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カメルーンの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表したカメルーンの小麦生産量データによると、1976年から徐々に増加した生産量は、1980年代を境に急激な縮小を経験しました。その後、1990年代以降は一定の範囲での変動が続きましたが、2000年代中盤から2010年にかけて、生産量は徐々に回復傾向を見せました。しかしながら、2019年以降に再び減少傾向が観察され、2022年には603トンにまで低下しています。この動きから、カメルーンの小麦生産には依然として課題があることが浮き彫りとなっています。

年度 生産量(トン)
2022年 603
2021年 625
2020年 438
2019年 500
2018年 700
2017年 800
2016年 800
2015年 850
2014年 850
2013年 850
2012年 800
2011年 950
2010年 900
2009年 802
2008年 776
2007年 753
2006年 730
2005年 709
2004年 688
2003年 668
2002年 649
2001年 631
2000年 613
1999年 596
1998年 579
1997年 562
1996年 400
1995年 558
1994年 598
1993年 587
1992年 575
1991年 562
1990年 381
1989年 400
1988年 400
1987年 400
1986年 400
1985年 359
1984年 270
1983年 400
1982年 900
1981年 1,518
1980年 1,518
1979年 1,548
1978年 1,000
1977年 787
1976年 370

カメルーンはサハラ以南アフリカに位置し、その地理的気候条件は小麦の生育にあまり適していないとされています。1976年の370トンというわずかな生産量から始まった小麦生産の歴史は、1979年の1548トンをピークに急減しました。この減少の背景には、同国の農業政策の変動や気候条件の影響、さらには地域競争によるコスト競争力の低下が考えられます。特に1984年には270トンと過去最低を記録し、見通しの厳しい状況が続きました。

1990年代に入ると、生産量は徐々に改善されましたが、依然として年間400トン前後の低水準にとどまりました。その後、2000年以降はサブサハラ非洲全体における農業技術の導入や国際援助の増加を背景に、カメルーンも小麦生産の回復を図りました。2003年には初めて600トンを超え、その後2010年の900トンに達しました。こうした回復傾向は、国内での農業支援政策の成果とみられます。

しかしながら、2018年以降の数値は再び悪化傾向を示しており、2020年には438トンにまで落ち込みました。この減少には、気候変動による異常気象や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も関連していると考えられます。特にパンやパスタなどの主食需要が世界的に拡大する中で、小麦の輸入圧力が高まる一方、自給率のさらなる低下が課題となっています。

現時点で、カメルーンの小麦供給は主に輸入に頼っているため、国内の小麦生産を向上させるためにはいくつかの課題に取り組む必要があります。一つ目は、灌漑施設の整備と気候変動に対応した種子の導入です。降雨量や適温などの条件が限られた状況で効率的な生産を実現するには、現代的な農業技術による支援が必要不可欠です。二つ目は、農業従事者への教育と投資です。若者を中心とした農業参入の促進や、既存農家への支援は生産性向上に直結します。また、地域レベルでの協力を強化することで、食糧安全保障の向上を図るべきです。

さらに、地政学的な側面から見ると、小麦は国際市場での需給関係や価格変動の影響を大きく受ける作物です。特にウクライナ危機やロシアの小麦供給の制限によって、アフリカ諸国への輸出量が減少したことは、カメルーンにとって重要な警鐘と言えます。このような国際的な不安定要因が続く中で、持続可能な国内生産の確立は、一層緊急性の高い課題となるでしょう。

未来に向けた具体的な指針としては、地域経済共同体と連携した農業基盤の共有や、小麦以外の作物にも注力した輪作モデルの検討が挙げられます。これにより、土壌の劣化防止や生産の多様化が可能となります。さらに、政府内外のパートナーシップを深化させ、輸送インフラや市場アクセスの向上に資源を投じるべきです。そして、国際機関と共同で持続可能な農業近代化を進め、その成果を農村部にも広げていくことが必要です。

結論として、カメルーンの小麦生産量推移は、その背景にある政策、経済、そして気候動態との深い関係を示しています。将来的には、国内農業の近代化を通じて、持続可能な小麦生産モデルの確立を目指し、食糧自給率を高める努力が求められます。また、地域的な連携を強化し、地政学的リスクに備えることで、国内食糧安全保障の一層安定した基盤を築くことができます。