国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年11月に更新した最新のデータによれば、1990年から2020年にかけてイギリスの二酸化炭素(CO2)排出量は大幅に減少しています。1990年の783,665,935トンから2020年の398,827,111トンへ、約49%の削減が達成されました。特に2010年代後半には顕著な減少傾向が見られ、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響もあり、排出量が大幅に低下しています。
「イギリス」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 398,827,111トン |
2019年 | 459,557,656トン |
2018年 | 476,101,209トン |
2017年 | 483,335,056トン |
2016年 | 496,413,589トン |
2015年 | 521,946,074トン |
2014年 | 536,831,895トン |
2013年 | 573,540,474トン |
2012年 | 585,238,741トン |
2011年 | 564,992,394トン |
2010年 | 613,757,635トン |
2009年 | 594,883,176トン |
2008年 | 651,248,536トン |
2007年 | 663,311,913トン |
2006年 | 680,569,321トン |
2005年 | 687,596,653トン |
2004年 | 690,882,342トン |
2003年 | 696,991,984トン |
2002年 | 690,314,732トン |
2001年 | 710,858,733トン |
2000年 | 712,009,061トン |
1999年 | 712,962,973トン |
1998年 | 730,785,286トン |
1997年 | 732,069,794トン |
1996年 | 759,729,851トン |
1995年 | 747,798,187トン |
1994年 | 754,038,612トン |
1993年 | 753,741,326トン |
1992年 | 777,034,613トン |
1991年 | 797,188,302トン |
1990年 | 783,665,935トン |
イギリスのCO2排出量推移は、この国のエネルギー政策や産業構造の変化を如実に示しています。1990年から2020年にかけて、全体的に着実な減少傾向が見られました。1990年の783,665,935トンに比べると2020年には398,827,111トンまで削減されており、これによりイギリスは国際的な環境目標に向けたリーダー的役割を果たしていることが確認できます。
1990年代初頭から徐々に減少が始まり、その背景には石炭の使用削減が大きく関与しています。イギリスは1980年代末までに国内の石炭産業を縮小し、1990年代以降には天然ガスへのシフトを加速させています。この「ガス革命」とも呼ばれる政策転換によって、発電所からのCO2排出量が減少したことが記録に反映されています。また、2000年代には再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率向上への取り組みも進み、2010年代後半には政策の効果がさらに顕著となりました。例えば、2016年には風力発電や太陽光発電が普及し、2017年以降もCO2排出量の削減へとつながっています。
さらに注目すべき点として、2020年のデータでは大幅な削減が記録されています。これは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるロックダウン措置が原因で、交通量の激減や経済活動の停滞が大きく影響したと考えられます。この一時的な現象は、長期的な減少傾向とは異なりますが、環境政策の重要性を改めて浮き彫りにしました。
地域課題として、イギリス国内ではエネルギー転換が進んでいる一方で、交通セクターや建築物からの排出量削減が課題として残っています。これらの部門は依然として化石燃料に依存しており、電化や省エネルギー化、さらにはグリーンインフラの導入が必要です。また、CO2削減に成功しているドイツやフランスと比較しても同様に、交通や住宅関連の取り組みが鍵を握っていることがわかります。イギリスでは特に電気自動車の普及と公共交通機関の低炭素化が今後の最重要課題になるでしょう。
地政学的背景から見ると、欧州が再生可能エネルギーの主要な市場としてリーダーシップを発揮する中で、EU離脱(ブレグジット)後のイギリスのエネルギー政策が他国との連携に対して影響を与えています。例えば、エネルギー技術の共有や国家間の排出権取引制度への関与が制限される恐れがあります。これがイギリスの持続可能性への取り組みに障壁を生む可能性があるため、地域間協力の強化が求められます。
今後、イギリスが取るべき対策としては、まず交通と建築分野での徹底的な排出量削減が挙げられます。具体的には、電気自動車の購入支援策を拡大し、EV充電インフラを整備する必要があります。また、住宅の断熱効率を改善するプロジェクトに公的資金を注入し、エネルギーロスを最小限に抑える仕組みが有効です。そして、国際協力の枠組みを再構築し、再生可能エネルギー分野への投資を促進する戦略も不可欠です。
総じて、イギリスのCO2排出量の減少は、過去数十年にわたる政策的努力と産業の変革によるものだといえます。しかし、さらなる減少を達成するには交通や住宅セクターでの技術革新が必須であり、また国境を越えた協力体制を強化することが未来の加速要因になるでしょう。未来世代に渡す持続可能な社会を実現するために、適切な政策と先進技術の導入が急務と言えます。