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モルディブの100人当たりの携帯電話の契約数推移

ITU(国際電気通信連合)が発表したデータによると、モルディブの人口100人当たりの携帯電話契約数は1996年に0.007人と非常に低かったものの、2005年までに急速な普及が見られ、その後2007年には100人を超えました。2013年から2017年にかけては安定した増加が続きましたが、2018年以降、契約数は減少傾向に転じ、2022年に至るまで微増を経たものの、ピーク時の2017年(190.525件)と比べると下回っています。このデータは、モルディブの通信事情が成熟しつつあるものの、減少の兆候も示していることを意味します。

年度 100人当たりの携帯電話の契約数
1996年 0.007
1997年 0.479
1998年 0.586
1999年 1.052
2000年 2.703
2001年 6.575
2002年 14.335
2003年 22.362
2004年 37.482
2005年 66.321
2006年 86.212
2007年 96.436
2008年 129.311
2009年 131.152
2010年 136.722
2011年 141.665
2012年 144.643
2013年 156.006
2014年 159.769
2015年 169.839
2016年 178.784
2017年 190.525
2018年 175.175
2019年 164.129
2020年 139.513
2021年 135.398
2022年 136.542

モルディブにおける人口100人当たりの携帯電話契約数を分析すると、急速な普及とその後の頭打ち、さらには減少へと向かう流れが浮かび上がります。1996年には0.007件と非常に低い水準であり、国内で携帯電話がほとんど普及していなかったことを示しています。しかし、2000年代前半には急激な増加が見られ、2005年には66件となり、2006年には86件、2007年には96件へと拡大しました。この急速な発展には、国際的な通信技術の普及に伴うインフラ整備や、観光業の成長による通信需要の増加が貢献したと考えられます。

2008年以降は100人を超える契約数を維持し、ピーク時の2017年には190件を超えています。この時期は、スマートフォンの普及とそれに伴うデータ通信サービスの需要の拡大が背景にあります。一方で、2018年を境に契約数は減少傾向に転じ、2020年には139件まで下がり、その後はほぼ横ばいの状態となっています。これにはいくつかの要因が考えられます。

まず、モルディブの市場が成熟期に入ったことが挙げられます。現在、モルディブの通信市場はほぼ飽和状態にあり、新規契約者の伸びが頭打ちとなっています。また、1人が複数契約を持つ「二重契約」の減少も影響している可能性があります。特に、通信契約の料金見直しや利用者の経済状況の変化によって、契約を減らす動きが生じたことが推察されます。

さらに、2020年には新型コロナウイルスの世界的な影響がモルディブにも及びました。このパンデミックにより、観光業を中心とした経済活動の縮小が地域社会全体に波及し、通信需要にも変化をもたらしたものと考えられます。海外から訪れる観光客を対象とした携帯電話契約や、事業活動に関連する追加の契約が減少したと見ることができます。

また、地政学的な観点では、モルディブの島嶼国家としての特性が通信インフラの整備に大きな挑戦をもたらしています。多くの島々に経済的かつ効率的に通信インフラを展開することは困難であり、これに対して政府および国際的な通信業者がどのような戦略を取っているかが今後の課題といえます。

その一方で、現状を改善するためにはいくつかの提言が可能です。まず、国による通信技術の更新やインフラの強化が求められます。これは、5Gを含む次世代通信技術の導入を進めることで、スマートフォン利用者のデータ需要をカバーできるようになります。また、観光業との連携を強化し、訪問者向けの短期契約オプションやパッケージの拡充も検討すべきです。

さらに、通信教育やリモートワークといった分野での普及を促進することで、国内における携帯電話およびインターネットの利用範囲を拡大できます。特に教育分野での活用は、離島での教育機会の格差を緩和する手段として有効です。また、国際的なパートナーシップを活用し、融資や技術提供を受けながら持続可能な通信インフラを構築することも重要です。

全体として、人口100人当たりの携帯電話契約数の減少傾向は、モルディブ通信業界が新しい方向性を模索する必要があることを示唆しています。この問題に適切に対応することは、観光業のみならず、国全体の経済や社会生活の向上に重要な役割を果たすでしょう。今後、具体的な政策や協力体制の整備が望まれます。