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チュニジア

Tunisia

チュニジアのCO2排出量推移

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、1990年から2020年までのチュニジアのCO2排出量はおおむね増加傾向を示していましたが、近年では減少傾向に転じています。1990年には約2,247万トンの排出量があり、2010年代には4,300万トンを超える年も見られました。2020年には3,712万トンまで減少しています。長期的には増加から減少への転換点が見られるため、この変化が経済・環境双方に与える影響について考察が求められます。

「チュニジア」のCO2排出量推移

年度 CO2排出量
2020年 37,129,534トン
2019年 39,603,599トン
2018年 38,231,171トン
2017年 42,654,254トン
2016年 43,025,977トン
2015年 43,620,128トン
2014年 42,646,911トン
2013年 41,822,038トン
2012年 41,881,765トン
2011年 40,433,981トン
2010年 42,233,675トン
2009年 39,716,171トン
2008年 39,384,938トン
2007年 37,757,243トン
2006年 36,487,641トン
2005年 35,520,223トン
2004年 34,726,906トン
2003年 33,457,906トン
2002年 33,049,644トン
2001年 33,169,440トン
2000年 32,240,328トン
1999年 30,526,024トン
1998年 29,525,191トン
1997年 27,816,245トン
1996年 27,555,292トン
1995年 25,629,990トン
1994年 25,760,817トン
1993年 26,792,480トン
1992年 25,293,756トン
1991年 25,466,999トン
1990年 22,470,571トン

チュニジアのCO2排出量の推移を見てみると、1990年から2010年代初頭までは、経済的成長とともに排出量が一貫した右肩上がりで推移していることがわかります。2000年には3,224万トン、2010年には4,223万トンと、20年間でおよそ1,000万トン増加しています。この背景には、チュニジアの経済発展に伴う化石燃料の消費増加が関連していると考えられます。特に、産業部門やエネルギー供給の集中型インフラが排出量増加を押し上げた可能性が高いです。

しかし、2011年以降、排出量の伸びは抑制される傾向を示しており、2018年以降は明確な減少傾向がみられます。この変化には複数の要因が関係していると推察されます。一つは、2011年に発生したアラブの春以降、チュニジア国内での社会的混乱や経済的停滞が生産活動やエネルギー使用の減少を引き起こし、それによって排出量が一部抑制された可能性です。加えて、2018年以降の顕著な減少については、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が影響したと考えられます。この時期には経済活動が縮小し、移動や生産活動が減少したことにより、CO2排出量が減少しました。2020年には排出量が約3,712万トンにまで減少し、これは過去10年間のピークからおよそ600万トンの減少を示しています。

これらの排出量動向を世界的な視点で見てみると、チュニジアの戦略はまだ他の主要国に比べて大幅な改善の余地があると言えます。たとえば、ドイツやフランスといった欧州諸国では再生可能エネルギーの導入拡大がCO2排出削減の成果に貢献しています。一方で、チュニジアでは再生可能エネルギーに基づく電力供給の割合は依然として低く、エネルギー政策の見直しが必要だと考えられます。

脱炭素化の取り組みを進めるにあたり、チュニジアが克服すべき課題は多岐にわたります。エネルギーの供給元の多様化がその一つです。風力や太陽光といった再生可能エネルギーの利用拡大が世界的なトレンドとなる中、チュニジアでも同様の取り組みを促進することが求められます。また、炭素税の導入や企業へのインセンティブを通じて、低炭素型経済への構造転換を図ることも重要です。これには、持続可能な輸送システムやエネルギー効率の改善が含まれるべきです。

地政学的観点からは、チュニジアが含まれる北アフリカ地域はエネルギー資源と水資源の確保をめぐる競争が激しく、気候変動による砂漠化の進行などがリスクとして挙げられます。その影響により農業生産が脅かされる可能性もあり、長期的な経済的安定のためには環境政策と産業政策を一体化させる戦略が求められます。

このように、チュニジアのCO2排出量データは、経済活動や社会的・地政学的背景との緊密な関連性を示しています。今後、この地域が継続的な成長を遂げるためには、低炭素型経済への移行を推進する国際的な枠組みへの参画や、積極的な技術支援・協力の受け入れが鍵となるでしょう。そのため、国際機関や他国が連携して支援を行う仕組みをさらに拡充することが必要です。