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スロバキア

Slovakia

スロバキアのCO2排出量推移

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、スロバキアのCO2排出量は1993年の55,421,182トンをピークに徐々に減少傾向を示し、2020年には41,721,045トンにまで減少しました。全体的にはこの27年間で約25%の減少が見られますが、一部の年では増加や横ばいの時期も確認できます。この減少傾向は、工業構造の変化や欧州連合(EU)としての環境政策の影響が大きいと考えられます。

「スロバキア」のCO2排出量推移

年度 CO2排出量
2020年 41,721,045トン
2019年 44,274,575トン
2018年 47,045,328トン
2017年 47,784,807トン
2016年 45,977,893トン
2015年 45,072,919トン
2014年 43,714,719トン
2013年 46,163,392トン
2012年 46,327,944トン
2011年 47,962,703トン
2010年 49,553,974トン
2009年 46,721,117トン
2008年 50,157,953トン
2007年 48,993,136トン
2006年 51,502,533トン
2005年 51,284,763トン
2004年 51,430,774トン
2003年 51,363,088トン
2002年 51,063,071トン
2001年 51,257,730トン
2000年 47,866,305トン
1999年 50,890,363トン
1998年 52,245,121トン
1997年 53,475,521トン
1996年 54,187,460トン
1995年 54,169,632トン
1994年 52,906,363トン
1993年 55,421,182トン

スロバキアのCO2排出量の推移を観察すると、1993年から2020年にかけて総排出量が一定の波を描きながらも、大きな傾向としては減少していることがわかります。1993年の排出量は55,421,182トンで、その後の数年間ではおおむね53,000,000トン前後を維持していましたが、2000年以降に顕著な減少傾向が始まりました。2020年には41,721,045トンとなり、この27年間でおよそ13,700,000トンの削減が達成されています。

1990年代はスロバキアの経済転換期であり、1989年の東欧革命後に社会主義経済から市場経済への移行が行われました。この時期にはエネルギー効率の悪い産業が縮小または廃止され、結果としてCO2排出量の減少がもたらされたと考えられます。特に、2000年代に入るとEU加盟(2004年)といった国際的な枠組みへの参加を契機に、スロバキアはより厳しい環境基準を採用し、再生可能エネルギーの導入や産業部門の近代化が進みました。

一方で、一部の年では増加傾向も見られます。例えば、2007年や2015年、2017年のような年がこれに該当します。このような年は経済の成長やエネルギー需要の増大が主因と考えられます。特に2017年の増加は、新たなインフラプロジェクトや輸送量の増加が影響している可能性があります。

2020年には急激な排出減少が見られますが、これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済活動の停滞が主因とされます。産業活動や交通需要の大幅な減少が、直接的にCO2削減に繋がったと考えられます。ただし、この減少が継続的なものではなく、一過性のものとなるリスクが指摘されています。

スロバキアの排出量削減には、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーへのシフトが重要な役割を果たしていますが、現在も多くの課題が残されています。輸送部門の排出の多さや、旧式の石炭火力発電所が一定割合を占めていることが依然として問題ですが、これは他のEU加盟国、例えばドイツやポーランドでも見られる共通の課題です。日本や韓国では近年、電動車両への移行が急速に進んでおり、スロバキアも同様の方向性に進むことで輸送関連の排出削減をさらに進めることが可能です。

また、スロバキアが抱える地政学的背景にも留意する必要があります。スロバキアはエネルギーの一部を近隣のロシアや東欧諸国から輸入しており、この依存度の高さが再生可能エネルギー導入のスピードを鈍化させる要因の一つです。この問題を解消するためには、EU全体でのエネルギー独立政策や、域内でのエネルギー共有の協力枠組みをさらに強化する必要があります。

未来に向けて、スロバキアが持続可能な排出削減を進めるためには、単なる産業部門の効率改善にとどまらず、広範な環境政策が必要です。たとえば、地方自治体が主体となり、都市と農村部双方での再生可能エネルギーインフラの整備、電動車両インフラの拡充、生態系を重視した土地利用を進めることが考えられます。また、国際的な気候変動対策の枠組みに積極的に参画し、新興国と技術協力を進めることで、国際的なリーダーシップを示すことができるでしょう。

結論として、過去数十年にわたるスロバキアのCO2排出量の減少は、経済構造の近代化やEUの政策指導の成果を反映したものです。しかし、より大きな目標である2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、エネルギー政策の飛躍的な進展が必要です。そのためには、技術革新と国際協力の推進が鍵となるでしょう。