17,080,608
28.39% ↑
1974年 13,303,500
-17.67% ↓
1973年 16,159,170
11.34% ↑
1972年 14,513,966
0.71% ↑
1971年 14,412,287
59.71% ↑
1970年 9,024,254
-50.6% ↓
1969年 18,267,712
3.27% ↑
1968年 17,689,040
9.62% ↑
1967年 16,136,911
-28.33% ↓
1966年 22,516,832
27.4% ↑
1965年 17,674,000
8.1% ↑
1964年 16,349,000
-16.97% ↓
1963年 19,691,008
27.92% ↑
1962年 15,393,000
99.57% ↑
1961年 7,713,000 -

カナダは伝統的に、世界でも有数の小麦輸出国としてその地位を確立してきました。小麦生産量の推移を見ると、長期的には1960年代から2020年代にかけて上昇基調にあるものの、特定の年には顕著な波動が見られます。この背景には、天候と環境条件が重要な要因として影響しており、それによって記録的な不作や豊作が発生してきました。

例えば、1966年や1976年、1986年、2013年といったピークの年には、地域の気候条件が適しており、収穫量が著しく伸びたことが考えられます。一方で、1970年や1988年、2002年、2021年のような生産量が減少した年には、干ばつや異常気象が関与している可能性が高いです。特に近年は、気候変動が農業生産に与える影響が注目されており、カナダのような大規模農地を有する農業国では、降水量の減少や気温の上昇が小麦栽培に試練を与えています。

カナダの小麦生産量は他国との比較においても特筆に値します。たとえばアメリカやインド、中国のような生産規模の大きな国においても、小麦の総生産量では時にカナダが主要な競争相手となります。しかしながら、カナダ独特の寒冷気候条件により生産される高品質な小麦は、世界市場での競争力を保っています。特にカナダ産の「硬質小麦」はパンやパスタの原料として需要が高く、輸出が多いことが特徴です。

一方、2021年のように干ばつが発生した年には、気温上昇と低降水量の影響で生産量が急減しました。このような気候リスクは、カナダ農業全体の持続可能性を脅かす問題となっています。地政学的背景においても、ウクライナやロシアなど他の重要な小麦輸出国が紛争や制裁の影響を受ける中、カナダはその輸出において供給の一端を担う責務を負っています。これにより、世界の食糧安全保障におけるカナダの役割は益々重要となっています。

将来に向けては、いくつかの課題と対策が考えられます。一つ目は、持続可能な農業の推進です。気候変動に適応するため、耐干ばつ性の高い品種の開発や導入を進めることが求められています。また、灌漑システムの強化を含むインフラ整備も重要ですが、これには政府や地域コミュニティとの共同努力もしっかりと必要です。

二つ目は、生産効率の向上に向けたデジタルトランスフォーメーションの活用です。農業分野でのAIやIoT技術の導入を進めることにより、収穫量の予測精度を高めたり、資源の最適配分を実現したりすることが可能です。こうした技術投資は、今後の気候変動による不確実性に対応するための基盤となります。

最後に、国際協力の重要性です。気候変動に対する取り組みや、食糧供給の安定を図るには、他国との連携体制の構築が欠かせません。先進国間の連携だけでなく、小麦輸入依存の高い発展途上国との協力関係を強化することで、需要と供給バランスの調整が進むことが期待されます。

結論として、カナダの小麦生産量はこの数十年で増加傾向を維持しているものの、その背景には気候や国際情勢、技術進化による影響が複雑に絡み合っています。持続可能性を重視した農業政策と技術革新が今後の成長の鍵となり、あわせて国際情勢の理解と協調が求められる局面にあると言えるでしょう。